大嵜直人のブログ

たいせつな何かをなくした心に、ともしびを。

親子関係・望郷

夢、娘との小話。

「おとうさんは、なにになりたかったの」 「何に、かぁ。小学生のころは、プロ野球選手かな」 「やきゅうせんしゅ?」 「あぁ。ナゴヤ球場で、バッターから三振を取ってみたかったよ」 「やきゅうせんしゅには、ならなかったの?」 「あぁ、お父さんは、運動…

トン、トン。

隣の娘が、暗闇の中でごそごそと寝返りを打っていた。 小さなころから寝つきが抜群によかった娘にしては、めずらしい。 「寝れないの?」 「うん」 日中、公園で友だちとたくさん遊んだ反動か、夕食後にうたた寝をしてしまったせいだろうか。 娘にしてはめず…

いつか歩いた境内に。 ~愛知県津島市「津島神社」訪問記

よく晴れた秋晴れの日、愛知県津島市の津島神社を訪れた。 かつて、生を受け、高校を卒業するまで暮らした、津島市。 その氏神様を、久しぶりに訪れることができた。 かつて、この近くに父方の祖父の自宅兼工場があった。 町工場の鉄工所を営んでいた祖父の…

コミュニケーションの効用は、遅れてやってくる。

少し遅くなって帰宅すると、テーブルの上にノートと書き置きがあった。 「一つ かいたよ みてね」 ピンクのノートは、以前娘と交換日記をしていたノートだった。 久しぶりに、娘は私宛に書いてくれたようだ。 ノートに記された娘の今日の一日を読みながら、…

青々と実るドングリの下で、循環について想うこと。

風が、強かった。 久しぶりに、息子と娘と公園に行く道すがら。 春の嵐とは違って、どこか清浄な空気が頬を伝っていった。 秋分の日を過ぎて、力尽きたノコギリクワガタを埋葬しに行くためだったが、気持ちよく晴れた週末は、久しぶりだったような気もする。…

カブトムシの幼虫を求めて、古い傷の記憶をたどること。

しまった、安易だったと気づいた。 「今年もカブトムシの幼虫を飼うんだぞ」と息子が主張してきたので、いつも行くホームセンターに行ったところ、もう取り扱っていない、と返された。 シーズンもほぼ終わったので、もう外国産のカブトムシとクワガタの幼虫…

アイスクリーム、ぼとん。 ~痛みは、才能を正確に描写する。

あっ、という声を出す間もなかった。 息子が手にしていたアイスクリームが、プラスチックの棒からツツツ…と滑っていく。 ぼとん。 まだ夏の余韻に残る午後の陽射しに照らされて、コンクリートの上に茶色の染みになって広がっていく。 甘い香りに誘われたのか…

「くるくる」と、いつかの後部座席の揺れについて。

急な所用ができて飛び乗った社用車は、普段あまり乗っていなかった軽自動車だった。 けれど、どこか、懐かしい気がした。 9月に入って、曇り空と癇癪のように降る雨の日が増えた。 その日もまた、分厚い雲が空を覆っていた。 エンジンをかけ、車を出す。 あ…

眠り、愛、悩み、肩甲骨。

「おとう、トントンして」 めずらしく一緒に寝る、と言って隣にきた息子がそういう。 娘に比べて、寝つきが悪いのは赤子の頃からずっとだが、それにしてもその夜は寝付くのが遅かった。 ああ、と答えて、息子の肩をトン、トン、とゆっくりと叩く。 小さな赤…

大瀬良大地のキラキラカードと、バランスを崩すことについて。

多くの男の子が通る道なのだろうか、息子もまた「プロ野球チップス」の野球選手のカードを集め始めた。 カルビーさんが出している、ポテトチップスに野球選手のカードが付いているアレである。 娘は一向に興味を示さないあたり、やはり女性よりも男性の方が…

「けのび」をするように。

夏の名残を惜しむように、息子と娘とプールにやってきた。 今日は少し遠出をして、市外の市民プールに。 市民プールにしては大きな施設で、流れるプールもあるらしい。 コロナ禍の影響で、波ができるプールやサウナは利用中止になっているが、それでも自宅か…

篠突く、長月。

出がけには、まだぽつりぽつりと頬を叩いていた。 それが、いつの間にか視界が悪くなるほどの勢いの雨に変わっていた。 雷が鳴いて、時折フラッシュが焚かれたような閃光が走る。 夏の夕立ちとは少し違う、怒気を孕んだ雨だった。 ワイパーの速度を上げる。 …

別離に、慣れること。

時候は「天地始粛(てんちはじめてさむし)」、暑さも弱まりを見せるころ …のはずなのだが、残暑厳しい。 されど、季節は歩みを止めないようで、少しずつ秋の音色が響き始める。 「粛」の字には、「弱まる」という意味があるようだ。 その字の通り、息子が大…

試される、日曜朝5時。

叩き起こされて、スマートフォンの時間を見ると5時だった。 頭が全く働かない。 目の前にいる娘が、起こした張本人らしい。 こっち来て、と言いながら部屋を出て行く。 天と地もあやふやなくらい寝惚けながら、私はその後をふらふらと追う。 娘は、自分のラ…

蜃気楼とクロール。

そもそも運動神経は良くない方だが、それに輪をかけて水泳はダメだった。 家にバットとグローブがあって、ボールを投げることに親しんでいた分、球技はまだマシだったのかもしれない。 跳び箱、マット運動などの器械体操系は、まったく苦手だった。 軽々と跳…

頑張って一人でどうにかする時代は、もう終わったんだ。

世代を越えて、つながれる遊びというものがある。 私と父の場合は、野球だった。 たまの父の休日にキャッチボールをして遊んだり、あるいは中日ドラゴンズの成績に一喜一憂し、ハレの日にはナゴヤ球場で観戦したりもした。 ナゴヤ球場で、父が居合わせた仕事…

八月十五日。

父方の祖父は、満州で兵役に就いた経験があったと聞く。 聞く、と書いたのは祖父以外から聞いただけであり、祖父本人から直接その話を聞いたことはなかった。 いまから、ほんの7,80年前のことである。 誇らしげに語ることも、凄惨さを伝えることも、祖父は選…

墓前と、空の青さに捧ぐ。

「ほおずき、全部出ちゃったんですよ。すいませんねぇ。なしでよければ、その分値引きしときますが」 構いません、と答えると、その年配の女性は手際よく仏花を白い紙で包んでいく。 お盆にほおずきはつきものだが、さりとて毎年利用しているこの店以外の生…

葉月十二日のそら。

手塚治虫の「火の鳥」は、「ドラえもん」と並んで幼い頃の私のバイブルだったが、その中でも「鳳凰編」は特に好きで、何度も何度も読み込んだ。 時に奈良時代、過酷な生い立ちから片目片腕を失った主人公の我王は、暴力と略奪の中に生きる。 そんな我王は、…

何気なくしていることは、思ったよりもすごいことかもしれない。 ~セミ捕り戦記2020

夏である。 時候は「土潤溽暑:つちうるおうてむしあつし」。 熱気がまとわりつき、うだるような蒸し暑いころ。 長引く梅雨に、なかなか晴れ間が見えないので、「夏の成分」が足りないような気がするが、それでも蒸し暑さは格別である。 息子にとっては、カ…

我が子に嫉妬する、梅雨明け間近の空。

雨が、止んだ。 明け方には降りしきるその音で目覚めたが、この時期の天気は、よく移り変わる。 雲の隙間から、夏の日差しも見え始めたようだ。 蝉が、歌い始めた。 シャーシャーシャーシャーと鳴くあの声は、クマゼミだろうか。 敏感に反応した息子は、胸を…

蓮始開、アガパンサス、蝉の声。

ぼんやりとした目覚めに、蝉の声を、聞いた。 シャーシャーシャーシャーと鳴くあれは、クマゼミの声だろう。 今年初めての、夏の声だった。 息子もそれを聞いたようで、朝食も早々に早速の蝉取りに駆り出される。 一年ぶりに倉庫から引っ張り出したタモを握…

瞬間と永遠について。

あれは小学生の高学年の頃だっただろうか。 母親と二人で山を登ったことがあった。 山頂と思わしき、見晴らしのいい場所で撮った写真が残っている。 その後、不惑も近くなって母の死と向き合う中で、どの山だったのか知りたくなり、それと思わしき山をいくつ…

願いも、望みも、目標も。なくてもいい。

誰しもが、自らの望みを叶えたいと願う。 だからこそ、願望実現や目標達成のハウツーなりが、いつの時代も求められる。 そう考えると、スピリチュアルな引き寄せであれ、ゴリゴリの外資系コンサルによるKPIなりの管理であれ、それほど大差がないように感じる…

名古屋駅、ラジオ、野球中継慕情。

都心部、月末、金曜日、夕方、雨。 渋滞する要素をすべて詰め込んだようで、遅々として車は進まなかった。 地下鉄で行くこともできたが、コロナ禍の下で車移動が慣れてしまったせいか、そのまま車で行ってしまおうと思った。 人間の習慣というのは、大きいも…

クワガタの発掘に、遠い昔の記憶を想うこと。

昨年の夏の終わりから、息子とクワガタの幼虫を飼っている。 クワガタの幼虫の飼育というのは難しいらしく、私も少年時代にそう聞いていた。 しかし、今はこのような「菌糸ボトル」が普及しホームセンターで売られており、これに幼虫を入れて、定期的に菌床…

ある春の日、桜を摘んだ思い出。

よく晴れた春の日、満開の桜が空を染めていた。 川沿いの桜並木を、息子と娘と歩いた。 息子は、たいそう桜を喜んで愛でていた。 その姿を見て、私は何歳くらいから桜という木の持つ特異性、すなわちその美しさ、はかなさ、そして強さを認識していたのだろう…

名曲は、簡単に時空を飛び越えさせてくれる。

建物を出た瞬間、熱気と呼べるような空気にあてられた。 アスファルトからの照り返しが、その熱気をさらに強調するようだった。 夏の乾いた暑さは耐えられるのに、この梅雨の合間の晴れた日の蒸し暑さときたら。 右手で陽を遮りながら、急いで車に乗り込む。…

問題を解決しようとするよりも、ビジョンを観ることを。 ~クワガタ戦記2020

梅雨入り前の時期、一昨年、昨年とお世話になった同僚の「クワガタ先生」から目撃情報が入った。 そう、クワガタである。 梅雨入り前のこの時期から出始め、梅雨明けからはカブトムシと入れ替わる。 息子にそれを伝えると、一にも二にもなく、すぐ行く、と言…

立夏雨情。

この時期の雨は、どこか優しい。 日に日に上昇する気温に身体が堪えることも多いが、その火照りを冷ましてくれるようだ。 雨に対する想いは、そのまま自分自身の状態でもある。 = あの頃、なぜ雨があんなにも気にならなかったのだろう。 天気予報を見る習慣…