大嵜 直人のブログ

文筆家・心理カウンセラー見習い。

忘れないでいる。

いまから20年以上も前の当時、いまと比べて写真というメディアに記録する手段は、限られていた。 専門知識が必要なごついカメラで撮影し、それを現像するハードルの高さは、なかなかのものだ。 そのハードルを低くしたのが、インスタントカメラの出現だった…

主よ、人の望みの喜びよ。

いつもの時間、いつもの通り道。 窓のガラス越しに、道行く車を眺めている。 店内には、車の通過音は聞こえない。 途切れなく行き交う車は、どこか無音映画のように見えた。 そういえば、今日この店に行かなくちゃならないんだった。 意志ではなく、過去に決…

変な関西弁を話す神さまのこと。

その先輩は、変な関西弁を話した。 はじめて配属された部署の、一年先輩だった。 地下の冷蔵庫を案内してもらいながら、穏やかに話しかけてくれた。 関西の学校を出たと聞いたが、その関西弁は変だった。 漫才をする芸人や、あるいはわたしが知っていた関西…

真清田の神さまのふところで、今年初めての桜を愛でること。

早朝の真清田神社を訪れる。 手帳を見てみたら、ちょうど一月ぶりの訪問だった。 先月は雨だったが、今日も分厚い雲が空を覆っていた。 それでも、吹く風は穏やかで、もうどこにも冬の凛とした冷たさはない。 一年前の春。 緊急なんとかが発出され。 もっと…

蝶よ、花よ。いつしか、その姿を変えて。

時に、啓蟄。 あるいは、菜虫化蝶、なむしちょうとなる。 菜虫とはその字のごとく、アブラナや大根などの葉につく青虫を指し、モンシロチョウなどの幼虫。 長い冬を越したサナギが羽化し、美しい蝶へと姿かたちを変える。 いきものは、不思議だ。 時に、まる…

花は誇らず、ただ咲く。

音に波があり、海に波があり。 風に揺らぎがあり、生きることにも山谷があるように。 空模様もまた、日々変わりゆく。 昨日は、久しぶりに土砂降りという表現がぴったりとくる雨風だった。 朝から気圧は低く、身体もずしりと重い感じがした。 だからだろうか…

イソノルーブルと松永幹夫騎手に寄せて、ウマフリさんに寄稿させていただきました。

10年ひと昔とは言いますが、これが30年になると、ノスタルジーや郷愁のようなものが生まれるようです。 いまから30年前の春。 桜花賞トライアル、報知杯4歳牝馬特別。 稀代の快速牝馬・イソノルーブルと、気鋭の若手だった松永幹夫騎手のコンタクト。 そんな…

桃始笑。

時に啓蟄、あるいは桃始笑・ももはじめてわらう。 桃の花が咲くころ。 花が咲くことを笑うと表現する、ことばの美しさ。 梅が咲き、桃が笑い、桜も蕾が膨らみ。 いつしか、空の色も変わり。 春は、過ぎてゆく。 桃の花は咲き、誇り、いつしか枯れて、その花…

瞬間と永遠。

時は流れ、いつしか目の前から消え去っていく。 まだまだ先だと思っていた時間は、いつしか遠い記憶の彼方に押し込められている。 過ぎ去った時は、どれだけ悔いても、いくらお金を積もうが、戻ることはない。 「いま」という時間を、つかまえることができな…

寂しさ、あるいは罪悪感で故人とつながろうとすること。

母を亡くしてから、ちょうど18年が経つ。 18年前のあの日、どんな空が広がっていたのか、もう思い出すこともできない。 ただ、その日、その事実を知った日から、寂しい、あるいは悲しいという感情を断ち、まるで母も父もいなかったかのように振る舞った。 そ…

近い存在ほど、自分の中にない選択肢を示してくれる。

「きめつのマンガがほしい」 そう言い出したのは、息子だった。 例の大ヒットアニメを熱心に見だしたあたりから、そうなるだろうなと想像していたが、読みたい本があるのは、喜ばしいことだ。 わたしも息子くらいのころは、てんとう虫コミックの「ドラえもん…

春が訪れることに、原因などありはしないように。

いつもの通り道、ふとしたピンク色に気づく。 いつもと違う、まんまるとした、やわらかな蕾、やさしい色合い。 その木が花を咲かせることすら、意識になかったのに、このふくらみ。 春の色と形は、どこか官能的だ。 ここ数日、寒の戻りなのか、冬に逆戻りし…

墓前に捧ぐ。

息子は、遠いからついてこない、と言った。 もう墓参りというイベントも、退屈な年ごろになってしまったのだろう。 寂しさに敏い娘が、出がけについてくると言ったが、結局はやめておくことになった。 ここのところ、何度かついてきてくれていたので、久しぶ…

何も起こっていない。

その中に大きなエネルギーを秘め、新芽はふくらむ。 春の陽気に誘われて、花は歌い、虫たちは顔を出す。 同じように、人も気温が上がると、縮こまっていた身体も少しずつ伸びてくるようだ。 されど、空は霞がかかったようになり、眠気を誘う。 春の、訪れ。 …

啓蟄、咲き誇るまで。

時に啓蟄。 蟄虫啓戸、すごもりむしとをひらく。 字のごとく、冬ごもりをしていた虫たちが、大地の暖かさに誘われて、地上に出てくるころ。 春らしく晴れたり降ったりと、不安定な空模様が続くが、それでも日に日に冬の冷たい茎は緩んできたような感がある。…

断酒日記【853日目】 ~決めることと、あきらめること。

さて、断酒して853日目である。 2年と4か月、まあよくもっているものだと思う。 時に、しとしとと天地を湿らすような霧雨が振ると、断酒をした日のことを思い出す。 あの日も、小雨が降る日だった。 立冬もほど近くなった、霜月のある日。 自宅の近くの川沿…

2011年JRA CM「20th Century Boy」に寄せて

「宣伝は何のために打つのか?」 と問われれば、新規顧客の開拓か、もしくは既存顧客をつなぎとめるためか、いずれかの目的になってくるのだろうと思う。 イメージアップを図ったり、ブランド化ををするのも、そのいずれかの目的のためだ。 こと中央競馬、JR…

草木萌動のころ、熱田神社にて。

椿と山茶花の見分け方は、花の落ち方が最も分かりやすい。 花びらが一枚一枚散っていく山茶花と、花がまるごとぽとりと落ちる椿。 いつか聞いた、そんな話を思い出す。 自宅の周りには、山茶花が多いからだろうか。 椿を見かけると、嬉しくなる。 熱田神宮の…

CHAGE&ASKA「LOVE SONG」に寄せて。

社会のありよう、人と人のかかわり方というのは、時代とともに移ろいゆく。 けれど、人が誰かに恋をして、そして愛するということは変わらない。 たとえば百人一首よろしく、1000年以上も前に詠まれた詩歌の多くは、花鳥風月を愛でる歌と、恋愛に関する歌が…

蛯名正義騎手の引退に寄せて。

出会いと別れの、春。 競馬界においても、2月の終わりは別れの時期だ。 家業を継ぐために勇退される角居勝彦調教師、定年を迎える石坂正調教師や松田国英調教師など、今年は8名の調教師が引退となった。 そして騎手では、蛯名正義騎手が鞭を置いた。 昨年、…

反対側に気づくと、早い。

真夏の強い日差しによって、最も色濃い影がつくられるように。 人生最大の不幸が、時を経ると人生最大の恩恵になるように。 子どもの悪態の裏には、信頼と愛が隠れているように。 ものごとには、すべて表と裏があり、陰陽あわせて世界を形づくっている。 こ…

痛みと色彩。

灰色の世界、という表現がある。 こころが曇ったとき、 痛みとともにあるとき、 あるいは袋小路のようなこころの迷路に入ってしまったとき。 そんなとき、目に映る世界を表現した言葉だ。 目の前に広がっている澄んだ空が、まるでそこには存在しない。 とき…

言えることは、癒えること。

やまとうたは、人の心を種として、よろづの言の葉とぞなれりける。 世の中に在る人、事、業、、繁きものなれば、心に思ふことを、見るもの、聞くものに付けて、言ひい出せるなり。 花になく鶯(うぐひす)、水にすむ蛙(かわづ)の声をきけば、生きとし生け…

ヒーローインタビュー。

野球が好きだった、少年時代。 父にナゴヤ球場に連れて行ってもらうのが、何よりの楽しみだった。 いつもお決まりの、ライトスタンド。 内野のいい席のチケットがあっても、外野席で応援するのが常だった。 せっかくのいい席なのに、と渋る父の袖を引っ張り…

春霞、たなびきはじめて。

急に、暖かくなった。 20度近い気温にもなると、初夏を思わせる。 これだけ急に外気温が上がると、身体もどこか気怠くなるようで、ぼんやりとしてしまう。 時に、霞始靆/かすみはじめてたなびく。 その字のごとく、春霞がはじめてたなびき始めるころ。 ぴり…

断酒日記【843日目】 ~寂しい夜の過ごし方

さて、断酒して843日。 2年と3か月半ほどになった。 考えてみれば、お酒とも20年くらいの長い付き合いをしてきたが、その盟友から離れてもう2年以上になるというのは、感慨深い。 人生の中の時間の比率で考えてみると、お酒を飲んでいた期間と、飲んでいない…

砂上に舞う、名手たちの手綱。 ~2021年フェブラリーステークス 回顧

2021年のGⅠ戦線の劈頭を飾るフェブラリーステークス。 灰色の冬空の下、府中に今年最初のGⅠのファンファーレが鳴り響く。 昨年の覇者、モズアスコットは昨年末で現役を退き、長い間主役級を張ってきたゴールドドリームも同じく昨年いっぱいで引退した。 バト…

出立の朝。

黄色が、目に留まるようになってきた。 路傍の花の色に加えて、白く透明感のあった陽の光の色が、暖色を帯びてきた。 春の訪れ。 そう聞くと、こころはずむことを思い浮かべるが、やはり新しいことへの変化というのは面倒で、時に恐ろしいものだ。 冬の間の…

梅の香、東風とともに。

寒の戻りはありつつも、空気の流れはどこか緩さを含み。 時に、土脉潤起・つちのしょううるおいおこる。 真冬の間に凍てついていた土も、雪解け水により湿り気を帯びてくるころ。 山から流れ出る雪解け水は、栄養分をたっぷりと含んだ生命の水でもあると聞く…

乙女の祈りに。

娘と息子が来年から学校で使う「リコーダー」と「水彩用具セット」が、届いたようだ。 新しいおもちゃが手に入ると嬉しいのは、いつの時代の子どもも同じようだ。 それらを開封して広げて、興奮していた。 リコーダーを見よう見まねで吹いてみたりもしていた…