だいぶ夜も更けてきましたね。
蒸し暑い中にも、風の中に秋の訪いを感じるようになりました。
不惑も近くなると、故郷はいいものですね。
人それぞれに故郷への思いがあるので、何とも言えないのですが。
かつてニーチェが、
もしせむしからその背のこぶを取るならば、それはかれの精神を取り去ることになる。これは民衆がわたしに教える智恵だ。
フリードリッヒ・W・ニーチェ「ツァラトゥストラかく語りき」より
と書いてますが、故郷は自分の「こぶ」のようなものなのでしょうね。
よくも悪くも、それがなければ自分でない、というような。
そう言う私ですが、故郷を心理的に切り離していた時期がありました。
過去形で書いてますが、つい最近までですね。
ようやく、ワクワクすることで故郷を訪れることができました。
そんな言葉です。
私の故郷の祭り。
室町の昔から連綿と続き、信長や秀吉も愛でた巻藁船に、今年も提灯が一つ灯される。中心の柱には13個、そして半円の飾りには365個の提灯が灯される。その数で一年の歳月を表すが、柱が13個なのは今年、閏月があるからだそう。
祭りを訪れるのは、いつくらいぶりになるのだろう。避けていたのではないだろうが、何かしかの心理的なブロックが働いてはいたのだろう。
いつからか、私は無色透明な人になりたかったのかもしれない。自立した個になるためにいろんなものを切って捨て、喜びも悲しみも少なく、好かれも嫌われもしたくない。
けれど、それは孤立を深めただけだった。自分のルーツを捨てたところで、いったい何かになれるとでもいうのか?他人との繋がりを感じ、喜びも悲しみも、好きも嫌いもたくさん味わいたいから、ここにきたんだろ??
酸いも甘いも楽しもう。
素晴らしきかな人生。
幽玄な巻藁船とユネスコ登録を祝う打ち上げ花火を眺めながら、昔を思い出す。
くせ毛たれ目の小さな私は、宵祭りが終わると近くにあった祖父の家によく泊まった。向かいの通りを歩いて帰る見物客の足音と、今日の感想を話す小声が窓の外から聞こえていた。
祭りの興奮と余韻でなかなか寝付けずにゴロゴロと寝返りを打つ中、それを聴くのはなぜか心地よかった。
この場所からまた始めよう。
ないもの以外、全てここにある。
今日、ここに来れてよかった。
それにしても冷酒は後から効くなぁ。
ちゃんと帰れるかな・・・
2017.7.22