早いもので、もう8月も終わりですね。
オープンして無事に1週間が過ぎました。
ひとえにご贔屓にして頂いております、みなさまのおかげです。
一日、一日と日を重ねるごとに、少しずつ洗練された言葉をお楽しみ頂けるように精進いたします。
今日は、そんな時間と熟成についての言葉はいかがでしょうか。
ヨハネス・ブラームス
ヴァイオリン・ソナタ第3番ニ短調、第2楽章
情感豊かに歌う長調の旋律の中に、晩年のブラームスの苦悩と孤独、そして諦念が垣間見える。
15年前にサントリーホールでマキシム・ヴェンゲーロフさんの演奏を聴いたときは、心が震えた。背中じゅうに鳥肌が立ち、なぜか涙が止まらなかった。楽器一つ、言葉も使わずたくさんの人の魂を揺さぶる名人芸だった。
その後感情をぶった切ってた時期は音楽を聴くことも少なく、あの情感を思い出すこともなかったが、今になってあらためて聴くとCDでも涙を誘う。
人が何かの作品と関わるとき、時間という魔法が大きく作用するのだろう。表面上は忘れたように見えたとしても、そのときの情感は重厚なワインのように熟成され、コルクを開けられるのをただ待っている。
何かを生み出す、創造することは人の最も偉大な能力の一つ。
それは芸術に限らず、今日この一日もまた、その人の創造する美しい作品なのだろうと思う。
今日はどんな一日を過ごそうかな。
2017.5.10
マキシム・ヴェンゲーロフさん。
私が聴いたそのコンサートから数年後に、右肩を故障して演奏活動を引退し、後進の育成と指揮者としての活動にシフトしたと伺っておりましたが、少し前にカムバックして演奏活動を再開されているようですね。
100年に一人の天才と称される彼が、初めてリサイタルを開いたのは5歳か6歳のときと伝えられています。こんな素晴らしい音楽を奏でられる方が同時代にいる、それだけで「素晴らしきかなこの世界」、と思わせてくれるヴァイオリニストです。
ぜひまた彼の生の演奏を聴きたいものです。
今夜はブラームスをバックに、どうぞごゆっくりしていかれてください。