いよいよ12月に入りましたが、師走の風物詩・中京競馬場の開催が今日から始まっていますね。
名古屋駅でも各所でプロモーションが行われており、開催を盛り上げています。名鉄百貨店前の名物、ナナちゃん人形はジョッキーの勝負服に着替えていたり、名鉄の改札口周りの柱には開催を告知する広告が並んでいます。
そして、その名鉄の中央改札を出て地下鉄東山線に向かう通路に、等身大の競走馬のオブジェが飾っています。
その名馬のモチーフは、サイレンススズカ。
美しい栗毛をした快速馬でした。
1998年6月、この地で開催された金鯱賞というレースで、当時のレコードタイムで駆け抜け大差勝ち(2着に10馬身以上の差をつけての勝利)をおさめたことで、中京競馬場にはゆかりのある名馬です。トップレベルの競走馬が出走する重賞レースでの「大差勝ち」は珍しく、過去にいくつの例もありません。
今日はそんな名馬に寄せて綴ってみます。
1998年、毎日王冠。
エルコンドルパサー
グラスワンダー
そして、サイレンススズカ。
ともに無敗でG1を制し無限大の才能を見せる若き4歳2頭と、5歳に入りあふれんばかりの才能を覚醒させた5連勝中の韋駄天。
この三つ巴のレースを観戦しようと、東京競馬場にはG2レースとしては異例ともいえる13万人の人が詰めかけていた。
レースはサイレンススズカが逃げ、前半1000mを57.7秒のハイラップを刻む。第3コーナーからグラスワンダーが徐々に進出、一呼吸置いてからエルコンドルパサーもサイレンスを捕まえに行く。しかし直線に入ってもサイレンスの脚色は全く衰えず、2着のエルコンドルに2馬身半差をつける完勝。史上最高のG2とも称される、名勝負だった。
逃げ馬には、2種類いる。
遅さを競う逃げ馬と、速さを競う逃げ馬。
前者はゲートの出の上手さやスタート直後のダッシュ力を活かして先頭に立ち、その後ペースを落として後続馬の速さを相対的に封殺する。
一方、後者はスピードの絶対値で先頭に立つ。逃げているのは、あくまで自分のペースで走った結果である。
サイレンススズカは、間違いなく速さを競う逃げ馬だった。
あり余る才能を持て余した雌伏の期間を経て、彼と武豊騎手がたどり着いたのは、スタートから自らの全速力で走る、大逃げのスタイルだった。
とことんまで逃げた。
5歳になってからの走行距離11.4キロ、先頭は誰にも譲らなかった。
敵なんかどこにも見当たらない。
その可能性はどこまでも広がっていた。
この毎日王冠で6連勝を飾るゴールだったが、まさかこれが最後のゴールになるとは・・・そのとき想像だにしなかった。
この季節になると、いつもあの美しい栗毛の快速馬を思い出す。
合掌。
そして、ありがとう。
2017.10.8
4歳時の弥生賞でゲートをくぐるヤンチャな幼さを見せていたときから、5歳を迎えての覚醒。
1998年の当時、18歳だった私にとって、サイレンススズカの美しも速く、そしてたくましい大逃げの走りは、憧れでした。
私の青春を彩った優駿でした。
彼にまた会えて、嬉しかったです。
いつか私もあちらの世界へ旅立ったら、彼に伝えたいと思います。
ありがとう、と。
今日も、ごゆっくりお過ごしください。