先週あたりから、陽の光の色が少し変わってきた気がする。
凛とした色から、少し輪郭のぼやけた色に。
路傍の広葉樹にも、午後のその柔らかな色の光が降りそそいでいた。
その陽の光は、ある一点を照らしているように見えた。
美しい新芽、芽吹き。
言葉を失う、その瞬間。
ただ見とれる、その刹那。
見ている私と、見られている世界の境界が溶けあうように。
それは、静かな静かな、そしてほんのわずかな時間。
そんな瞬間に、霊性は宿るのだ。
美しさと静寂は、細部の中にこそ見いだせる。
ほんの小さな小さな細部にこそ、もっとも偉大な神の息吹が宿る。
この未分化で混然としながらも、それでいて完全な世界。
この世界はすべて満ち足りている。
言葉はいつも遅れてくる。
緑、黄色、赤、オレンジ、青。
新芽、葉、茎、陽、葉脈。
言葉にしたとたんに、それは「切り分けられた」ものになる。
言葉に変えた瞬間に、それは「過去」になる。
言葉で伝えようとしたそのときに、それは「思考」になる。
未分化な混然とした世界と、切り分けられた整然とした世界。
言葉はいつも不完全で何か足りない。
その対比ともどかしさこそ、この世界を生きる理由でもある。
寂しさと欠乏感こそが、生きる理由であるように。
今日もこの世界は変わらず、すべて満ち足りている。