1969年のスピードシンボリからはじまった、日本馬による凱旋門賞の頂への挑戦。
ちょうど今年で半世紀が過ぎた。
日本競馬史を彩る綺羅星のような、のべ22頭の優駿による渡仏の歴史は、そのまま日本馬による海外遠征の歴史でもある。
1999年。
エルコンドルパサーと蛯名騎手の、無人の荒野を往くが如くの逃げ。
欧州のプライドたる歴史的名馬・モンジューと同じゲートに入った僥倖と、不運。
2010年。
ナカヤマフェスタと再び蛯名騎手による、魂のインコース粘り。
英ダービー馬・ワークフォースの意地。
2012年。
オルフェーヴルとスミヨン騎手の暴力的なまでの4コーナーの脚。
残り50メートルの闇、ペリエ騎手とソレミアの狂気じみた執念。
2013年。
オルフェーヴルとスミヨン騎手の捲土重来、
怪物・トレヴの戴冠。
いずれも2着が最高着順であり、ロンシャンの頂は未踏の地のままである。
2019年の今年は、3頭の優駿がその頂へと挑戦する。
角居調教師が送り込むは、超不良馬場の菊花賞を制したキセキ。
ともに挑むはずだった今年のダービー馬は、屈腱炎により夢半ばで渡仏を断念するも、鞍上のスミヨン騎手とともに息の長い先行力で、その名の通りの奇跡を起こすか。
3歳で有馬記念を制した異能、ブラストワンピースには川田騎手。
札幌記念を前哨戦に挑むは、3歳で有馬記念を制した異能・ブラストワンピースと川田騎手、そしてフィエールマンとルメール騎手。
2頭ともイギリスはニューマーケットの坂路で調整し、直前にフランス入りという前例のない行程でロンシャンに挑む。
現地の欧州勢は、今年もまた強烈。
長い凱旋門賞の歴史の中でも前人未踏の3連覇という偉業に挑むは、エネイブルと「フランキー」デットーリ騎手。
すでに歴史的名牝の誉れ高い彼女は、「史上唯一」の牝馬という伝説にまで登り詰めるのか。
そのエネイブルと接戦を演じたマジカル、3歳馬の大将格・ジャパンと日本でもおなじみのライアン・ムーア騎手、同じく3歳の前哨戦のニエル賞を勝ってきたソットサスと「ミルコの弟」クリスチャン・デムーロ騎手なども虎視眈々。
そして何より、武豊騎手が追加登録のソフトライトで参戦。
日本の誇る名手の名があるだけで、華のある出馬表だ。
ただ女王の牙城は高く、それ以外のメンバーも強烈。
下馬評では、日本から参戦の3頭の評価は高くなく、苦戦は必至かもしれない。
それでも、確実に報われる挑戦など、挑戦ではない。
報われる保証もなにもないところで、挑戦することをやめずに継続すること。
それは非常に困難なことである。
されど、もし諦めずに挑戦することをやめない者たちがいるのならば。
それはもはや、才能と呼べるものなのだろう。
人はその才能に、惹きつけられ、声援を送る。
挑戦することを、止めるなかれ。
キセキは信じた者にこそ、訪れる。