ベッドの中で目を閉じるが、なかなか眠りは訪れてくれなかった。
それでも、屋根を叩く雨の音はどこか心地よかった。
初秋に夏の名残を和らげる雨。
台風がもたらす激しい雨。
急に降り出す秋時雨。
晩秋の落ち葉を濡らす冷たい雨。
さまざまな秋の雨の情景を思い浮かべたが、今夜の雨はそのどれでもないようだった。
浅い眠りから覚めると、朝日が眩しかった。
夜にその音を響かせていた雨は、止んだようだった。
路面は濡れていたが、それでも空気は乾いていた。
寒露の頃にその名を覚えたランタナに、雨の名残があった。
その朝露のような雫を見て、なぜか故郷を思い出した。
おそらく、昨日の雨はやさしい雨だったのだろうと思った。
そういえば、節気は寒露から霜降に移っていた。
霜が降り始めたであろう、北の国々を想った。