霜月の終わり、ジャパンカップ・デーに東京競馬場を訪れた。
この週は金曜日から雨が降り続いていたが、午前中に到着した時はかろうじて雨が上がってくれた。
七十二侯でいうところの「虹蔵不見(にじかくれてみえず)」、曇り空が多くなって陽射しが弱まるころ。
師走の声とともに、冬の訪れを実感することが多くなる日々。
府中の女王・ウオッカ像にご挨拶。
彼女がジャパンカップを勝ってから、もう10年も経ったのか。
その思い出を偲んでか、この日も多くの献花が捧げられていた。
2レースが終わった後には、こんな晴れ間も出ていた。
陽の下にいると汗ばむくらいの陽気で、コートを脱ぎたくなるが、さりとて手荷物になるのも面倒だ。
この時期の服装は、ほんとうに難しいものだ。
今年のジャパンカップは、先日急逝したディープインパクトを祈念して、副題に「ディープインパクトメモリアル」を冠して施行された。
場内には、ディープインパクトの偉大なる戦績を称えるモニュメントが。
失意の凱旋門賞から帰国した後、その鬱憤を晴らすように駆け抜けたジャパンカップが、2006年だった。
13年後の今年のジャパンカップには、4頭の彼の産駒たちが出走する。
その今年のジャパンカップには、国際招待競走にもかかわらず、海外馬の参戦は「ゼロ」というターニングポイントになりそうなレースになった。
食い下がるヒシアマゾンを振り切った、ドイツのランド。
4歳・ファビラスラフイン奇跡のイン粘りも届かなかった、イギリスのシングスピール。
女傑もダービー馬もちょちょいのチョイで振り切った、エルコンドルパサー。
そのエルコンドルパサーをロンシャンで下したモンジューを、府中で破ったスペシャルウィーク。
日本馬対外国馬という対決に胸を躍らせたのは、もう遠い昔になってしまったのかもしれない。
されど、短期免許を取得して世界から超一流の騎手たちが、この秋も来日してターフを賑わせていた。
フランスの名手、クリストフ・スミヨン騎手。
この秋も、エリザベス女王杯でラッキーライラックを復活に導くなど、活躍を重ねていた。
イギリスから、ウィリアム・ビュイック騎手。
昨年のマイルチャンピオンシップをステルヴィオで制した記憶も新しい。
落馬負傷により休養していたが、夏から実戦に復帰しての来日。
日本のレジェンド、武豊騎手。
「老いて益々壮んなるべし」の格言のまま、第一線で活躍を続けるその姿は、まさにレジェンド。
今年の菊花賞、ワールドプレミアの勝利は、まさに彼の真骨頂だった。
手前の黄・赤縦縞、黒袖の勝負服、クリストフ・ルメール騎手。
JRA所属となって3年余り、リーディングジョッキーとして確固たる地位を築いて久しい。
騎乗馬を見る優しい笑顔が印象的だ。
その後ろ、黄・黒縦縞、袖青一本輪の勝負服、競馬界の「生きる伝説」、ランフランコ・デットーリ騎手。
「デットーリが乗ると5馬身は違う」と称され、凱旋門賞を史上最多の6度制している、その手綱。
メルボルンカップでの騎乗停止でヘソを曲げてしまったのか、来日が遅れていたが、無事にその御姿を拝める僥倖に感謝したい。
その他にも、イギリスからオイシン・マーフィー騎手、ライアン・ムーア騎手といった名手が、この府中で騎乗していた。
どのジョッキーも、柔らかな所作の中に、張り詰めたエネルギーを内包しているようで。
出馬表を開けば、世界オールスターのような豪華な騎手の名前が、そこに並んでいるのがたまらない。
4コーナー付近から観戦。
遠くに見えるスタンドから聞こえる歓声が、海鳴りに似て。
午後からも雲が出ていたが、幸いに雨は止んでくれた。
馬場も不良馬場からのスタートだったが、次第に乾いてきて10レースには重馬場まで回復した。
そうこうしているうちに、ジャパンカップの本馬場入場の時間に。
私の本命、13番エタリオウと横山典弘騎手。
世界の名手が揃ったが、日本の天才・ヨコテンここにあり!という騎乗を見せてほしい。
14番・マカヒキと武豊騎手。
3歳秋のフランス遠征以後、あと一歩足りない惜敗が続くが、3年前のダービーと同じ舞台で、その輝きを取り戻せるか。
ジャパンカップは、別のエントリーで書いたとおり、オイシン・マーフィー騎手に導かれてスワーヴ・リチャードが復活の勝利。
思った以上に、馬場は内から乾いていたようで、内で粘るカレンブーケドールを差し切った。
エタリオウと横山騎手は、道中はいい位置につけていたのだが、残念ながら及ばず。
荒れた外目の馬場を通らされたのが響いたか。
最強の1勝馬、次の勝利はいつになるのだろう。
「秋の日は釣瓶落とし」の言葉の通り、レースの後で呆けていると、すぐに夕闇が。
祭りの後、そして年内最終開催が終わったあとの、この寂寥感といったら…
朝のワクワクとの落差、それこそが、生きているという証なのかもしれない。
バイバイ、東京競馬場。
また来年、会いましょう。