「ベストを尽くします」
そう彼女は繰り返した。
心に秘めた目標も、その数字もあるにはあるだろうが、その言葉を繰り返した。
控えめとも取れる意気込みが、逆にその覚悟を際立たせる。
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ほんとうに強い人ほど、強い言葉を使わないのかもしれない。
あくまで、自然。
柳のように揺れながら、竹のようなしなやかさを持ちながら。
強さとは、砕けない硬さではなく、折れないしなやかさ。
「ベストを尽くします」
その言葉に、そんなことを想う。
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いったい、ベストを尽くすとは、どういうことだろう。
それは、一つの終着点として。
やることは、やってきた。
そして当日も、やることを尽くす。
その、宣言。
その宣言をするとき、人はいまここに生きる。
思うようにできなかった過去の後悔や、
あるいは
未来と結果をコントロールしようとする欲も、
そこにはない。
あるのは、「いま」のベストを尽くす、という覚悟のみ。
覚悟とは、
ままならなかった過去を受け入れ、望まない結果が訪れる未来に身を委ねる、
そんな強さなのかもしれない。
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英語の”will”という語は、未来と意志と二つの意味を宿す。
それは、同じコインの裏表なのだろう。
そのコインの名を、
覚悟
という。
覚悟は、言葉に現る。
花はいつもベストを尽くしているような。