二十四節気、七十二侯を追っていくと、季節というものはほんとうに立ち止まらないものだと痛感する。
ほんの少し前に啓蟄に入ったような気がするが、七十二侯ではその次候の時節だ。
桃始笑。
ももはじめてさく。
桃のつぼみが開き、花が咲き始めるころ。
3月といえば、桃の節句が思い浮かぶが、その花が咲き始めるのが、いま時分なのだそうだ。
そして旧暦のひな祭りにあたる4月上旬にかけて、満開を迎える。
何より美しいのは、「笑う」という表現だ。
昔は花が咲くことを、「笑う」という言葉で表現したことからきているが、その表現の美しさよ。
桃の花が咲く。
桃の花が、笑う。
ゆっくりと蕾を開かせる春の花に、微笑みを見る美意識。
「山笑う」とは、芽吹き始めた山を形容する春の季語でもある。
まだ寒風吹きすさぶ中、先駆けて咲く梅。
柔らかな日差しに笑う桃。
そして春の名残りを綺麗に散らす桜。
古来より、私たちはそれらの花たちを愛で、その微笑みに癒されてきた。
桃始笑。
何とも美しいこの言葉で、春を愛でよう。
伊豆シャボテン公園で見た、桃の節句。