陽射しが、夏である。
透明感がありつつも、どこか感傷的になる、その光の色。
毎年のこととはいえ、夏の訪いは、その別れのセンチメンタルと同居している。
そして、年々そのセンチメンタルに浸るのが、早くなっているようにも思う。
息子は、そんな夏の訪いに反応して、早くもクワガタ・カブトムシを捕まえに行くスケジュールを考えて、ソワソワしている。
気の早い「イラチ」な彼の性質は、誰に似たのだろう。
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七十二侯では、「蚯蚓出(みみずいずる)」の時候。
豊かな土壌の象徴ともされる、ミミズが眠りから覚めて地上に出てくるころ。
土から虫が出てくるというと、3月上旬の「啓蟄」を想起するが、ミミズは他の虫に比べてマイペースなようだ。
春先から活動をはじめるカエルやムカデといった生きものと、夏の気配を感じてようやく顔を出すミミズ。
そのどちらも、彼らの与えられた「生」を生きている。
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こう書きながら、最近ミミズを見ていないことに気づく。
小さい頃は、学校の校舎の影のじめじめした場所や、原っぱの草むらの影に、よくいた。
地面に空いた小指の先ほどの小さな穴と、その近くに積まれた糞塚。
昆虫に遊んでもらっていた私にとっては、彼らは身近な存在だった。
夏が終わりに近づくと、アスファルトの上で力尽きて、干からびた彼らをよく見た。
その姿に、夏の終わりの切なさを重ねる。
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ミミズは、夏の気配が感じられる頃、ようやくゆっくりと活動をしはじめる。
そして、せっせと土の中を動き回り、這いずり回り、土を耕してくれる。
腐敗した土を食べ、消化することで、命を循環させてくれる。
ときに、そんなミミズのように。
ゆっくりと、歩こう。
夏色の雑木林。またカブトムシ・クワガタを探しに行くのだろうか。
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