日増しに気温が高くなり、真夏日を記録することが増えてきた。
いよいよ、夏である。
二十四節気では、「芒種(ぼうしゅ)」の時候に入った。
「芒(のぎ)」とは、稲や麦の穂先に見える針のような突起のことで、それらの種を蒔くのが、いまの時分とのこと。
梅雨入りするのも、この時期だ。
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そう思って見上げた空は、青さが深みを増してきたようだ。
それは、もう夏の空の色のように見えた。
そういえば、最近空を見上げていないことに気づいた。
人間、思考的になると、視線はどうしても下を向くような気がする。
視線が下を向くと、必然的に顔も下を向く。
それは思考を張り巡らせ、地に足を着けることには、確かに役に立つかもしれない。
けれど、ずっとそれを続けていると、どうしても近視眼的になり、閉じる方向へ閉じる方向へと思考が向かってしまうのだろう。
「上を向いて歩こう」とはよく言った(歌った?)もので、地に足を着けた後には、空の無限の広さを想う時間が必要だ。
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空を見上げると、上を向く。
上を向くと、口角が上がる。
口角が上がると、笑顔になる。
笑顔になると、人は自由になる。
それまで現実的にしか考えられなかった思考が、自由に飛び回るようになる。
翼を、得たように。
夏色の空を、自由に飛び回る。
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いつの間にか、雲は流れて形を変えていく。
空を、見上げよう。
芒種の、空を。