日中の外気が、明らかに変わった。
夏のうだるような、思考が止まるような熱気はそこにはなく、どこか芯のない暑さだった。
雲が、出ていた。
明日からしばらく、天気は崩れそうだ。
見慣れぬ色が、目に留まった。
その場所は、昨日しおれた小さな花弁があった場所だった。
この色は、夏の色ではない。
秋を、感じさせる。
小さな小さな、秋の挨拶。
たしかに、昨日まではなかったはずだ。
そして、昨日はここに、もの哀しくしおれていた花弁があったはずだった。
なぜだろう。
わずか一日で咲いたのか。
それとも、昨日見た、あの優しい青色の花弁は、咲きかけだったのか。
だとしたら、なぜ私は枯れそうな花弁だと思ってしまったのだろう。
ぐるぐると思考はまわり、カメラを抱えたまま立ち尽くした。
=
どちらでも、いいような気がした。
もしも、枯れる花弁が内面の投影であるならば。
それを、感じたかったのだ。
それは、否定すべきものでも、修正すべきものでもない。
ただ、世界をそう見たかった。
ただ、そう感じたかった。
だれでもない、自らのこころで。
それだけのことだ。
そこに、意味も、善悪も、カルマも、痛みも、何もない。
いや、それらがあってもいい。
ただ、そう感じたことを否定しない。
ただ、そのようにいる。
ただ、あるがままに在る。
今日は、咲いていた。
紫色の、花弁。
秋の、訪い。
咲く、長月。