大嵜直人のブログ

文筆家・心理カウンセラー。死別や失恋、挫折といった喪失感から、つながりと安心感を取り戻すお手伝いをしております。

力勝負と、快気祝い。 ~2020年 チャンピオンズカップ 回顧

4コーナーを3番手で回る、前年の覇者。

単勝1倍台、圧倒的な1番人気に支持された、国内無敗の王者・クリソベリルと川田将雅騎手。
2020年のチャンピオンズカップは、そのクリソベリルに対し、前年の同レースで2~4着のゴールドドリーム、インティ、チュウワウィザードといった実績馬、そして砂に活路を見出しつつあったタイムフライヤー、エアスピネルが挑むという構図。

そして3歳世代から唯一の出走となった、カフェファラオ。
大物の呼び声高いこの3歳だけは、クリソベリルと未対戦であり、前年同様に3歳での戴冠を期待され2番人気に推されていた。
鞍上は、GⅠ・5連勝という大記録に挑む、クリストフ・ルメール騎手。

しかし、直線に向いても、クリソベリルは案外に伸びない。

先行するエアアルマス、インティとの差は縮まらず、逆に外から戸崎圭太騎手のチュウワウィザードが伸びる。
さらにその外から和田竜二騎手とゴールドドリームも襲い掛かる。

叩き合いにはならず、チュウワウィザードが抜け出し、1着。
2馬身半差の2着に追い込んだゴールドドリーム、粘った武豊騎手のインティは3着を確保。
クリソベリルは、そこから1馬身遅れた4着と、国内で初めての敗戦を喫した。

結果的には、昨年の1~4着馬が力を見せて、順位を入れ替えた形の決着となった。
また、4番人気のチュウワウィザードが勝ったことで、この秋のGⅠ戦線において秋華賞から継続していた1番人気の連勝はストップした。

先週のジャパンカップを終えて、一つ潮目が変わったのかもしれない。

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チュウワウィザードは前年4着から、雪辱を果たしての戴冠。

帝王賞・JBCクラシックとルメール騎手が騎乗して連続3着と、惜しい競馬が続いていたが、見事に交流競走を含めてGⅠ3勝目を飾った。

1コーナーでクリソベリルを前に置く形のポジションを確保し、4コーナーでスムーズに外を回す戸崎騎手の騎乗は、人気を集めたクリソベリルに対して、正攻法で力勝負を挑んだ形。
デビュー以来、安定して力を発揮するチュウワウィザードの力を信じていた、ということだろう。

これで、戸崎騎手はエポカドーロで制した2年前の皐月賞以来のGⅠ勝利。
前年秋のJBCレディスクラシックでの落馬負傷により、半年近くの長期休養となっていたが、その快気祝いとも言える勝利となった。
円熟味を増すその手綱に、ますます磨きがかかるようだ。

 

2着にゴールドドリーム。

7歳ながら衰えぬ末脚を、テン乗りの和田竜二騎手が引き出した。
アタマまで突き抜けることは難しかったかもしれないが、自分の形が整えば、まだまだ一線級でやれる力を示した。

来年は8歳、夢の続きはまだ見られそうだ。

 

3着にインティ。

好発からエアアルマスを前に置いて、終始つついて楽をさせず厳しいペースをつくり、早めに仕掛ける。
武豊騎手の老練ともいえる騎乗は見事。

フェブラリーステークス14着、南部杯9着と、いいところがなく敗れていたが、この大一番での巻き返しには驚かされた。
老兵は死なず、巻き返すのみ。

 

クリソベリルは4着と敗れた。

前日追いとプラス12キロの体重増は、結果から見れば、出来が整っていなかったとも見えるし、そう見ると4着で何とかまとめたのは、やはり力がある証とも見える。

前目につけたのも、出来を考えて案外に無理をしていたのかもしれない。
レース後の川田騎手の苦しいコメントに、それが表れていた。

まだ4歳。
力があることは疑いようがないので、一度屈伸してから、再度の飛躍を期待したい。

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絶対的な人気馬に対して、奇襲や賭けに出ることなく、正攻法での力勝負を挑んだ戸崎騎手とチュウワウィザード。

彼らに、勝負の女神は微笑んだ。

戸崎騎手の快気祝いともいえる、2020年のチャンピオンズカップだった。 

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2016年のチャンピオンズカップの想い出に寄せて、寄稿させていただいた記事はこちら。

 

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