大嵜 直人のブログ

文筆家・心理カウンセラー見習い。

白の結実。 ~2020年阪神ジュベナイルフィリーズ 回顧

コントレイルとデアリングタクトによる、無敗の牡馬・牝馬三冠の達成。

アーモンドアイによる芝GⅠの最多記録、9勝という偉業の達成。

 

奇跡の年として記憶されるであろう2020年に、また不滅の記録が誕生した。

 

白毛馬・ソダシによる、史上初のGⅠ勝利。

おそらくは、世界初なのではないかと言われている。

 

サラブレッドの毛色は、8種類に分類される。

鹿毛黒鹿毛青鹿毛青毛、栗毛、栃栗毛芦毛、そして白毛

 

多くのサラブレッドは、両親のいずれかの毛色に似るが、白毛だけは突然変異で生まれるとされる。

 

事実、ソダシの2代母・シラユキヒメがそうだった。

父は偉大なサンデーサイレンス青鹿毛、母は鹿毛のウェイブウインドと、一族に白毛は見当たらない。

 

当時、珍しい白毛としてメディアでも取り上げられ、話題を集めたことを覚えている。

シラユキヒメは中央で9戦走って勝利を挙げることはできず、繁殖入りした。

 

突然変異で生まれた白毛シラユキヒメだったが、なぜかその仔には毛色が遺伝した。

初仔であるシロクンから、ホワイトベッセルユキチャンと3番仔まで連続して白毛を産んだ。

 

このあたり、なぜそうなるのかは、よくわかっていないらしい。

そもそも、白毛自体が、生まれてくるサラブレッドの1万頭から2万頭に1頭という、途方もなく低い確率でしか生まれないのだから、サンプルが少なすぎるのかもしれない。

 

ユキチャン南関東関東オークスを勝ち、白毛馬として史上初めて重賞を勝利する偉業を成し遂げ、多くのファンに愛された。

 

面白いのは、その後のシラユキヒメである。

その後の白毛馬を産んでいたが、8番仔は、なんと白毛のブチ毛であった。

マーブルケーキと名付けられたその牝馬は、その名の通り白地に斑点のある、世にも珍しい毛色だった。

 

白毛自体が珍しいのに、誰も見たことのないブチ毛の白毛とは。

ファンの間でも、よく話題になったものだった。

 

その次の9番仔も、白毛のブチ毛だった。

「ブチコ」と名付けられたその牝馬こそ、冒頭のソダシの母である。

 

 

2020年の阪神ジュベナイルフィリーズは、そんなシラユキヒメ一族による、白の物語の結実点だった。

 

シラユキヒメ以前は、白毛馬はアルビノを想起させ、虚弱に見えることから、敬遠される傾向にあったと聞く。

そうしたイメージも、今日のソダシの勝利で、もはや過去の遺物になっていくのだろう。

 

 

勝ったソダシは新馬、GⅢ札幌3歳ステークス、GⅢアルテミスステークスと続いた連勝を、このGⅠの舞台でも伸ばした。

最大の武器は、レースセンスの良さと、その完成度と言えるのだろう。

 

今日も、番手集団の後ろの絶好のポジションを確保。

周りがバタバタとする中で、落ち着いて追走し、最後の直線を迎えられたことが、サトノレイナスをハナ差退けた要因の一つだろう。

 

鞍上の吉田隼人騎手は、2015年有馬記念ゴールドアクター以来のGⅠ勝利。

勝利インタビューで、1番人気のGⅠで結果を出せたことに、ほっとしながら関係者への謝辞を述べていたのが、印象的だった。

 

それにしても、オーナーの金子真人氏(登録は金子真人ホールディングス)には、また一つ新たな偉業が加わった。

キングカメハメハディープインパクトマカヒキワグネリアンという4頭のダービー馬、ディープインパクトアパパネという牡馬牝馬両方で三冠達成、トゥザヴィクトリードバイワールドカップ2着、そして白毛馬でGⅠ制覇とは。

ソダシの父・クロフネも、母の父・キングカメハメハも、金子真人氏の所有馬だった。

まるで、テレビゲームを地で行くような、その偉業の数々。

 

いったい、どれくらい前世で徳を積んだら、こんな馬主成績になるのだろうか…と訝しんでしまうほど、凄まじい記録が並ぶ。

これからも、「黒・青袖・黄鋸歯形」の勝負服がターフで踊るのだろう。

 

2着にはサトノレイナス

出負け気味ながらも、道中押し上げていって、ソダシの後ろまでつけたのは、クリストフ・ルメール騎手の見事な手綱。

 

スケールの大きさといえば、この馬が随一だったように思うが、一つ負けたことで楽になることはあるだろう。

本番の桜花賞では、逆転を期待したい。

 

ユーバーレーベンは、逆に出遅れから追い込みに徹しての3着。

器用なタイプでもないので、出遅れた時点でミルコ・デムーロ騎手にとっては、おそらくはこれが最善手だったのだろう。

出遅れなければ、とは思うが、さりとて出遅れたからこそ拾えた3着と見ることもできる。

間違いなく脚力は世代の中でも上位と思われるので、次走に注目したい。

 

脚力上位といえば、4着のメイケイエール。

武豊騎手、阪神牝馬マイルGⅠ、出遅れとくれば、1989年桜花賞シャダイカグラを思い出してしまう。

あのときは、最後方からインコースを追走し、スルスルと差し切った。

今日は、気性に難のあるメイケイエールを、極力エキサイトさせないように、馬群から離れた外々を慎重に追走させていた。

 

それでも行きたがり、4角で大外をぶん回すことになったが、これで勝っていたらとんでもないバケモノである。

それでも、4着まで食い込んでくるあたり、積んでいるエンジンは規格外のように見える。

 

春の本番まで、どれだけ気性面で成長が見られるか。

ヤンチャな少女は、「アタシも丸くなったわ」と言いながら、馬込みの中を追走できるようになるだろうか。

 

 

 

2歳のうら若き少女たちによる競演は、舞台を来年の春に移しながら続いていく。

どの優駿も、無事に春を。

 

2020年阪神ジュベナイルフィリーズ、白の一族による結実。

忘れえぬ奇跡の年に、また一つ奇跡が舞い降りた。

 

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