感染症の拡大による人々の行動様式の劇的な変化。
無敗の牡馬・牝馬三冠馬の誕生、そして9冠牝馬との激突。
1年前では想像だにしなかったことが起こり、そして人知を超えた奇跡が多く起きた2020年。
そんな年も、時は過ぎゆく。
気づけば今年の関西最後のGⅠ、朝日杯フューチュリティステークスを迎えた。
めずらしく逃げを選択したクリストフ・ルメール騎手とモントライゼが刻んだラップは、前半45秒前半というハイペース。
ただ、番手のブルースピリット以下とは大きく離れており、後続勢にとっては標準ペースだっただろうか。
こういう1頭大逃げする馬がいると、有利なのは番手集団だ。
好枠を利してその番手集団の絶好のポジションを確保し、そして正攻法での仕掛けが活きる阪神外回り、2か月目の開催なれど前残りの高速馬場。
すべてがうまくハマったといえる、7番人気のグレナディアガーズと川田将雅騎手が、未勝利からの連勝でGⅠ制覇を果たした。
1着、グレナディアガーズ。
勝ちタイム1分32秒3は、阪神の2歳マイルのレコードとなる猛時計。
時計の速い馬場とはいえ、能力の高さがなければできない芸当だ。
父は欧州で14戦無敗のまま引退した歴史的名馬、Frankel。
2歳GⅠでFrankelというと、2016年阪神ジュベナイルフィリーズのソウルスターリングを思い出す。
かの馬はその後、東京2,400mの優駿牝馬を制したが、グレナディアガーズはどうだろうか。
川田騎手、中内田厩舎といえば、ダノンプレミアムが想起される。
3年前のダノンプレミアムでの忘れ物を、取り戻せるか。来年の春を楽しみに待ちたい。
2着には2番人気のステラヴェローチェと横山典弘騎手。
勝ち馬とは対照的に、中団より後ろで溜めて、末脚を伸ばした。
勝ち馬がすべてがうまくハマったとすれば、ステラヴェローチェは流れが向かない中で最も強い競馬をしたと言える。
こちらも逆の意味で、次走が楽しみな存在だ。
1番人気のレッドベルオーブは3着。
ホウオウアマゾンを前に置いて力勝負を挑んだが、前の2頭を捕まえきれず。
福永祐一騎手は、正攻法で挑んだということは、この馬の力を信頼していたのだろう。
いずれにせよ、世代上位の力は見せてくれた。
福永騎手はレース後、判断を誤ったと自責のコメントを述べていた。
それは、ある意味で諦念と呼べるようなものかもしれない。
それが結果として正解であったとしても、誤りであったとしても、ファンにとってはその騎手が信じる選択をしたこと、それは非常に納得性が高いものだ。
三冠ジョッキーとなり、ますますの冴えわたるその手綱に、今後も注目したい。
2014年に中山から阪神に舞台を移してから、小細工の通用しない「マイル適正」が強く求められるようになったように思う。
同じ2歳GⅠのホープフルステークスとの棲み分けが、より強くなってきたとも言えるのかもしれない。
そんな中、阪神に咲いたマイルの華、グレナディアガーズ。
その華は、来年の春にはどんな大輪になっているのだろうか。