時に啓蟄。
蟄虫啓戸、すごもりむしとをひらく。
字のごとく、冬ごもりをしていた虫たちが、大地の暖かさに誘われて、地上に出てくるころ。
春らしく晴れたり降ったりと、不安定な空模様が続くが、それでも日に日に冬の冷たい茎は緩んできたような感がある。
虫といえば、息子が越冬させようとしているクワガタたちは、そろそろ出てくるのだろうか。
夏の終わりに、飼育箱に土を多めに入れておいたら、そのままもぐっていったようで、姿が見えなくなった。
ときどき、おなかが空くとエサを探しに出てくるらしく、昆虫ゼリーを置いておき、定期的に交換すると聞いて、律義にそれを実践しているのだが、半年ほど姿を見ていない。
思い出したように、飼育箱を眺める息子。
夏の間に元気だったその姿は、どこにも見当たらない。
さりとて、掘り起こすわけにもいかず、ただその姿をまた見せてくれるのを、待つのみだ。
心配よりも、信頼を、贈ろう。
分かってはいても、なかなか難しいものだ。
クワガタにしても、子育てにしても、自分のことにしても。
飼育箱を覗いたり、手を出したくなったり、心配になってやきもきしたりする。
それは、当たり前のことだ。
けれど、季節が移ろい、流れゆくことを疑わないように。
川は流れ、どんな道筋を通っても、最後には海に流れ着くように。
ものごとは、自然に流れていくことを、疑わないでいよう。
ときに心配しながらも、季節の流れを見つめ、身をゆだねること。
それを、ときに信頼と呼ぶのだろう。
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啓蟄とはいえ、まだ日によっては朝晩は寒さが感じられることも。
徐々に徐々に、少しずつ。
咲き始めた雪柳。もうすぐ、白い吹雪が見られる。