いつの間にか、春も本番のようで。
外に出ると、さまざまな色の桜が咲いているのを見かける。
時に、春分が次侯、桜始開さくらはじめてひらく。
例年より早い開花と聞くと、散るのもまた早くなるのが惜しく感じる。
そう感じる花は、桜以外には少ないように思う。
次々に花開く、薄桃色の花弁。
一年に一度の奇跡。
願わくは 花の下にて 春死なむ
そのきさらぎの 望月のころ
かつて、平安の末世に生きた西行の歌を思い出す。
終わりを思い描くことから。
千歳の昔、桜の下で。
動乱の世の中、どんな終わりを思い浮かべたのだろう。
その終わりを辿るように、多くの歌を遺した西行。
その歌を想い、桜を想い、そして終わりを想う。
願わくは、花の下にて。
見上げる桜もあれば、足元に咲く桜も。