大嵜直人のブログ

文筆家・心理カウンセラー。死別や失恋、挫折といった喪失感から、つながりと安心感を取り戻すお手伝いをしております。

新緑の香りのする清明にて。

花冷え、と呼ぶにはもう、少し季節外れのような。
そんな、気温だった。

少し肌寒くはあるけれど。
上着を羽織るよりも、その寒気に触れていたい。

そんなふうに、感じた。

寒の戻り、花冷えではなく。
その肌寒さは、どこか季節を進めるような気がした。

春のぼんやりとした空気より、澄んだ新緑の空気を先取りするような。

新緑。
目に染みる青さが、そこかしこに見られた。

日ごとに太陽は力強さを取り戻し、その光量を増していく。

天地万物が清らかに輝く、清明。
その清らかに輝く木漏れ日の下、歩いた。

一歩、また一歩と。

見上げれば、太陽はまた少し昇っていた。

遠くから差し込む、その光。

その光を浴びると、ふと、かなしく。
無性に、泣きたくなった。

こんな美しい日の光の下なのに。
いや、こんな美しい日の光の下だからこそ、なのか。

胸いっぱいに、清浄な空気を吸い込んだ。

ゆっくりと、その息を吐いた。

もう一度。
そして、もう一度。

よろこびも、かなしみも、流れていく。
いつの間にか、現れて。
いつの間にか、流れていく。

また、少し太陽は中天に向かってその足を早めたようだった。

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