花冷え、と呼ぶにはもう、少し季節外れのような。
そんな、気温だった。
少し肌寒くはあるけれど。
上着を羽織るよりも、その寒気に触れていたい。
そんなふうに、感じた。
寒の戻り、花冷えではなく。
その肌寒さは、どこか季節を進めるような気がした。
春のぼんやりとした空気より、澄んだ新緑の空気を先取りするような。
新緑。
目に染みる青さが、そこかしこに見られた。
日ごとに太陽は力強さを取り戻し、その光量を増していく。
天地万物が清らかに輝く、清明。
その清らかに輝く木漏れ日の下、歩いた。
一歩、また一歩と。
見上げれば、太陽はまた少し昇っていた。
遠くから差し込む、その光。
その光を浴びると、ふと、かなしく。
無性に、泣きたくなった。
こんな美しい日の光の下なのに。
いや、こんな美しい日の光の下だからこそ、なのか。
胸いっぱいに、清浄な空気を吸い込んだ。
ゆっくりと、その息を吐いた。
もう一度。
そして、もう一度。
よろこびも、かなしみも、流れていく。
いつの間にか、現れて。
いつの間にか、流れていく。
また、少し太陽は中天に向かってその足を早めたようだった。