大嵜直人のブログ

文筆家・心理カウンセラー。死別や失恋、挫折といった喪失感から、つながりと安心感を取り戻すお手伝いをしております。

降り出した雨。

降り出した雨に、久しい友人に会った感覚を覚えた。

この肌にまとわりつくような湿度は、もはや梅雨だ。
一年ぶりの梅雨は、早めにやってきたらしい。
気持ちのいい季節は、あっという間に過ぎてゆく。
それでも、傘を叩く雨の音は、心地よかった。

雨の音は、不思議だ。
その一粒一粒の雨音。
雨粒は、記憶を包んだカプセルのようで。
傘を叩いて割れて、その記憶を呼び覚ます。
湿った草の匂いが、あたりに満ちる。
どこかやさしく、懐かしい記憶。

水たまり、撥ねた水。
濡れて色の変わった上着。
靴下まで濡れた感触。
青い、傘。

雨の日は、どこか懐かしい。

澱のように積もった何かを、雨音が流してくれるからだろうか。

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