梅雨が明けたと思ったら、もう夏は盛りのよう。
時に大暑、一年のなかで最も暑さが感じられるころ。
夏バテ防止の「土用の丑の日」も、この時候。
あるいは、「桐始花結(きりはじめてはなをむすぶ)」。
古来から神聖な木とされてきた桐の木が、その花を咲かせるころ。
蝉もいっせいに鳴き始め、少し前までぐずついていた梅雨空から、夏真っ盛りにいきなり入ったかのようです。
いつもいつも、季節の流れは歩みを止めず、後からその変化の大きさに、はっとこころを奪われるようです。
桐の花といえば、500円玉の表に彫られているのが、桐の花です。
財布の中に入っていると、ずいぶんと力強い感じのする、500円玉。
幼いころ、私は500円玉を「おおだま」と呼んでいました。
夏の暑い中、ジュースと駄菓子を買いに、近所の雑貨店によく行っていたように思います。
その小遣いをねだると、母は財布に入っている小銭をくれたものでした。
たまたま100円玉が見当たらないと、「おおだま」の小遣いがもらえる僥倖に、たまに当たりました。
暑い中、汗をぬぐいながら、その雑貨店に自転車を走らせる。
ポケットの中の「おおだま」の重さを、確かに感じながら。
1レース目で大きい馬券を取ったかのような、とても余裕のある心持ち。
今日は、何を買おうかと考えながら、さらに自転車を飛ばして。
あれはいつごろの思い出だったのか。
それとも、私の中の想像だったのか。
けれど、雑貨店でさんざん悩んだあげく、やっぱり何か悪いような気がして、最低限の買い物になるのが常だったような気もします。
大暑、炎暑、酷暑。
そして、桐の花。
印象的な思い出が、夏のそれが多いのは、私が夏が好きだからなのか、それとも。
それはともかく。
夏が、盛夏が、やってきたようです。