大嵜直人のブログ

文筆家・心理カウンセラー。死別や失恋、挫折といった喪失感から、つながりと安心感を取り戻すお手伝いをしております。

去りゆく者こそ、美しく。 ~2021年 マイルチャンピオンシップ 回顧

前年に続いて仁川での開催となった、2021年のマイルチャンピオンシップ。
前年の覇者・グランアレグリアは、このレースが引退レースとなった。

あのアーモンドアイをねじ伏せた昨年の安田記念をはじめ、積み重ねたGⅠ勝利は5つ。その旅路の終着点に、最適距離であろうマイル戦を選んだ。

12月の香港への登録もあったが、蹄の状態もあり、このマイルチャンピオンシップでの引退が発表されていた。

稀代の名牝の旅立ちに、ファンは単勝1.7倍のエールを送る。

「どんな位置でも大丈夫だが、3,4番手を取りたい」と戦前語っていたクリストフ・ルメール騎手だったが、ゆったりとしたスタートから、ダノンザキッドを前に置き、馬群後方の位置取り。

逃げたホウオウアマゾンは刻んだラップは、半マイル47秒6とややスローなペース。
時計だけを見れば、前走の天皇賞・秋と同じくらいのラップだった。

2000m戦を経験した恩恵か、グランアレグリアはかかることもなく、じっくりと脚を溜める。

阪神外回りの3コーナーを回りながら、徐々に外に持ち出していくルメール騎手。

直線を向き、インディチャンプ、サリオス、そしてダノンザキッドも脚を伸ばし、さらには3歳マイル王、シュネルマイスターと横山武史騎手も内の狭いところから伸びてくる。

しかし、残り200mを切ってからのグランアレグリアの伸びは、威厳と風格すら感じさせる脚だった。

外から力強く、それでいて風のように差し切った。

牝馬として初の、マイルチャンピオンシップ連覇。
獲得賞金は10億を超え、JRA重賞勝利数もウオッカ、ブエナビスタ、ジェンティルドンナなどに並ぶ、歴代2位タイの8勝目。

来年2月に定年を迎える藤沢和雄調教師に、また一つ大きなタイトルをもたらした。
2歳の早くからトップレベルの走りを見せていた同馬を、この5歳の引退レースまで無事にこられたのも、名伯楽の手腕あればこそ。
桜花賞から中2週で挑んだNHKマイルカップで降着で4着になったあと、秋シーズンを早々に諦めて半年以上も休養させたことが、のちに活きたのかもしれない。

それにしても、グランアレグリアのマイルにおけるこの末脚の威力は、脚力そのものが図抜けている。
ナリタブライアン、ディープインパクト、オルフェーヴル、アーモンドアイ…そうした圧倒的な脚力の違いを見せつける系譜に、並ぶように感じる。

これで、GⅠ・6勝目。
牝馬5歳、これで引退するのが惜しいと感じる、グランアレグリアの走りだった。

とはいえ、これからは、アメリカの至宝Tapitの血を継ぐ名牝である母・タピッツフライの血を繋ぐという大仕事に期待がかかる。

何はともあれ。
無事に完走し、その比類なき末脚を披露してくれたことに、感謝したい。

2021年マイルチャンピオンシップ、グランアレグリア。
去りゆく者こそ、美しく。

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