2021年の掉尾を飾るGⅠホープフルステークス。
有馬記念が最後がいいのか、ホープフルステークスが最後がいいのか、という議論は、観る人の価値観に依ると思われるが、今年はホープフルステークスが最後、そして2022年の来年もそうなるようだ。
GⅠ昇格から4年、翌年のクラシック、特に皐月賞と連動するレースとしての性格が年々強くなってきた。同じコース、同じ距離で施行されるのだから、当然といえば当然なのだろうけれど、マイル戦の朝日杯フューチュリティステークスとのすみ分けが、ある程度明確になってきた。
2018年の勝ち馬、サートゥルナーリアは無敗で皐月賞を制し、翌2019年のコントレイルは無敗のまま三冠ロードを歩み、感染症禍に沈む2020年に希望を灯した。
さらに昨年の4着のタイトルホルダーは、今年の皐月賞2着から菊花賞を制している。
年の瀬も押し迫った中山の直線で、翌年の希望を灯すのはどの優駿か。
ややばらついたスタートから、9番ボーンディスウェイが押していくが、好枠の4番グランドラインが内から主張してハナへ。
3番手の好位に2番人気のキラーアビリティと横山武史騎手、クリスチャン・デムーロ騎手のジャスティンパレスがその後ろあたりの前目のポジションを確保。
2番人気のサトノヘリオスはちょうど中団あたり、そして前走GⅢサウジアラビアロイヤルカップを勝って2連勝で1番人気で臨むコマンドラインとクリストフ・ルメール騎手はさらに後ろの後方5,6番手からの追走。さらにGⅠ完全制覇がかかる武豊騎手とアスクワイルドモアは最後方から末脚にかける態勢。
向こう正面に入り、馬群はやや縦長にばらけ、前半1000mが1分0秒1のラップ。やや流れたペースになったことで、各馬スムーズに折り合っているように見えた。
3コーナーを迎えて徐々に馬群が縮まっていき、直線を向く。
先頭に立ったグランドラインを目標に追い出す、横山武史騎手とキラーアビリティ。
そのコースをトレースして、外から追うジャスティンパレス。
そして内から差しにかかるラーグルフ。
しかし、坂を上ったあたりでキラーアビリティが抜け出して、ゴール板を駆け抜けた。
1馬身半差の2着にジャスティンパレス、さらに3着にはラーグルフと、先行勢が上位を占める結果となった。
上がり3ハロン最速の35秒1を記録したアケルナルスターが7着までだったように、結果的には後方から進めた馬には厳しいレースとなった。
1番人気を集めたコマンドラインだったが、後方のまま脚を伸ばせず12着と崩れ、この時期の「無敗」馬の難しさを露呈した形に。また3番人気のサトノヘリオスは、3コーナー過ぎから岩田望来騎手が捲り気味に外を回したが、こちらも伸びきれず13着となった。
勝った、キラーアビリティ。
レコード勝ちだった前々走の小倉未勝利戦、前走の萩ステークスで見せた脚が、やはりフロックではなかったことを証明した。
ちぐはぐな道中から2着に粘った萩ステークス2着は「強い」の一言だったが、見事にその敗戦を活かしての、今日の勝利となった。
萩ステークスで敗れたダノンスコーピオンは朝日杯フューチュリティステークスで3着に入っているが、その上位組との対戦も楽しみになった。
父・ディープインパクトの威光は衰えずだが、母系はBlushing Groom~アラジの流れを汲むCongareeが母の父となっている。
母系にBlushing Groomといえば、古くはサクラローレル、マヤノトップガン、ヤマニンゼファー、あるいは「奇跡の馬」ラムタラと、大レース向きの底力とスタミナ、そして豊かな成長力を伝えることで知られる。
このキラーアビリティにも、その血が伝えられているのだろうか。
来年以降の成長を、楽しみに見守りたい。
そして、鞍上の横山武史騎手。
難しい馬に乗り替わりでの騎乗だったが、まさに一発回答。
これで2021年の最後のGⅠも勝利を飾り、年間GⅠ5勝の大活躍となった。しかも、そのうちの4勝がいわゆる八大競争であり、大舞台での勝負強さは尋常ではない。
これまで何度も書いてきたが、その若き手腕は冴えわたるばかりで、2022年はどれだけの輝きを見せてくれるのだろうか。
久々に競馬界が得た若き才気ともいえる、横山武史騎手。有馬記念ウィークの油断騎乗は残念だったが、その痛みを未来への希望へと変えられるだけの力があると信じている。
2021年、ホープフルステークス。
キラーアビリティと横山武史騎手、希望に満ちあふれた、その脚。
若き才気に満ちあふれた光は、2022年へと。