「思っていることを言えなかった」ことは、後悔や自己否定を生みやすいものです。
そうした経験を、自分を愛することから見る視点をご紹介します。
1.思っていることを言えなかった後悔
先日のカウンセリングのなかで、「思っていることを言えなかったことを、後悔している」というお話がありました。
今日は、このテーマを少し考えてみたいと思います。
「思っていたことを、ちゃんと言えなかった」
「自分の本音を、伝えられなかった」
そういった経験をされたことのある方は、いらっしゃると思います。
私も、「ちゃんと言えなかったなぁ」と後悔したり、その言えない自分を責めてしまうことがあります。
言葉や想いを溜め込むことのしんどさもそうですが、自分のことが相手にちゃんと理解されなかったということは、悲しいし寂しいものです。
そして、それは後悔や自己否定と結びつきやすかったりします。
「言えない自分」や「言えなかった自分」に、ダメ出しをしてしまいがちです。
だから、「言いたいことはちゃんと言いましょう」とか、よく言われますよね。
「自分に自信を持てば、自分の主張をちゃんとできるようになる」とかも、よく聞きます。
もちろん、それはそれで大切なことなんですけれども、今日お伝えしたい視点は、そこではないんですよね。
思っていることを言えなかった、というできごとを、自分を愛することから見ると、どんな風に見えるのか、という視点です。
2.言えなかったのか、言わなかったのか
思っていることを、相手に言えなかった、伝えられなかったできごとがあったとして。
それは果たして、「言えなかった」のか、「言わなかった」のか、という点があります。
これ、非常に難しいというか、デリケートな部分で、どちらかだけ、ということでもないと思います。
「60%くらいは『言えなかった』んだけど、残りの40%は『言わなかった』んだろうなぁ…」
とか、そんなグラデーションのような感じですね。
「言えなかった」というのは、「言おうと思っていたのに、それができなかった」というニュアンスです。
一方、「言わなかった」というのは、「言おうと思っていたけれど、それを(あえて)言わなかった」というニュアンスがあります。
何が違うかといえば、「言わなかった」の方には、主体性があるわけです。
自分が選んでいる、という主体性。
それが、「言わなかった」にはあるんですよね。
なぜ、「言わない」を選んだのかは、それぞれに理由があると思うのです。
- 相手のことを考えると、伝えない方がいいと思ったから
- 伝えたいと思ったけれど、それが自分の本音なのか分からなかったから
- 相手を傷つけたくなかったから
いろんな理由があると思います。
その理由は、もしかしたら自分を守るためのものも、あったかもしれません。
けれども、ここも先ほどと同じグラデーションで、相手のことを慮って「言わない」という選択に比重を乗せた、ということも、きっとあるのだと思うのです。
それって、人の心として美しい部分ですよね。
人の心といえば、心は単純に「白か黒か」で色分けできるようなものでもありません。
ただ、「思っていたことを言えなかった」というできごとにしても、それをダメなこととして見ることもできますが、反対に「美しい心の作用」として見ることもできると思うのです。
3.過去の自分の選択を、いまの自分が愛してあげる
「言えなかった」のか、それとも「言わなかった」のか。
これって、過去の自分の選択を、どうとらえるか、ということでもあります。
とかく、してしまいがちなのが、「過去の自分の選択を、いまの自分が判断する」という捉え方です。
これ、言ってみれば「後出しジャンケン」であり、「居酒屋野球談議」なんですよね。
「チョキ出してきたから、グーを出せばいいんだよね」
「やっぱり、7回が終わったとこでピッチャーを代えておかないといけなかったんだよ」
いや、まあそれは酒のつまみとしては、いいんですけれどね笑
でも、過去の自分の選択を、その結果が分かっている「いまの自分」がいい、悪いと判断するのは、それと同じになってしまうんです。
判断するとは、白黒つけることであり、正誤善悪をはっきりさせることです。
それは、容易に自分を否定することになってしまいます。
過去の自分には、過去の自分の事情があったんです。
先ほどの「相手のことを思って」という思考もそうですし、そのときの自分の置かれた状況、心情など、そうしたことの中で、精一杯したことが、過去の選択だったんです。
がんばれなかったとしても、自分と向き合えなかったとしても、です。
そこに、正しいも間違っているも、いいも悪いもないんです。
それに対して、「いまの自分」ができるのは、その過去の自分をただ愛してあげることだけではないでしょうか。
そうするほか、なかったのかもね。
よくやってきたよね。
あなたは何も間違っていないよ。
親しい友人や、大切な人にかけてあげるような言葉を、過去の自分にもかけてあげること。
それが、いまの自分にできることなのでしょう。
今日は、思っていることを言えなかった経験を、自分を愛する視点でとらえてみる、というテーマでお伝えしました。
ここまでお読みくださり、ありがとうございました。
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