気づけば葉月も終わり、長月に。
そのはじまりに、熱田神宮を訪れることができました。
車から降りると、鈴虫の声が。
前回は夏も真っ盛り、力強い日差しの中、汗が吹き出ていたのを覚えていますが、もう秋の声が聞こえることに、驚きと寂しさを感じます。
あの熱は、どこへ行ってしまったのだろう。
そんなことを考え立ち尽くす私の横を、「ふん」と澄ました顔の三毛猫が、スタスタと歩いていきました。
「もう9月、秋だよ」
そんなことを、言われたような気がします。
朝早いこともあってか、参拝客もまばらのようで。
静かな参道。
玉砂利の音が、心地よいものです。
遠くから鶏の声が聴こえましたが、この日はお姿を拝見することはできませんでした。
空も、少しずつ秋めいてきた気がします。
透き通った空気感と、やわらかな雲の感じと。
しばし見上げていると、境内の奥からミンミンゼミの声が聴こえてきました。
このあたりでミンミンゼミの声を聴くのは、久しぶりのような気がします。
ほどなくして、ツクツクボウシも歌い始めました。
夏の残り香のような蝉の声とともに、鈴虫の声も。
蝉の声と、鈴虫の声。
夏と秋が、交差するような、そんな時間。
参道を通って、本殿へと。
空の色、虫の音、風の匂い。
季節の移り変わりと、そこに感じるもの。
この時間が、何ものにも代えがたいものだと感じるのです。
それは、熱田さんへの参拝を重ねるごとに、強くなるようです。
参拝を終えるころには、雲は流れ、強い日差しが戻ってきました。
参道を歩いていると、じんわりと汗がにじんできます。
夏は、まだここにあるよ。
帰りしなに、あの三毛猫にそう伝えたかったのですが、その姿は見えませんでした。ざんねん。
また今度会うときは、どんな日差しと風が、吹いているのだろう。
そんなことを想いながら、熱田さんを後にしました。