「自立」の行き着く先は、彩りのない、灰色の世界です。
燃え尽きやデッドゾーンと呼ばれることもある世界でもあります。
1.豊かさは、委ねないと味わえない
昨日の記事では、豊かさは、委ねないと味わえない、というテーマでお伝えしました。
「自立」を手放すというお話の流れからですね。
私たちの心は、「依存」から「自立」、そして「相互依存」へと成長していきます。
自分では何もできないから、誰かに何とかしてほしいのが「依存」。
自分一人でなんでもやろうとするのが「自立」。
「自立」は自分ができることが増えて、自分の足で立つことができる反面、孤立しやすくなったり、周りと競争したり、燃え尽きてしまったりといった問題を抱えやすくなります。
カウンセリングで扱う問題の多くも、この「自立」からくる問題だったりします。
さて、この「自立」の先に「相互依存」というステージがあるのですが、これは「ともに生きる」という世界であり、自分でできることは自分でする、自分にできないことは誰かに頼る、という極めてシンプルな世界です。
しかし、とても豊かな世界でもあります。
この「相互依存」に至るには、それまで「自立」で大切にしていた観念や考え方を手放し、別の基準をインストールしていく必要があるんですよね。
それが、自分の力で何でもやろうとすることをやめて、委ねる、任せるといったことが大切になるのです。
そういった意味では、世界の豊かさは、自分の我を捨てて、委ねることをしないと味わえないとも言えるのです。
2.「自立」の行き着く先
この「豊かさ」を考えるときに、何かを感じることは、とても大切な要素になります。
心地よく薫る風を感じる。
夕焼けの色の美しさを感じる。
大切な人とともに歩める喜びを感じる。
ときに、会えないことの寂しさを感じる。
…豊かさを考えるときに、「感じる」ことは欠かせません。
しかし、「自立」の人は、この「感じる」ことが苦手なんですよね。
感情を感じることが、苦手。
というよりも、感情を抑圧して、感じないようにしている、という表現の方が正しいのでしょう。
なぜなら、人が「自立」するのは、「依存」時代に傷つき、痛みを感じたからです。
「依存」とは、無邪気さの象徴でもあるように、豊かに感情を感じることができます。
しかし、それだけに傷つくことも多いわけです。
自分の欲しい愛を、与えてもらえなかった。
自分の力が及ばず、大切な人を笑顔にできなかった。
そうした経験を重ねていくと、「いや、もうしんどい、それなら感じない方がマシだ」とばかりに、感じることを抑圧していくようになります。
だから、「自立」の人は感じることが苦手になっていくのです。
3.渇いた灰色の世界
「自立」が進むと、燃え尽きたようになってしまうこともあります。
まるで自分がロボットになったように、無気力、無感動になってしまう。
それでも、毎日は続いていくので、何の感動もなく、ただ灰色の日々が流れていく。
するべきことだけが、その道の上には置かれていて、それを淡々とこなしていくだけの日々。
ある意味で、「自立」の極北ともいえる状態が、この燃え尽きの状態です。
「デッドゾーン」と呼ばれたりもしますね。
そこでは、ときに死の誘惑すらも、起こったりします。
こう書くと怖いのですが、ただ、そこまで来られたことは、祝福すべきことでもあります。
「ここまで、よく一人でがんばってきました」
そう、祝福してあげるべき世界なんですよね。
「陰極まりて陽と成す」という言葉がある通り、「自立」の行き着く先には新しい世界への扉があります。
「相互依存」への世界の扉、ですね。
その扉を開くカギが、委ねることであり、任せることであり、感じることでもあります。
そのカギは、いつでも私たち自身のなかにあるのです。
今日は、「自立」の行き着く先は、灰色の世界、というテーマでお伝えしました。
ここまでお読みくださり、ありがとうございました。
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