大嵜直人のブログ

文筆家・心理カウンセラー。死別や失恋、挫折といった喪失感から、つながりと安心感を取り戻すお手伝いをしております。

きっと、もっと、強くなる。 ~2023年 高松宮記念 回顧

1.レース・出走馬概要

冬の間は、ほんの少しの春の気配に、大きな喜びを感じる。

しかし、沸点を超えると大きく状況が変わるように、ある瞬間から春の変化はダイナミックに変わる。

気温の変化、芽吹く花、動き出す生き物たち。

中京競馬場名物の大寒桜も、見ごろを迎える3月の下旬。

春のスプリント王者決定戦、GⅠ高松宮記念がやってくる。

中京芝1200mを舞台に、韋駄天・快速自慢たちが覇を争う。

 

昨年は、ナランフレグと丸田恭介騎手が、人馬ともに初のGⅠ制覇を成し遂げた。デビュー16年目にして、初めてビッグタイトルを手にした丸田騎手のインタビューは、観る者の胸を打つものだった。

そのナランフレグ(牡7、美浦・宗像義忠厩舎)は、今年も丸田騎手と連覇の偉業に挑む。

 

実績十分なのは、重賞6勝のメイケイエール(牝5、栗東・武英智厩舎)。

昨年の同レースは外枠と展開が向かずに5着、秋のGⅠスプリンターズSでは中2週が堪えたか14着と大敗。ただ前走のGⅠ香港スプリントでは、5着と地力の高さを見せた。難しい気性を御せる池添謙一騎手に手綱が戻り、悲願のGⅠ獲りに挑む。

 

ピクシーナイト(牡5、栗東・音無秀孝厩舎)が、ターフに戻ってくる。

圧倒的な能力を見せて制した、3歳時のスプリンターズS。短距離戦線を席巻するかと思われたが、12月の香港スプリントで落馬事故に巻き込まれて骨折、競争中止に見舞われた。あれから1年3ヶ月。前哨戦のGⅢ阪急杯は回避したが、この大一番で戦線復帰となった。鞍上は戸崎圭太騎手。

間隔を空けてのGⅠ勝利は、1年ぶりの出走で1993年有馬記念のトウカイテイオーが想起されるが、まずはターフを駆ける姿が見られることを喜びたい。

 

その前哨戦、GⅢ阪急杯を制したのがアグリ(牡4、栗東・安田隆行厩舎)。

数々の名スプリンターを輩出してきた安田師が送りだす逸材は、破竹の4連勝で重賞初制覇を飾った。その勢いのまま、横山和生騎手とともに頂点まで昇り詰めるか。

 

一方、その阪急杯で1番人気に支持されながら結果が出なかったのが、グレナディアガーズ(牡5、栗東・中内田充正厩舎)。

2021年のGⅡ阪神Cで久々の勝利を飾った後、歯車が嚙み合わないレースが続いているが、前走からの距離短縮でどうか。鞍上は、年明けから好調をキープする岩田望来騎手。

 

高松宮記念と同条件で行われた今年1月のGⅢシルクロードSを制したのが、ナムラクレア(牝4、栗東・長谷川浩大厩舎)。

桜花賞(3着)後は、短距離戦線に路線を定め、GⅢ函館スプリントSで重賞2勝目。さらにスプリンターズS5着に入った地力の高さを、古馬初戦で証明した。主戦の浜中俊騎手には、久々のGⅠ勝利の期待がかかる。

 

さらには、GⅢオーシャンSを制したヴェントヴォーチェ(牡6、栗東・牧浦充徳厩舎)、鋭い末脚で昨年の牝馬クラシックを賑わせたウォーターナビレラ(牝4、栗東・武幸四郎厩舎)、昨年の高松宮記念2着の実績があるロータスランド(牝6、栗東・辻野泰之厩舎)、昨年3歳でGⅢ京阪杯を制したトウシンマカオ(牡4、美浦・高柳瑞樹厩舎)など、多士済々の18頭が春のスプリント頂上決戦に集った。

 

いよいよ、春のGⅠシーズンが始まる。

桶狭間の古戦場近くの中京競馬場を舞台に、春の電撃戦の火ぶたが切られる。

2.レース概要

この季節らしく、週中から不安定な天候そのままに、小雨が断続的に降り続ける不良馬場での開催となった。

霧のような雨に視界がぼやける中、ゲートが開く。

前年の覇者・ナランフレグが少し出遅れ、後方からの競馬。

オパールシャルムが押して出るも、好枠からキルロードがハナを奪い、その後ろにも好枠のウォーターナビレラ、ダディーズビビッドがつける。

一列後ろからはアグリ、メイケイエールが続くが、そのメイケイエールは池添騎手が手綱を引いて折り合いに苦心している様子。

中団にロータスランドと外目にナムラクレア、ピクシーナイトは後方から、そして最後方はグレナディアガーズといった態勢。

前半600mは35秒6で通過、馬場を考えれば早くもなく、遅くもなくといった塩梅か。

4コーナーで上がっていったのはアグリ、その外からウインマーベルもポジションを上げていく。

直線を向き、各馬横一線に広がっての死力を尽くした追い比べ。

アグリが先頭に立つが、馬場の真ん中を通ってファストフォースも脚を伸ばす。

最内の進路を選択したトゥラヴェスーラが伸び、大外からナムラクレアがまとめて交わさんと末脚を伸ばす。

ナムラクレアの脚色が勝るかと思われたが、真ん中のファストフォースが驚異的な粘り腰を見せ、もう一度後続を引き離して伸びる。

そのまま1馬身のリードを保ったまま、ゴール板を通過した。

勝ち時計は1分11秒5(不良)。

2着にナムラクレア、そして3着に最内から伸びたトゥラヴェスーラ。

3.各馬戦評

1着、ファストフォース。

7歳にして、デビュー5年目の団野大成騎手とともに初のGⅠ制覇。

デビュー戦が3歳6月、阪神芝2400mで13着は、あのメロディーレーンが勝ったレース。

そこからなかなか勝てず、地方から出戻りで、7歳でのビッグタイトルを獲得は、称賛の一言に尽きる。

テイエムスパーダに塗り替えられるまでは、同馬が芝1200mのレコードホルダーだった。

7歳にて、なお盛ん。4月の香港遠征の声もあり、さらなる活躍が期待される。

そして団野騎手は、「黄金世代」ともいえる2019年デビュー組のなかで、GⅠ勝利一番乗り。

勝利騎手インタビューでの歯切れの悪さは、直線での斜行で他馬に影響を与えたことからだろうか。

次は、満面の笑顔でのインタビューを楽しみにしたい。

 

2着、ナムラクレア。

与えられた条件で、完璧な競馬をしての2着。

今回の条件では、勝ち馬が上回ったとしか言いようがないくらい、素晴らしい走りだった。

まだまだ短距離戦線の主役となれる存在。

浜中騎手の久々の大一番の勝利とともに、楽しみにしたい。

 

3着、トゥラヴェスーラ。

不良馬場に恨み節の一つも言いたくなる、1番枠。

しかし丹内祐次騎手は肚をくくって、内ラチ沿いをエスコートし、末脚を引きだした。

丹内騎手は、20年目にして初のGⅠでの馬券内を達成。

同馬はこれで高松宮記念4年連続での掲示板と、よほどこの中京芝1200が合うのだろう。

まだまだ元気な8歳馬、どこかで大きなタイトルを獲ることを期待したい。

 


 

昨年に続いての、人馬ともにGⅠ初制覇。

人も、馬も。きっと、もっと、強くなる。

2023年高松宮記念、ファストフォースと団野大成騎手が制した。

 

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