1.レース・出走馬概要
約2年5か月の改修期間を経て、ついに4月22日(土)にグランドオープンした京都競馬場。
「センテニアル・パーク京都競馬場」の愛称も新しく、そのターフに新たな歴史を刻んでいく。
リニューアル後、初めてのGⅠ開催となる天皇賞(春)。
淀の歴史を彩ってきた伝統の古馬GⅠは、平地GⅠ最長距離となる3200m戦。
歴戦のステイヤーたちが栄誉ある春の盾に向けて、新緑の美しいターフを駆ける。
その中心になるのは、史上6頭目の連覇がかかるタイトルホルダー(牡5、栗東・栗田徹厩舎)。
昨年、阪神での開催となった天皇賞(春)をはじめ、菊花賞、宝塚記念とGⅠ3勝はメンバーのなかでも実績最上位。昨年秋のフランス遠征での凱旋門賞、帰国後の有馬記念と敗れたが、前走のGⅡ日経賞では、力の違いを見せつけて8馬身差の圧勝。
初の京都コースへの対処が問われる一戦となるが、現役最強ステイヤーの座を確かなものにするか。鞍上は、引き続き横山和生騎手。
その日経賞からの巻き返しを図るのが、アスクビクターモア(牡4、美浦・田村康仁厩舎)。
天皇賞(春)と関連性の深いのが菊花賞だが、同馬は昨年の菊花賞を強い競馬で勝ち切っている。前走・日経賞は出遅れと不良馬場への対応も難しかったのか9着に敗れたが、ここで菊花賞馬の威厳を取り戻すことができるか。鞍上は田辺裕信騎手。
前哨戦となるGⅡ阪神大賞典を勝って臨むのが、ジャスティンパレス(牡4、栗東・杉山晴紀厩舎)。
デビューから一貫して2000m以上を使われて、菊花賞でもレコード決着に0秒1差の3着と、長距離適正は確かなもの。充実一途の4歳が、世代交代を告げるか。鞍上は前走に続いてC.ルメール騎手。
その阪神大賞典で2着だったのが、ボルドグフーシュ(牡4、栗東・宮本博厩舎)。
昨年の菊花賞2着から挑んだ有馬記念では、同世代であるイクイノックスの2着に入る激走。古馬を相手にその実力の片鱗を見せた。重賞初制覇を、このGⅠの大舞台で飾ることができるか。調教師に転身した福永祐一騎手から手綱を引き継いだのは、川田将雅騎手。
ディープボンド(牡6、栗東・ 大久保龍志厩舎)は、このレース2年連続2着の雪辱を晴らすべく挑む。
阪神大賞典2連覇などの実績を誇る、現役屈指の長距離砲。2年続けてフランスに遠征するなど、果敢な挑戦を続ける歴戦の雄は、春の盾で悲願のGⅠタイトルを獲ることができるか。鞍上は、前走に続いて和田竜二騎手。
また、エンドロール(牡4、美浦・青木孝文厩舎)に騎乗する永野猛蔵騎手は、デビュー3年目で初のGⅠ騎乗。3歳5月からコンビを組む同馬で、旋風を巻き起こすか。
さらには、長距離重賞を連勝中でサウジアラビア帰りのシルヴァーソニック(牡7、栗東・池江泰寿厩舎)、充実の4歳世代の一角・マテンロウレオ(牡4、栗東・昆貢)、最軽量ステイヤー・メロディーレーン(牝7、栗東・森田直行)などが、新装・京都競馬場初めてのGⅠに挑む。
2.レース概要
前日まで降り続いた雨の影響で、午前中は重馬場での施行。
しかし、リニューアルで整備された暗渠排水の効果もあったか、午後からは稍重馬場に回復しての開催となった。
3年ぶりに、淀に戻ってきたGⅠのファンファーレ。
ゲートが開いて、揃ったスタートから、好枠のタイトルホルダーはいつも通り押して前目を主張。
アスクビクターモアやアイアンバローズも前目を取る中、大外からアフリカンゴールドが猛然と先頭まで押していく。
ディープボンドもうまく先団の切れ目に入れ、最内からのジャスティンパレスがその内に。
シルヴァーソニック、ボルドグフーシュは後方からといった展開で、1周目のスタンド前を駆けていく。
1コーナーを過ぎたところで、アフリカンゴールドが何らかのアクシデントか、失速。
番手のタイトルホルダーがペースを握るかと思われたが、アイアンバローズの坂井瑠星騎手も手綱を動かして主張。
内にいたアスクビクターモアとともに、先団はかなりプレッシャーがかかる展開に。
3コーナーの坂で馬群が縮まっていくが、先頭のタイトルホルダーにも異変。
アイアンバローズに交わされ、横山和騎手が追うこともなく後退していく。
4コーナーの下り、外目から上がっていくディープボンド。
その真後ろからジャスティンパレスも上がっていき、さらに外からはボルドグフーシュ、シルヴァーソニックも追い出される。
直線、先頭に替わったディープボンド。
しかしそれを交わしていくジャスティンパレス。
残り100mで2馬身ほどのリードを奪うと、そのままゴール板を駆け抜けた。
1着、ジャスティンパレス。
2馬身半差の2着にディープボンド、そして3着には外から差してきたシルヴァーソニックが入った。
3.各馬戦評
1着、ジャスティンパレス。
前哨戦の阪神大賞典から、連勝で春の盾でGⅠ制覇を成し遂げた。
その長距離でのしぶとさと成長力は、ディープインパクト産駒のイメージとは異なるようだ。
それでも、ディープインパクトはこれでJRA・GⅠの勝利数が71勝と、偉大なる父
サンデーサイレンスに並んだ。
ルメール騎手は、2019年、2020年のフィエールマン以来となる、春の天皇賞3勝目を挙げた。
長距離は騎手、その言葉をなぞるかのような、名手の手綱捌きだった。
相性の良い1番枠を活かし、向こう正面ではディープボンドに狙いを定め、きっちりと差し切った見事な騎乗。
新装・京都競馬場を彩る、名手の手綱だった。
2着、ディープボンド。
3年連続の、春の天皇賞2着。
昨秋から不本意な成績が続いていたが、ここで巻き返した。
だが、引き返してくる和田騎手の悔しそうな表情が、すべてを物語っていた。
好枠から、道中のポジション取りといい、これ以上ないと思われる騎乗だった。
ただ、引き返してくる和田騎手の悔しそうな表情。
何とか勝たせたかった、という想いがあふれていた。
3着、シルヴァーソニック。
こちらも、レーン騎手のエスコートが見事だった。
勝ち馬と同じように、向こう正面でディープボンドをターゲットにしていたように見え、結果的にはその隊列が「勝利のポジション」となった。
ただ惜しむらくは、外の16番枠だったことだろうか。
7歳ながら実に充実した走りは、今後も長距離戦線を賑わせてくれることだろう。
新装の淀を彩る、名手の手綱。
2023年天皇賞(春)、ジャスティンパレスとC.ルメール騎手が制した。
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