1.レース・出走馬概要
初夏の東京競馬場で行われる、古馬牝馬マイル女王決定戦、ヴィクトリアマイル。
ターフの緑も鮮やかな府中マイルを舞台に、歴戦の牝馬が集う一戦。
メイケイエールがフレグモーネにより出走取り消しとなったのは非常に残念だったが、当代の快速自慢の牝馬16頭が揃った。
昨年に続いて連覇を狙うのは、純白のアイドルホース、ソダシ(牝5、栗東・須貝尚介厩舎)。
マイルGⅠ3勝の実績は、出走馬の中でも最上位。昨年秋のマイルCSでは、牡馬に混じっての3着と、高いマイル適性を示した。約半年ぶりの出走となるが、得意のマイル戦でまた純白の輝きを見せるか。鞍上はD.レーン騎手が初騎乗。
昨年の二冠牝馬、スターズオンアース(牝4、美浦・高柳瑞樹厩舎)も、ここに狙いを定めてきた。
前走の大阪杯では、絶妙の逃げを打ったジャックドールを猛追しての2着と、古馬に混じっても引けをとらない能力を示した。マイル戦は昨年の桜花賞以来の出走となるが、距離短縮が好影響となるか。鞍上はC.ルメール騎手。
そのスターズオンアースの牝馬三冠を阻んだ、スタニングローズ(牝4、栗東・高野友和厩舎)。
「薔薇一族」の良血だが、秋華賞の後はエリザベス女王杯14着、中山記念5着ともう一息。こちらも距離短縮は好材料と思われるが、巻き返しなるか。鞍上は秋華賞をともに制した坂井瑠星騎手。
同じ舞台の昨年の安田記念を制しているソングライン(牝5、美浦・林徹厩舎)。
牡馬を相手に府中マイルを勝ち切った地力の高さは、特筆すべきもの。昨秋の米国遠征は自重したが、得意の左回りで再び輝くか。鞍上は戸崎圭太騎手が初騎乗。
ナムラクレア(牝4、栗東・長谷川 浩大厩舎)は、久々のマイル戦。
昨年の桜花賞後はスプリント路線で良績を残し、今年の高松宮記念では2着とGⅠ制覇まであと一歩と迫った。主戦・浜中俊騎手とともに、マイルでの戴冠成るか。
2月のGⅢ東京新聞杯以来となる、ナミュール(牝4、栗東・高野 友和厩舎)。
世代屈指の末脚を武器に、オークス3着、秋華賞2着と牝馬三冠を賑わせてきたが、古馬を相手にも好走。牝馬限定戦となるここで、その能力を示せるか。鞍上は、横山武史騎手。
その他にも、京都牝馬S以来となるララクリスティーヌ(牝5、栗東・斉藤崇史厩舎)、吉田隼人騎手とのコンビで挑むアンドヴァラナウト(牝5、栗東・池添学厩舎)、府中での実績十分のイズジョーノキセキ(牝6、石坂公一厩舎)など百花繚乱。
彩り華やかな16頭が揃い、府中のマイルを駆ける。
2.レース概要
直前から雨が降り出したものの、良馬場での発走。
揃ったスタートから、1番枠を活かしてロータスランドと横山典弘騎手が押して出る。
大外からソダシも出して行くが、内に斜行した影響で、4頭の進路に影響を与えてしまった。
特にナミュールは、内の馬が芝の状態の良い外目を意識したことで、挟まれるような形になり、鞍上が体勢を崩すほどの影響があった。
ナムラクレアはその影響がありながらも前へ、スターズオンアースもルメール騎手が出して行って前目のポジション。
ナミュールはその影響を受けて、中団よりも後ろの位置取りになり、スタニングローズも後方から。
先頭はロータスランドとソダシが並んで、前半の半マイルは46秒2で通過。
3コーナーあたりから、後続馬も徐々に差を詰めて、直線へ。
粘り込みを図るロータスランドに、まだ馬なりのまま並びかけるソダシ。
その間からスターズオンアースが迫るも、伸び切れない。
坂を上がったあたりでソダシが先頭に立ち、スターズオンアースはその外に進路を取り直して追う。
しかし、その間から染め分け帽のソングラインが伸びる。
粘ったソダシを、わずかアタマ差捉えたところが、ゴール板だった。
1着、ソングライン、勝ち時計は1分32秒2。
2着にソダシ、そして3着にスターズオンアースが入線した。
3.各馬戦評
1着、ソングライン。
GⅠ2勝目となる、昨年の安田記念以来となる勝利。
サウジアラビア遠征で大敗した前走から、見事に巻き返した陣営の手腕は見事。
安田記念で牡馬に混じって府中のマイルGⅠを制した実績は、やはり伊達ではなかった。
「府中のマイルに紛れなし」の格言の通りといえる。
外目のコースを狙っていたと戸崎騎手は語っていたが、そのプランが難しいとみるや、内から追走して、最後の直線でスターズオンアースの内をすくう騎乗は見事。
これで節目のJRA・GⅠ10勝目。関東の名手に、また一つ大きな勲章が加わった。
順調ならば、次は連覇のかかる安田記念だろうか。
その走りを、楽しみにしたい。
2着、ソダシ。
直線半ばでは、勝ったかと思わされたほど、手応え十分だった。
やはり、適性距離のマイルでの地力の高さは、ここでは一つ抜けていたように思う。
それだけに、スタート後の斜行が、後味を悪くしてしまったか。
いずれにせよ仕切り直して、また大きな舞台で純白の女王が輝くのを見たい。
3着、スターズオンアース。
ルメール騎手が積極的に出して行ったが、前走のような末脚を見せることは叶わず。
伸びそうで伸び切れないあたり、この馬の2歳時を思い起こさせる。
ルメール騎手も語っていた通り、やはり現状は中距離がベストなのだろうか。
それでも、直線で外の進路に出してからもう一度伸びて、後ろから差されなかったのは地力の高さか。
二冠牝馬の輝きを、再びみられることを楽しみにしたい。
安田記念制覇の実績は、伊達じゃない。
2023年ヴィクトリアマイル、ソングラインと戸崎圭太騎手が制した。
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