「不満」を溜め込んでいると、その相手との関係が悪化していきます。
なぜ、溜め込んでしまうのかという心理についてと、その「不満」を解消する方法について、考えてみます。
名著「傷つくならば、それは「愛」ではない」(チャック・スペザーノ博士:著、大空夢湧子:訳、VOICE:出版)の一節から。
1.不満をためこんでいると人間関係が破壊する
不平不満を内にためこんでいると、それはかならず害をおよぼします。
それなのに、多くの人はあまりパートナーに不満を打ち明けたがりません。
言ってしまってから混乱や苦痛に対処しなければならないのがいやなのです。
ところが不満にしがみつくほど、自分で自分の足を引っぱり、パートナーとの壁をどんどん大きくしてしまうのです。
人間関係で、よどんだような活気のなさを味わっているのなら、試しにあなたの不満を分かちあってみてください。
あなたはどんな不満をもっているのでしょうか。
二人の関係がはじまったころから、ずっと心の中で握りしめてきたものは、どんな不満ですか。
「傷つくならば、それは「愛」ではない」 p.266
2.不満は溜め込むと毒になる
今日のテーマは、「不満」の心理でしょうか。
誰でも抱くことのある、不平や不満についての心理について、少し考えてみます。
不満を抱くのは、愛情の裏返し
私たちは時に、誰かや何かに対して、不満を抱きます。
「パートナーが、なかなか愛情表現をしてくれない」
「頑張っているのに、会社が評価してくれない」
「いつも行くお店の方が、今日は無愛想だった」
…などなど、さまざまな形の「不満」があるものです。
こうした「不満」ですが、それを言わないで内に溜め込んでいると、その誰かや何かとの関係に害をおよぼす、というのが今日のテーマですね。
しかし、まず大前提としておきたいのが、そうした「不満」を持つ対象です。
これは問題と同じなのですが、私たちは自分にとってたいせつな人やものにしか、「不満」は抱きません。
私が中日ドラゴンズの戦略に「不満」を感じるとしたら、それは私にとってたいせつなものであるがゆえに、なのでしょう笑
自分の中でどうでもいいことに対しては、「そんなもんか」とあきらめたり、その場で怒って終わりです。
自分にとってたいせつな人やものであるからこそ、「不満」を感じる。
そして、たいせつであればあるほど、その「不満」をなかなか打ち明けられない。
それは、まず大前提としておきたいことです。
「依存」の辛さを思い出すから、打ち明けられない
さて、その大前提を見た上でなのですが、なぜ「不満」を打ち明けられないのか、ということを考えてみます。
感情と同じで、「不満」は内に溜めても、勝手には解消されませんし、それどころかどんどん大きくなります。
そんな「不満」を肚に据えかねた状態だと、パートナーとの関係や、会社との関係が難しくなってくるのは、当たり前のことかもしれません。
しかし、なぜ「不満」を言えないのでしょう。
世の中には、「不満」をすぐに口にできる人もいます。
そうした人は、今日のテーマは問題にならないわけです。
けれど、その逆に「不満」をなかなか打ち明けられない人が、いる。
そうした人は、「依存」と「自立」でいえば、「自立」的な人が多いのだと思います。
「依存」とは、自分では何もできないから、誰かに何かをしてほしい状態です。
ニーズ、欲求が強く、それを常に周りに求めてしまいます。
それは、常に請求書を発行し続けている状態のようです。
しかし、常にそうした欲求が叶えられるわけではないので、私たちはそれで傷つきます。
そこで、「誰にも頼らない、なんでも自分でやる」という「自立」の側に振れるのですが、その底には「どうせ言っても叶えてもらえない」という痛みが横たわっています。
言ってみれば、「不満」を言ったところで、自分の欲求やニーズは叶えてもらえない。
だって、いままで、自分の欲求やニーズが、叶えてくれなかったんだから。
そんな「依存」のしんどさ、辛さを思い出したくないから、「不満」を口にしない、内に溜め込む。
言ってしまってから混乱や苦痛に対処しなければならないのがいやなのです。
引用文にもありますが、「不満」を内に溜めこんでしまう原因の一つには、そんな心理があるようです。
3.満たされない気持ちをぶつけるのではなく
「不満」を言えないことは、あなたの価値でもある
「自立」的な人ほど、「不満」を言えない。
その他にも、他人の気持ちを推し量れる人ほど、「不満」を言えなかったりするのでしょう。
「私がそれを言ったら、この人はイヤな気持ちになるだろうなぁ」
私がカウンセリングでお話を伺うなかでも、そんな風に考える方は多いものです。
共感力や、お察しする力が強すぎるがゆえに、「不満」を言えなかったりする。
「不満」を言えないのは、その方にとってしんどいことですし、人間関係を難しくしてしまうものです。
けれど、それは「悪い原因」のように、考えるべきものでも、ないと思うのです。
それだけ、自分一人でがんばってこれた。
それだけ、他人の心情を慮ることができた。
逆に考えれば、それって、すごいことですよね。
「不満」を言えないことは、その人のかけがえのない価値であり、魅力であり、才能でもあるわけです。
だから、単純に「自立のしすぎだから、それはヨクナイ!」とか、そんなふうに考えないようにしたいものです。
カウンセリングをしていて感じるのは、問題をつくるのも、その問題を解決するのも、その人の同じ資質や才能なんですよね。
それは、その人がその人であるがゆえの、アイデンティティのようなものに感じます。
今日の「不満を言えない」という問題に限った話ではないのですが、その事象の光の部分に、いつもフォーカスしたいものです。
「不満」をそのまま伝えるのではなく、その底にある感情を伝える
ずいぶんと、話が逸れてしまいました。
いつものことですが笑
話を戻しますと、原因はどうあれ、「不満」を溜め込むと、その人やものごととの間に、ロクなことが起きない。
関係性を、徐々に悪化させてしまう。
じゃあ、「不満」を言いましょう!という単純な話でもないものです。
いままで「不満」を言えなかった人が、突然、「不満」を声高に叫び始めたら、それもそれで、関係性を難しくしてしまいそうです。
というか、それができないから、いままで苦しんできたのですから。
「不満」を、そのままにぶつけることが、解決ではない。
相手に伝えるべきなのは、「不満」ではなく、その底にある感情です。
「不満」を抱くもとになった、ネガティブな感情ではなく、もっとその奥にある感情。
「パートナーが、ぜんぜん愛情表現をしてくれない」という不満。
その奥にある、
「愛情表現をしてくれないから、とても寂しく感じる」というネガティブな感情。
それを、もっと掘り下げていくと、
「あなたがとてもたいせつで、とても愛おしく思っている。愛情表現をすることが、その気持ちを伝える方法だとも思ってる。だから、たいせつなあなたと、愛情を伝えあえる関係でいたい」
という、愛情。
それが、「不満」ではなく、伝えたかった本音なのかもしれません。
その本音を伝えることができると、「不満」をぶつけなくても、人はすごく満たされるんですよね。
そして、相手がその伝えたことをどう受けとろうと、あまり傷ついたりしないものです。
「伝えられた」ということだけで、とても満たされる。
不思議なのですけれどね。
そして、自分が満たされていくことは、関係性によい影響をおよぼしていきます。
もちろん、ここまで単純なものではないかもしれません。
人の心って、ほんとに不思議なものですから。
その底にたどり着くまでに、いくつもの感情を見ていかないといけませんし、底だと思っても、まだ深い部分があったり。
けれども、表面に見える「不満」をそのまま伝えるよりも、その自分の感情を伝えることは、相手との関係性を育むうえで、とても重要なものです。
もちろん、それを伝えるのもまた、最初は難しいものですけれどね。
いきなり、全部やろうとしなくても、大丈夫です。
少しずつ、少しずつ。
「不満」の底にある感情に、意識を向けていくだけでも、変わると思います。
今日は、「不満」の心理について、考えてみました。
ここまでお読みくださり、ありがとうございました。
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