人間関係を、相手との間に流れる川だとすると。
相手との間に「橋」を架けられるといいのですが、私たちは自分の岸を守ろうと「堤防」を築いてしまいがちです。
そうなってしまう原因と、「橋」を架けるイメージについて、お伝えします。
名著「傷つくならば、それは「愛」ではない」(チャック・スペザーノ博士:著、大空夢湧子:訳、VOICE:出版)の一節から。
1.人間関係という川で大切なものは、「堤防」ではなく、対岸にむかう「橋」
私たちはしばしば、自分からパートナーに近づいてしまったら、自分の主張がくずれ落ちてしまうのではないかと怖れています。
けれどもこんなふうに考えてみてください。
パートナーとのあいだに橋を架けたなら、おたがいの主張していた点が具体化し、あなたと相手がひとつに統合されると。
そこで重要なのは、自分の側の堤防を守るために闘うことではなく、対岸にむかって橋を架けることです。
おたがいが満足できるまで自分の言い分を聞いてもらい、こたえてもらいましょう。
こうして生まれた結果は、双方の主張のなかから真実の部分を統合したものとなります。
そして二人のあいだにも、新しいかたちの交流が生まれるはずです。
「傷つくならば、それは「愛」ではない」 p.40
2.なぜ「堤防」を築いてしまうのか
自分の岸か、相手の岸か?
今日はパートナーシップ、ひいては人間関係におけるイメージです。
パートナーや相手との間に、流れる川。
よく私たちがしがちなのが、自分の岸を守ろうと「堤防」を築こうとしてしまうことです。
「自分の岸を侵されたくない」という怖れが、そこにはあります。
相手の主張を認めてしまったら、自分の領土がなくなってしまう。
そんなふうに、私たちは思っているのかもしれません。
それは、近い人間関係であればあるほど、如実に出ます。
同じことを言われても、仕事の同僚に言われても気にならないことが、パートナーに言われるとカチンときたり、そんなことはよくあるものです。
自分の岸か、相手の岸か。
その「どちらか」を選ばないといけない。
そんな風に、私たちはどこかで思っているのかもしれません。
「正解主義」、あるいは「正しさへの執着」
こうした心理には、いくつかの原因が考えられます。
「どれか一つしか正解がない」という、正解主義光。
これは、私たちが、子どものころから繰り返し受けるペーパーテストから、多く影響を受けているとも見えるでしょう。
あるいは、自立のし過ぎによる「正しさへの執着」。
自立も度が過ぎると、依存に叩き落されることを怖れるので、勝ち負けにこだわります。
自分の正しさにこだわることで、自立のポジションを何とか守ろうとする。
そうすると、自分の岸は侵されないかもしれませんが、孤立無援になるのは、簡単に想像できる通りです。
勝ち負けにこだわり、攻撃的で競争してくる人の岸には、あまり近寄りたくないですよね。
当然、寂しくなるのですが、その寂しさも抑圧していくことで、感情がどんどんマヒしていきます。
すると、引用文にあるように、築いた「堤防」を、どんどん高くしていってしまうのです。
自分の岸か、相手の岸か、どちらかを選ばないといけないという考えは、あまりうまくいかないようです。
3.明日に架ける「橋」
ビジネスの場面では、日常的にしている
そのように、お互いに「堤防」を築いて「どちらか」を選ぶのではなく、「橋」を架けよう、というのが今日のテーマです。
そうは言っても…と思ってしまうかもしれません。
けれど、似たようなことを、ビジネスの場面では結構見かけます。
この「心理学」シリーズを書いていると、パートナーシップの理想と、ビジネスの理想が、近い場所にあることが多いことに、驚かされます。
不思議なのですが。
それはさておき、なぜ、ビジネスの場面では「橋」を架けようとできるのでしょうか。
考えられる一つの要因として、利害関係がはっきりしている、というものがあります。
自分の側の利益、相手の側の利益。
それぞれをむやみに最大化しようとすると、交渉は決裂、もの別れに終わらざるをえません。
時間という、最も貴重なコストを払っているのですから、何かを得ようとします。
自分の利益を最大化するために、相手の利益を考えるわけです。
その中で、自分と相手の利益を最大化するためには、どうしたら実現できるのだろう、と一緒に探っていくわけです。
それでも結果として折り合えないことは、もちろんあります。
けれども、素晴らしい結果を導くことも、多くあります。
そう考えると、ビジネスの場面では、こうした「橋」を架けるということを、日常的にしているのかもしれません。
お互いにとっての利益は何だろう?
これが、ことパートナーシップや近しい関係になると、とたんに難しくなるものです。
ええ、まぁ、ほんとに笑
ビジネスと違うのは当然といえば当然なのですが…
でも、なぜなんだろう?と考えてみると、先に挙げた「利益」というワードが、一つのカギになるのかもしれません。
ビジネスにおける「利益」とは、最終的には「対価」であり、得られる「サービス」です。
では、パートナーシップ、あるいは人間関係における「利益」とは何でしょうか。
いったい、なんのために「橋」を架けるのでしょうか。
それは、やはり「幸せ」という「利益」を得るため、なのかもしれません。
それは、自分の幸せでもあり、お互いの幸せでもあります。
自分の岸を守ろうとすると、上に述べたように、なかなか幸せを感じることが難しくなります。
自分を守るはずが、真逆の結果になるとは、不思議なものです。
おたがいが満足できるまで自分の言い分を聞いてもらい、こたえてもらいましょう。
こうした「橋」を架けることで、いままでとは違った形の交流が生まれ、想像もしていなかったパートナーシップが生まれるのかもしれません。
「堤防」ではなく、「橋」を架ける。
覚えておきたい、人間関係のイメージです。
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