ものごとの解釈がポジティブに変わることを「癒し」と呼びます。
それは自分のなかの「真実」を、大切な人に伝えてコミュニケーションすることで、もたらされるものです。
名著「傷つくならば、それは「愛」ではない」(チャック・スペザーノ博士:著、大空夢湧子:訳、VOICE:出版)の一節から。
1.「真実」が豊かさをつくりだす
体験しているのに口に出さないと、人間関係がストップしてしまいます。
コミュニケーションがなくなるとつながりも失われ、前に進めません。
真実、つながりの絆を生みだします。
でもパートナーに何かを伝えるのを怖れているとき(たとえば、あなたの気持ちや対処する必要があること、何かの出来事など)、あなたの言っていないことがパートナーとのあいだに壁をつくり、二人の関係は死んだようになってしまいます。
あなたとパートナーのつながりのレベルが深まるにつれて、単にお金だけでなく、よろこびや幸せ、創造性や人生のよいものすべてといった、真の豊かさが生みだされるのです。
「傷つくならば、それは「愛」ではない」 p.402
2.「事実」と「真実」
今日のテーマは、「真実」です。
「真実」とは、「事実」と対比される概念であり、それをめぐって私たちは動きます。
「事実」と「真実」の違い
「事実」とは、客観的な事柄であり、誰が見ても同じものです。
「今日は雨が降っており、最高気温は12度だった」というのは、誰が見ても同じであり「事実」です。
一方で、心理学的な意味での「真実」とは、その「事実」の受けとめ方を指します。
「冷たい冬に雨が降ると、気が滅入る」というのは、誰にとっても同じではありません。
起こったできごとに対して、私たちはいままでの経験や価値観、考え方によって、その「事実」を解釈していきます。
言ってみれば、100人いれば100通りの「真実」がある、といえます。
そしてここが重要なのですが、私たちの行動、あるいは生き方に大きく影響するのは、この「真実」の方です。
起こったできごとを、どのように解釈するか。
そのできごとに、どのような意味づけをするか。
そのできごとや体験した事そのものではなく、それに対して自分自身がした解釈や意味付けの方が、私たちの生き方に与える影響は大きいものです。
もっともらしく言っていますが、考えてみれば当たり前ですよね笑
同じできごとを経験しても、それを糧としてその後の人生を豊かにすることもあれば、それが傷となってしまう場合もある。
私たちは、自分自身の「真実」のなかに生きています。
「事実は変えられないが、真実は変えられる」
心理学においては、こんな格言があります。
「事実は変えられないが、真実は変えられる」
起こったできごとを無かったことにしたり、それを無理やりに変えることはできません。
昨日の天気を、雨から晴れに変えることができないように。
しかし、そこから何を解釈するかは、私たちに委ねられています。
一度した解釈は、何度でも変えられるし、それによって「真実」もまた変えることができます。
この「真実」が、自分にとってポジティブに変わることを「癒し」と呼んだりもします。
ある体験から、どんな「真実」を得るかは、自分次第です。
できごとは、常にニュートラルであり、そこに良いも悪いもありません。
そこに解釈や意味づけをするのは、私たち自身です。
人生最悪とも思えるできごとが、「あれがあったからこそ、いまの自分がある」と誇れるようになることは、めずらしいことではありません。
「真実」は、変えられます。
しかし、自分だけでそれを変えようと思っても、難しいものです。
3.「何を伝えていないか」という視点
そこで出てくるのが、コミュニケーションです。
今日の引用文にもある通り、パートナーや親しい人とのコミュニケーションが、非常に重要になります。
体験しているのに口に出さないと、人間関係がストップしてしまいます。
自分が何を体験して、そこで何を感じたのか。
それは、自分自身のなかの「真実」です。
それを口に出すことを止めていると、人間関係が停滞し、自分自身のなかの「真実」もネガティブな方向に引っ張られていきます。
私たちは、誰かとつながり、コミュニケーションをすることで、自分のなかの「真実」を変えていくことができます。
それが途絶えてしまうと、癒されもしなければ、自分のなかのネガティブな「真実」はそのままになってしまうのでしょう。
そう考えていくと、「私は、大切な人に何を伝えていないのだろう?」という視点は、非常に重要になります。
自分の中で、どこか蓋をしてしまっている部分。
パートナーや家族、大切な人たちに、言えなくなっているできごと。
伝えることを、無意識に躊躇してしまっている気持ち。
もしかしたら、そこが私たちのなかの癒されていない「真実」なのかもしれません。
けれどもそれは、外に出すことでしか、癒されることはありません。
「自分は、何を伝えていないのだろう?」
それは、非常に大切な視点です。
伝えられないことは、それだけ自分のなかで傷となっている、ネガティブな「真実」といえます。
それ自体が、悪いことでもなんでもありません。
ただ、「あぁ、自分はこの部分が、外に出すのが怖いんだな」と気づくだけでいいんです。
そこに気づいたら、少しずつ変わっていきます。
時が満ちれば、それを大切な人に伝えられるようになるのでしょう。
「何を伝えていないか?」という視点は、大切な人とのコミュニケーションを豊かにしてくれるようです。
今日は「事実」と「真実」の違いから、コミュニケーションにおいての大切な視点をお伝えしました。
ここまでお読みくださり、ありがとうございました。
〇大嵜直人のカウンセリングの詳細・お申込みはこちらからどうぞ。
※ただいま12月度の個人カウンセリングを募集中です。
〇カウンセリングのご感想のまとめはこちら。