大嵜直人のブログ

文筆家・心理カウンセラー。死別や失恋、挫折といった喪失感から、つながりと安心感を取り戻すお手伝いをしております。

かくも難しき「母親」という存在と、与えらえた「許し」という希望。

私たちは、胎内にいたときから多くの時間を「母親」とともに過ごします。

それがゆえに、「母親」との関係は、人間関係に実に大きな影響を与えます。

その関係性を詳しく見ていくとともに、「母親」を許すにいたる道について、お伝えします。

名著「傷つくならば、それは「愛」ではない」(チャック・スペザーノ博士:著、大空夢湧子:訳、VOICE:出版)の一節から。

1.いまの人間関係の問題を解決するために、母親を許しましょう

私たちはしばしば母親を「偉大なるスケープゴート」、つまり私たちの罪を背負う身代わりにします。

私たちが受けとらなかったことのすべてを「お母さん」のせいにすることもできます。

 

じつのところ、あるレベルでは、いまのあなたの人間関係で否定的なことはどれも、母親が与えてくれるべきだったのに与えてくれなかった、ということへの責めから起こっています。

 

あなたがすすんで母親を許そうとすれば、いまのすべての人間関係を向上させることになります。

 

「傷つくならば、それは「愛」ではない」 p.109

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2.かくも難しき、母親という存在

今日のテーマは、「母親」でしょうか。

私たちの人間関係に、大きな影響を与える「母親」。

その影響の大きさと、難しさについて、今日は考えてみます。

あくまで、世界の見方のひとつとして

噛み合わない会話から

先日、ある方とお話ししていたときのことです。

「多くの人間関係で起こる問題は、親との関係に起因することが多い」

というようなことをお話ししたのですが、その方の頭の上に「???」のマークがたくさん浮かんでいました。

こういう考え方がありまして…と説明させていただいたのですが、その方がスッキリするような説明ではなかったようで、どうも会話が嚙み合いませんでした。

ええ、帰りの道中、歯噛みしておりました笑

こうして、毎日心理学について書いていたり、カウンセリングをしていたりすると、そうしたことはある意味で「常識」のように感じてしまうようです。

しかし、それは決して常識でも当たり前でもなくて、あくまで「世界の見方のひとつ」でしかないんですよね。

それを「当たり前」としてとらえだすと、あまりいいことはない気がします。

視線がだんだん凝り固まっていき、ゆくゆくは「こうであるはず」「こうでないとおかしい」といった、独りよがりの考え方になってしまう可能性があります。

そういった意味では、とても初心に返らせてもらえる出来事でした。

心理学は、統計学

「心理学は統計学」といわれます。

たとえば、愛というものを考えるとき。

哲学者は、愛を定義しようとします。

社会学者は、愛が社会におよぼす影響を考えたりします。

心理学者は、愛についてこう考えている人が〇〇%いて、また別にこう考えている人が〇〇%いる、と考えたりします。

見えている事象を、こういう見方で説明するとうまくいったり、つじつまが合うことが多いよ、という見方を提供する学問、といった感じでしょうか。

だから、「絶対正しい」わけでもありません。

ただ、それを聞いて、自分のなかに「納得感」があるかどうか、が大切なのでしょう。

「納得感」、あるいはその説明が自分にとってフィットするかどうか。

その説明がフィットしないからといって、自分を責める必要は、まったくないわけです。

今日の引用文のように、親を許すことは、楽に生きられるようになる一つの方法ではありますが、それが唯一絶対の方法でもないと思うのです。

私がこう書くと、元も子もないかもしれませんが笑

楽になるのであれば、それ以外の方法でもいい。

ただ、親を許すことで、楽になる(なった)人が多いこともまた、事実なのでしょう。

人間関係における「距離感」について

もっとも近い「距離感」にいる「母親」

「母親」とは、もっとも近い距離感の他人、といわれます。

私たちの人間関係は、全く知らない他人からはじまり、徐々に関係性が近くなっていくものです。

【人間関係の距離感】

・まったくの他人
 ↓
・知り合い
 ↓
・友人
 ↓
・きょうだい、祖父母
 ↓
・父親
 ↓
・母親

人によって多少の違いはあると思いますが、上の枠の下へ行くほど、心理的な距離感が近くなります。

赤の他人からはじまり、知り合い、友人、そして家族と近づくにしたがって、心理的な距離は近くなっていきます。

もちろん、先に述べた通り、きょうだいより親しい友人や、父親よりも祖父の方が心理的に近かったということは、よくあると思います。

しかし、多くの場合において、「母親」というのは、心理的に一番近い距離感にあります。

10月10日のあいだ胎内で過ごした、ある意味で自分の分身であるわけです。

そして、幼少期から一緒にいる時間が長くなることで、心理的な距離は近いものになります。

ちなみに、上の表の距離感が動く存在が、二つあります。

「パートナー」と「子ども」ですね。

「パートナー」は他人からはじまり、徐々に距離が縮まっていき、最後には最も近い距離まで関係性を縮めることがあります。

もちろん、いったん縮まった距離が、ケンカしたりして離れることも、よくあります笑

一方、「子ども」は近い距離からはじまり、成長とともに徐々に距離が離れていく存在です。

面白いものですよね。

母親との関係は、人間関係の「原型」

上に書いたように、私たちは、多くの場合、母親と多くの時間を過ごします。

生れ落ちて、最初に認識する「他人」である「母親」から、人間関係を学びます。

未分化だった世界から、自分と世界を切り分け、そして「他人」という存在を知る。

その最初が、「母親」という存在です。

言い換えれば、私たちは「母親」から、人間関係を学び、そこに「原型」をつくります

最初に書いた、人間関係における問題の多くが、親との関係に起因するというのは、こうした前提があります。

母親の話し方、聞き方から、コミュニケーションの取り方の一つ一つから、私たちは人間関係を学びます。

要は、親からいろんなことをコピーしていくのですね。

「三つ子の魂百まで」のことわざの通り、3歳までに物の見方、考え方のベースの多くが決まるといわれます。

こう書くと、やさしいお母さんほど、胸が痛むかもしれません。

こんなかかわり方で、大丈夫だったのだろうか、と。

あるいは、私の接し方に問題があったのだろうか、と。

そう思う方ほど、愛情にあふれた方だろうと思います。

どうか、そんなふうに、ご自身を責めないであげてください。

心理学を自分責めに使わないようにしてくださいね。

どうあっても、大丈夫だということを、次にお伝えしたいと思います。

3.「許し」という、希望

その感情を認め、解放することから

人間関係の問題を突き詰めていくと、究極のところ、「母親」が与えてくれなかった、という不満感や、そう感じることへの罪悪感に行きつきます。

今日の引用文にある通りですね。

じつのところ、あるレベルでは、いまのあなたの人間関係で否定的なことはどれも、母親が与えてくれるべきだったのに与えてくれなかった、ということへの責めから起こっています。

いやですよねぇ…こんなこと言われても…

しかし、心の深い部分に向き合えば向き合うほど、この「責め」はあぶりだされてくるのかもしれません。

御多分に漏れず、私自身も、そうでした。

凍えるような「寂しさ」という感情に、向き合っていく中で。

「どうしてぼくをひとりにしてしまったんだ!」と、母親を責めていたことに気付いて、愕然としたことを覚えています。

故人を責めるのは、道義に反します。

だから、私はそれを見ないようにしてきたのかもしれません。

しかし、人の感情というのは、天気のように気まぐれで、道徳やモラルとは、まったく関係のないところで浮かんでは、消えていきます。

それを認めずに抑えようとするのは、ランニング中におなかが痛くなったのに、気付かないふりをするようなものでしょう。

はい、先日もそんなことがあり、大惨事になりかけました笑

まずは、その感情が「ある」ことを認める、それが「許し」への大きな大きな一歩目であるようです。

許しのプロセスは、「感情の解放」から始まるのですから。

「許すことができる」と知る、それだけでいい

あなたがすすんで母親を許そうとすれば、いまのすべての人間関係を向上させることになります。

引用文にはこう書いていますが、それがいかに難しいことかは、私自身も実感しているところです。

「許し」とは、その相手やできごとを主体的にとらえ、100%受け入れることです。

それによって、自分を罪悪感から解放し、自由にすることができます。

「母親」を許す難しさというのは、心理的に一番近い距離であるがゆえに、自分を許すことの難しさとつながっているように思います。

すべての「許し」の道は、最終的には自分を許すことに至ります。

けれど、いきなりそこに至らなくてもいいんです。

また、「許している」か「許していない」かといった、0か1かで考えなくてもいいと思います。

日々移り変わりゆく、夕暮れの景色のように、グラデーションになっているのが、人の心なのでしょうから。

ただ、「許すことができる」と知る、それだけいいんです

「許し」とは、人に与えられた偉大な力であり、また希望であるのですから。

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