1.レース・出走馬概要
2022年の掉尾を飾るGⅠ・ホープフルステークス。
2014年の2歳戦改革により、前身のGⅢラジオNIKKEI賞2歳ステークスから名称および開催場所の変更(阪神→中山)が行われ、2017年にはGⅠに昇格した。
皐月賞と同じ中山2000mを舞台として行われ、翌年のクラシック戦線を占う一戦として、年々その重要性が増している。
阪神で行われていた時代を含めると、勝ち馬には綺羅星のようなGⅠ馬、ダービー馬の名前が並ぶ。
年末の気ぜわしい中、来年の「希望」に触れるレースでもある。
2戦2勝と底を見せていないのが、ミッキーカプチーノ。
同じ舞台の葉牡丹賞を快勝して望むが、大外18番枠からの発走は試練か。
矢作芳人調教師、戸崎圭太騎手ともに2022年初のGⅠ勝利をここで決めるか。
近年の「出世レース」のGⅡ東京スポーツ杯2歳ステークスを制した、ガストリック。
中団のインコースで折り合い、非凡な末脚の伸びを新馬戦に続いて見せつけたが、初の中山コースでもその末脚の威力を見せつけるか。
鞍上の三浦皇成騎手には、悲願のGⅠ初制覇がかかる。
その東京スポーツ杯2歳ステークスで3着だったのが、ハーツコンチェルト。
ただ上がりは最速を記録しており、逆に負けた経験はこの時期の2歳馬にとっては糧になるはず。鞍上は、松山弘平騎手。
平地GⅠレース完全制覇の偉業がかかる武豊騎手は、セレンディピティと挑む。
新馬、未勝利と阪神内回り2000mを使った経験が、同じく小回りの中山の舞台で活きるか。
同じ距離のGⅢ京都2歳ステークスを逃げ切った、グリューネグリーン。
中山2000mでは欠かせない先行力を、ミルコ・デムーロ騎手がどう活かすか。
鋭い決め手を武器に、中京マイルの新馬戦、そして阪神2000mの野路菊ステークスを連勝してきたのが、ファントムシーフ。
難しい最内1番枠を引いたが、福永祐一騎手の手綱はどう動くのか。
そして、今年デビューで旋風を巻き起こした今村聖奈騎手が、スカパラダイスでGⅠ初騎乗。
さらには、新潟の新馬戦での末脚が際立っていたフェイト、未勝利・百日草特別を連勝した良血・キングズレインといった好メンバーが揃った。
来年のクラシックを担う若駒18頭が、暮れの中山を舞台に躍動する。
2.レース概要
やわらかな冬の日差しの晴天、コンディションは良馬場。
4コーナー奥からのスタート、モンドプリュームが若干出遅れる。
直線を使ってのじりじりとした先手争いから、ドゥラエレーデとトップナイフが先行。
横山典弘騎手のトップナイフがハナを切り、ドゥラエレーデが番手につける。
ミッキーカプチーノも、大外から押して3番手のポジションを取り、フェイトはそれを見るような形。
さらにはグリューネグリーン、ファントムシーフ、セレンディピティが続き、ハーツコンチェルトは中団あたりからの競馬。
前走は中団からだったガストリックは、キングスレインとともに後方から進める態勢となった。
トップナイフは後続を離さず、前半の1000mを1分1秒5で逃げる。
2歳とはいえ、GⅠにしてはスローペースとなり、馬群は一団となって3コーナーに向かう。
3番手のミッキーカプチーノが3コーナー過ぎから押し上げていき、後続も差を詰めて直線を迎える。
先頭は、まだトップナイフとドゥラエレーデが競り合っている。
ミッキーカプチーノもそれに並ぼうとするが、伸び切れない。
中山の急坂を迎えても、前の2頭の脚は止まらない。
トップナイフが前に出るも、ドゥラエレーデも食い下がる大接戦は、最後は首の上げ下げとなってゴール板を通過した。
写真判定にもつれた勝負は、ドゥラエレーデがハナ差でトップナイフと下していた。
そして3着には、後方から脚を伸ばしたキングスレインが入った。
3.各馬戦評
1着、ドゥラエレーデ。
14番人気の低評価を覆す大勝利。
単勝9,060円の配当は、1986年以降のJRA・GⅠでの史上10位の記録だそうだ。
3連単も240万超えとなり、まさに年の瀬の中山に暴風をもたらした。
スローペースの2番手をうまく確保。
逃げ馬とともに脚を温存、最後の直線での競り合いに持ち込み、しぶとく差し切った。
ライアン・ムーア騎手から乗り替わりとなったバウイルザン・ムルザバエフ騎手は、これがJRA・GⅠ初勝利となった。
これで父・ドゥラメンテは、今年のJRA・GⅠ6勝目。
大舞台で見せつける底力が、最後のGⅠでも輝きを見せた。
馬主のスリーエイチレーシングは、朝日杯フューチュリティステークスを制したドルチェモアで初のGⅠ制覇となったが、そこから約2週間後に再びGⅠを制する快挙となった。
そのドルチェモアを含めた朝日杯組と、来春の対決が楽しみにしたい。
2着、トップナイフ。
横山典弘騎手、円熟の逃げ。
12秒台後半のラップを織り交ぜ、後続を封じるペースでの逃げ。
最後の3ハロンだけ11秒台の競馬になっては、後続馬はどうあっても厳しかったか。
まさに職人芸のような逃げを、年末の大舞台で見せてくれた。
当然ながら、その手綱に応える同馬の操縦性の高さと持久力があってこそ。
生産は、浦河町の杵臼牧場。
あのテイエムオペラオーの故郷だ。
来春のクラシック、その走りを応援したい。
3着、キングスレイン。
2着馬で触れたレース展開で、よく後方から差してきた。
マークした上がり34秒3は、2位に0秒3の差をつけており、末脚の伸びは際立っていた。
距離が伸びても全く問題なさそうでもあり、次走以降での巻き返しを楽しみにしたい。
年の瀬の中山に吹き荒れた、「荒々しい血」。
2022年ホープフルステークス、ドゥラエレーデが制す。
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