大嵜直人のブログ

文筆家・心理カウンセラー。死別や失恋、挫折といった喪失感から、つながりと安心感を取り戻すお手伝いをしております。

「自立」の人は自分が「依存」の状態にあると感じ、「依存」の人は自分を「自立」にいると感じるもの。

自分自身のことを客観視することは、なかなかに難しいものです。

「自立」的な人ほど、自分が「依存」の状態にあると感じ、「依存」的な人ほど、自分を「自立」にいると感じる傾向にあります。

それぞれに必要なアプローチは真逆なので、ここを見誤らないようにしたいものです。

1.必要なアプローチが異なる「依存」と「自立」

心の成長プロセス

ここで、最近ずっとお伝えしている「依存」と「自立」。

人は「依存」の状態からはじまり、「自立」へと向かい、そして「相互依存」に至るという、私たちの心の成長モデルの一つです。

「依存」とは、自分では何もできないため、誰かに何とかしもらいたい、という主導権がない状態です。

そのため、自分には価値がないと感じやすく、また満たされない不満から周りを責めやすくなります。

その反対に「自立」とは、他人に頼るのをやめて、何でも自分でやろうとしている状態といえます。

それゆえに、孤立や孤独を抱えやすく、また自分のルールややり方にこだわり過ぎるあまり、周囲との対立や葛藤が起きやすくなります。

そのどちらがよくて、どちらが悪い、というわけではありません。

そのいずれも、誰もが通る成長のプロセスです。

しかし、それぞれのステージにおいて、必要なアプローチというものがあります。

「依存」では「がんばる」しかない

「依存」においては、自分自身でやってみる、がんばることが必要になります。

生まれたばかりの赤ちゃんが、自分の足で立って歩くことを考えてみても、誰かが代わってあげることもできませんよね。

「依存」が辛いのは、「自分ではどうにもできないけれど、誰も私に与えてくれない」というしんどさです。

どうしたって、そうした「依存」のしんどい状態から抜けだすには、自分自身の力で「がんばる」ことが必要になります。

そこには、地道な練習だったり、反復訓練だったり、チャレンジすることだったり、そういったことが必要になります。

自分のできることを、一つずつ、一つずつ、増やしていく。

それが自信となり、はじめて「自立」へと向かうことができます。

ここで、よく聞く「がんばらなくてもいい」というような、耳障りのよいフレーズを採用してしまうと、「依存」から抜けだすことは難しくなります。

「自立」では委ねる、受けとる、傷を癒すなどのアプローチが必要

さて、「自立」では、その反対のアプローチが必要になります。

「自立」のしんどさは、先に書いたように、まわりとのつながりが切れてしまう孤独感、そして自分の正しさが周りと衝突して、常に争わないといけないことにあります。

何度も書きますが、自分一人でがんばってきたからこそ、その状態に至ったわけですから、決してそれが悪いことでもありません。

「自立」の先の「相互依存」とは、自分でできることは自分でする、自分でできないことは誰かを頼るという、「ともに生きる」ステージです。

そこに進むためには、自分でできないことを、誰かに頼る、委ねる、任せる、というアプローチが必要になります。

いままで、自分一人でがんばってきた方向とは、違うやり方が必要になるわけです。

そうするためには、自分自身の価値を受けとることも必要になるでしょう。

また、「自立」に至るきっかけとなった、「依存」時代の心の傷や痛みなどに向き合うことも、非常に重要になってきます。

はい、まさに「言うは易く行うは難し」です笑

だって、「自立」の人にとっては、自分一人でがんばった方が簡単だし、楽だと感じるものですから。

しかし、「自立」を深めるほどに、もうその方向では、にっちもさっちもいかない状況になってしまうものです。

カウンセリングで扱う多くのテーマも、この「自立」の問題と深く関係しています。

2.自分がどちらなのかを見極めるのは難しい

自分の状態を見誤る理由

「依存」と「自立」、それぞれで必要なアプローチが真逆になります。

しかし、ここで一つ問題があります。

自分が「依存」の状態にあるのか、「自立」の状態にあるのか、それを見極めるのは難しい面がある、という問題です。

「依存」の人は、自分自身を「自立」していると感じることが多いものです。

その逆に、「自立」の人は、自分が「依存」の状態にあると感じるものです。

なぜか。

「依存」の状態にあると、周りになんとかしてほしいわけですから、他責思考になります。

それゆえ、「自分はがんばっているし、悪くないんだ」と考えやすくなります。

そうすると、ますます「依存」の沼から抜け出せなくなってしまいます。

一方で、「自立」の人は、自分がもっとやらないと、という自責の傾向が強くなります。

それゆえ、「こんなにしんどいのは、自分のがんばりが足りないからだ」=依存している、と自分を見てしまいがちです。

そうすると、いまの自分にとって必要なアプローチと、真逆のものを採用してしまう異なります。

それは、風邪をひいて熱があるのに、健康にいいからとジムでハードワークをするようなものかもしれません。

良薬は口に苦し?

これは、「自分にとって理解しやすいアプローチの言葉に惹かれやすい」ことが、一つの要因として挙げられます。

「依存」の状態にいる人は、「がんばらなくてもいいよ」「そのままでいいよ」「誰かを頼るのも大事」という言葉に惹かれやすいものです。

だって、自分では何もできない(と思い込んでいる)わけですから、そうした言葉はストンと入ってきます。

その逆に、「自立」の状態にいる人は、「まずは自分から」「がんばって」「あなたならもっとがんばれる」という言葉に惹かれるものです。

自分一人でがんばることを積み重ねてきた分、「もっとやれる」「まだできる」という言葉の方が、自分にとっておさまりがいいわけです。

もちろん、「がんばらなくてもいいよ」も「あなたならできる」も、何一つ間違っているわけではないのです。

しかし、それが「いまの」自分にとって本当に必要な言葉かどうかは、分からないわけです。

自分にとって受け入れ難い、それはイヤ、と感じることのなかに、いまのしんどさを抜けだすヒントがあったりするものです。

このあたり、「良薬は口に苦し」ということわざと、近いものがあるのかもしれません。

3.分かったようで、分からないのが自分

「依存」と「自立」。

真逆の状態なようでいて、自分自身がそのどちらにいるのかを、正確に判断するのは難しいものです。

もちろん、それに限った話ではないですが、それくらい自分自身を客観視するのは難しいものです。

分かったようでいて、分からないのが自分なのかもしれません。

だから、「鏡」というものがあり、そして「他人」が存在するのでしょう。

周りの人は、鏡と同じように、正確に自分自身を映し出してくれます。

周りの人に、何を見るのか。

それが、自分自身を知るための一つの方法になります。

カウンセリングもまた、「鏡」のようなものといえます。

それは、自分自身を映し出す「鏡」であるからです。

そんなカウンセリングを、ご提供していきたいと考えております。

今日は、「自立」と「依存」のお話から、自分自身を知ることの難しさについて、お伝えしました。

ここまでお読みくださり、ありがとうございました。

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