自分自身のことを客観視することは、なかなかに難しいものです。
「自立」的な人ほど、自分が「依存」の状態にあると感じ、「依存」的な人ほど、自分を「自立」にいると感じる傾向にあります。
それぞれに必要なアプローチは真逆なので、ここを見誤らないようにしたいものです。
1.必要なアプローチが異なる「依存」と「自立」
心の成長プロセス
ここで、最近ずっとお伝えしている「依存」と「自立」。
人は「依存」の状態からはじまり、「自立」へと向かい、そして「相互依存」に至るという、私たちの心の成長モデルの一つです。
「依存」とは、自分では何もできないため、誰かに何とかしもらいたい、という主導権がない状態です。
そのため、自分には価値がないと感じやすく、また満たされない不満から周りを責めやすくなります。
その反対に「自立」とは、他人に頼るのをやめて、何でも自分でやろうとしている状態といえます。
それゆえに、孤立や孤独を抱えやすく、また自分のルールややり方にこだわり過ぎるあまり、周囲との対立や葛藤が起きやすくなります。
そのどちらがよくて、どちらが悪い、というわけではありません。
そのいずれも、誰もが通る成長のプロセスです。
しかし、それぞれのステージにおいて、必要なアプローチというものがあります。
「依存」では「がんばる」しかない
「依存」においては、自分自身でやってみる、がんばることが必要になります。
生まれたばかりの赤ちゃんが、自分の足で立って歩くことを考えてみても、誰かが代わってあげることもできませんよね。
「依存」が辛いのは、「自分ではどうにもできないけれど、誰も私に与えてくれない」というしんどさです。
どうしたって、そうした「依存」のしんどい状態から抜けだすには、自分自身の力で「がんばる」ことが必要になります。
そこには、地道な練習だったり、反復訓練だったり、チャレンジすることだったり、そういったことが必要になります。
自分のできることを、一つずつ、一つずつ、増やしていく。
それが自信となり、はじめて「自立」へと向かうことができます。
ここで、よく聞く「がんばらなくてもいい」というような、耳障りのよいフレーズを採用してしまうと、「依存」から抜けだすことは難しくなります。
「自立」では委ねる、受けとる、傷を癒すなどのアプローチが必要
さて、「自立」では、その反対のアプローチが必要になります。
「自立」のしんどさは、先に書いたように、まわりとのつながりが切れてしまう孤独感、そして自分の正しさが周りと衝突して、常に争わないといけないことにあります。
何度も書きますが、自分一人でがんばってきたからこそ、その状態に至ったわけですから、決してそれが悪いことでもありません。
「自立」の先の「相互依存」とは、自分でできることは自分でする、自分でできないことは誰かを頼るという、「ともに生きる」ステージです。
そこに進むためには、自分でできないことを、誰かに頼る、委ねる、任せる、というアプローチが必要になります。
いままで、自分一人でがんばってきた方向とは、違うやり方が必要になるわけです。
そうするためには、自分自身の価値を受けとることも必要になるでしょう。
また、「自立」に至るきっかけとなった、「依存」時代の心の傷や痛みなどに向き合うことも、非常に重要になってきます。
はい、まさに「言うは易く行うは難し」です笑
だって、「自立」の人にとっては、自分一人でがんばった方が簡単だし、楽だと感じるものですから。
しかし、「自立」を深めるほどに、もうその方向では、にっちもさっちもいかない状況になってしまうものです。
カウンセリングで扱う多くのテーマも、この「自立」の問題と深く関係しています。
2.自分がどちらなのかを見極めるのは難しい
自分の状態を見誤る理由
「依存」と「自立」、それぞれで必要なアプローチが真逆になります。
しかし、ここで一つ問題があります。
自分が「依存」の状態にあるのか、「自立」の状態にあるのか、それを見極めるのは難しい面がある、という問題です。
「依存」の人は、自分自身を「自立」していると感じることが多いものです。
その逆に、「自立」の人は、自分が「依存」の状態にあると感じるものです。
なぜか。
「依存」の状態にあると、周りになんとかしてほしいわけですから、他責思考になります。
それゆえ、「自分はがんばっているし、悪くないんだ」と考えやすくなります。
そうすると、ますます「依存」の沼から抜け出せなくなってしまいます。
一方で、「自立」の人は、自分がもっとやらないと、という自責の傾向が強くなります。
それゆえ、「こんなにしんどいのは、自分のがんばりが足りないからだ」=依存している、と自分を見てしまいがちです。
そうすると、いまの自分にとって必要なアプローチと、真逆のものを採用してしまう異なります。
それは、風邪をひいて熱があるのに、健康にいいからとジムでハードワークをするようなものかもしれません。
良薬は口に苦し?
これは、「自分にとって理解しやすいアプローチの言葉に惹かれやすい」ことが、一つの要因として挙げられます。
「依存」の状態にいる人は、「がんばらなくてもいいよ」「そのままでいいよ」「誰かを頼るのも大事」という言葉に惹かれやすいものです。
だって、自分では何もできない(と思い込んでいる)わけですから、そうした言葉はストンと入ってきます。
その逆に、「自立」の状態にいる人は、「まずは自分から」「がんばって」「あなたならもっとがんばれる」という言葉に惹かれるものです。
自分一人でがんばることを積み重ねてきた分、「もっとやれる」「まだできる」という言葉の方が、自分にとっておさまりがいいわけです。
もちろん、「がんばらなくてもいいよ」も「あなたならできる」も、何一つ間違っているわけではないのです。
しかし、それが「いまの」自分にとって本当に必要な言葉かどうかは、分からないわけです。
自分にとって受け入れ難い、それはイヤ、と感じることのなかに、いまのしんどさを抜けだすヒントがあったりするものです。
このあたり、「良薬は口に苦し」ということわざと、近いものがあるのかもしれません。
3.分かったようで、分からないのが自分
「依存」と「自立」。
真逆の状態なようでいて、自分自身がそのどちらにいるのかを、正確に判断するのは難しいものです。
もちろん、それに限った話ではないですが、それくらい自分自身を客観視するのは難しいものです。
分かったようでいて、分からないのが自分なのかもしれません。
だから、「鏡」というものがあり、そして「他人」が存在するのでしょう。
周りの人は、鏡と同じように、正確に自分自身を映し出してくれます。
周りの人に、何を見るのか。
それが、自分自身を知るための一つの方法になります。
カウンセリングもまた、「鏡」のようなものといえます。
それは、自分自身を映し出す「鏡」であるからです。
そんなカウンセリングを、ご提供していきたいと考えております。
今日は、「自立」と「依存」のお話から、自分自身を知ることの難しさについて、お伝えしました。
ここまでお読みくださり、ありがとうございました。
〇大嵜直人のカウンセリングの詳細・お申込みはこちらからどうぞ。
※ただいま5月度の個人カウンセリングを募集中となります。
〇カウンセリングのご感想のまとめはこちら。