秋のマイル戦線の頂上決戦、マイルチャンピオンシップ。
昨年に続いて、改装中の京都競馬場に代わって阪神競馬場での開催。
仁川のマイルを舞台に、GⅠ馬5頭を含む17頭の精鋭たちが集う。
前日の夜半から当日の朝まで断続的に降雨があり、朝は稍重発表だったものの、徐々に乾いて午後からは良馬場での開催となった。
ただ、エリザベス女王杯のあった前週までではないものの、内よりも外が伸びる馬場のようには見えた。
1.出走馬概要
混戦模様に、オッズも直前まで揺れた。
最終的に1番人気に支持されたのは、シュネルマイスターとクリストフ・ルメール騎手。
昨年のNHKマイルカップを制してから、古馬混合のマイルGⅠで2着2回、3着1回とマイルでの実力は当代屈指。
今年と同じく、阪神で開催された昨年のマイルチャンピオンシップでもグランアレグリアの2着と、コース実績も十分。
前走は初のスプリント戦のスプリンターズステークスに挑戦するも9着と崩れたが、ルメール騎手とともに巻き返しを狙う。
それに続く2番人気に支持されたのは、「白き女王」ソダシと吉田隼人騎手。
中距離、ダートなど精力的に挑戦を続ける女王だが、芝のマイルは4戦無敗とまさに絶好の条件。
2歳女王、そして桜の女王に輝いた仁川のマイルで、三度輝きを見せるか。
さらには、前走GⅡ毎日王冠で2年ぶりの勝利を挙げたサリオスが3番人気。
オグリキャップ以来となる毎日王冠2勝から、復活の狼煙を上げるか。
鞍上は来日中の名手、ライアン・ムーア騎手。
充実の4歳、ソウルラッシュと松山弘平騎手も、虎視眈々。
一気の4連勝のあとの安田記念で崩れたものの、前走のGⅡ富士ステークスで2着と復調、GⅠ初戴冠に挑む。
今年のNHKマイルカップを制したダノンスコーピオンは、川田将雅騎手とともにマイル戦線統一を狙う。
前走GⅡ富士ステークス3着を叩いて、この本番に挑む。
前哨戦GⅡ富士ステークスを制したのが、セリフォス。
春のNHKマイルカップではダノンスコーピオンに屈したものの、秋の初戦で見事に逆転。
2歳から一貫して使われてきたマイル戦で、大輪の花を咲かせるか。
鞍上は、ダミアン・レーン騎手。
さらには、ホープフルステークス勝ちの実績のあるダノンザキッド、マイル戦で堅実無比の走りを見せるジャスティンカフェ、あるいは3連勝でGⅢ関屋記念を制して挑むウインカーネリアンなど、当代の一流マイラー17頭が、仁川を舞台にそのスピードを競う。
2.レース概況
ウインカーネリアンがゲート内であおるも、絶妙のタイミングでゲートが開いて出遅れず。
不利なく揃ったスタートになったことは、スターターの方の技術と集中力の高さの賜物か。
そのスタートから、そのウインカーネリアン、ロータスランド、ピースオブエイトあたりが先頭を窺う。
真っ白な馬体のソダシも、好枠から行き脚よく好位を確保。
その後ろにダノンザキッド、ダノンスコーピオンの「ダノン」2頭が追走、その間からシュネルマイスター、さらに後方内目にはサリオス。
上位人気馬がある程度ポジションを取って固まるが、セリフォスとジャスティンカフェは後方から進める展開。
先頭からシンガリまで、ほとんど一団となって進む展開に、動いたのはファルコニア。
池添謙一騎手が、外目から先頭まで押し上げる。
ファルコニアが先頭で800m通過46秒6は、メンバーを考えるとややスローペースか。
後続も差を詰め、各馬仕掛けに入って4コーナーを回り直線へ。
先頭はファルコニア、内へ進路を取ったマテンロウオリオン、ウインカーネリアン。
ソダシは馬場の真ん中、その後ろの「ダノン」2頭は少し進路が狭いか。
もう一段後ろからシュネルマイスター、大外に回ったセリフォス。
逃げ粘るファルコニア、残り200mを切っても各馬横一線に広がっての大混戦。
内からウインカーネリアン、中からソダシの白い馬体が伸び、それにダノンザキッド、ソウルラッシュが食い下がる。
しかし、一閃。
外からセリフォス。
明らかに違う脚色で、内を進む各馬を撫で斬りにした。
ゴール前は、流す余裕まで見せて、セリフォス1着。
2着にはダノンザキッド、際どい3着争いはソダシが制した。
勝ちタイム1分32秒5。
セリフォスが、前走GⅡ富士ステークスに続いて、マイル戦線を重賞連勝で統一した。
3.レース後の戦評
1着、セリフォス。
デビューからこのマイルチャンピオンシップまで、出走したレース8戦はすべて1600m。
陣営が生粋のマイラーとして育ててきた逸材が、ついにここで大輪の花を咲かせた。
同馬のマイル適性に、陣営はどこまでも深い信頼があったのだろう。
レース前に招待を受けていた、香港国際競走への出走は辞退。
このレースにすべてを懸けた仕上げは、上り3ハロン33秒ジャストという究極ともいえる末脚となって結実した。
古馬を向こうに回し、スローペースの展開を大外から見事に差し切ったその末脚は、驚愕の一言。
折り合いに専念し、外差し馬場を最大限に活かした、名手・レーン騎手の手綱も見事。
そのレーン騎手にとっては、リスグラシューで制した2019年の有馬記念以来となる、JRA・GⅠ勝利となった。
同馬は6月の安田記念でも4着に入るなど、早くからそのマイル適性の高さは際立っていたが、夏を越しての充実ぶりは、多くの人の予想をはるかに超えたものだったのではないか。
先日の天皇賞・秋をイクイノックスが制したように、レベルが高いといわれる今年の3歳世代だが、短距離戦線でもその存在感を示した。
父・ダイワメジャーの産駒は、世代限定のマイル戦で無類の強さを誇るが、古馬混合GⅠの勝利は2014年高松宮記念のコパノリチャード以来となる。
そして、このセリフォスの勝利で、ダイワメジャーとのマイルチャンピオンシップ親仔制覇の偉業ともなった。
また、これで中内田師は初めての古馬GⅠ勝利。
今年も好調の中内田厩舎とともに、新たなマイル王の今後から目が離せない。
2着、ダノンザキッド。
2019年のホープフルステークス以来、勝利から遠ざかっていたが、ここで復調気配の2着入線。
勝ち馬の末脚には屈したが、まるでハンデ戦のような横一線の追い比べを制した価値は高い。
大怪我から復帰した鞍上・北村友一騎手にとっては、1年7か月ぶりのGⅠ騎乗となったが、見事に大舞台での存在感を示した。
人馬ともに「復活」の狼煙となる2着となったが、次は久々の勝利を楽しみにしたい。
3着、ソダシ。
終始目標にされる厳しい展開だったが、最後に3着争いを制して底力を示した。
マイルが適距離のようには見えたが、一線級の牡馬を相手に勝ち切るまでは厳しかったか。
稀代のアイドルホース、次はどこへ向かうのだろうか。
その純白の馬体を躍らせる走りが見られることを、楽しみにしたい。
1番人気のシュネルマイスターは、直線伸び切れず。
仕掛けのタイミングで、武豊騎手のエアロロノアに進路を締められワンテンポ遅れたことも響いたか。
次走での巻き返しを期待したい。
デビュー以来、揺らぐことのなかったマイル適性への信頼。
初志貫徹、GⅠの厚い壁をも貫いた。
2022年マイルチャンピオンシップ、セリフォスが制す。
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