「自立」の行き着く先は、「デッドゾーン」とよばれる燃え尽き、乾いた場所です。
しかしそこは同時に、新しい自分と出逢うことのできる場所でもあるのです。
1.「祈り」の効用
昨日の記事では、「祈り」の効用、というテーマでお伝えしました。
「自立」の行き着く先、というお話の流れからですね。
私たちの心は、「依存」から「自立」、そして「相互依存」へとその成長のプロセスをたどります。
自分では何もできないという「依存」から、なんでも自分一人でやろうとする「自立」へ、そして誰かとともに生きるという「相互依存」へと至ります。
それは誰もが通る道であり、また不可逆な道でもあります。
そして、「依存」から「自立」、そして「自立」から「相互依存」に至るには、それまでの観念や行動様式を変えていく必要があります。
このなかの「自立」を手放すのが、いろいろな困難を伴います。
「自立」とは、自分一人の力でなんでもやっていくというスタンスですので、それを任せる、委ねる、受けとるといったことに価値を見いだすのは、難しかったりするのです。
また、「自立」の人を駆り立てるのは、誰かと競おうとする競争性だったりしますので、それが「相互依存」へと至るのを阻んだりもします。
こうした「自立」を手放していくとき、「祈り」というものはとても有効だったりする、というのが昨日のテーマでした。
自分のできるところまでやったら、あとは自分以外の存在に祈る、委ねる。
そういった感覚が、「自立」しすぎた私たちを癒してくれるものです。
逆にいえば、自分の力ではどうしようもないと感じるようなとき、それは私たちが「自立」を手放しなさい、と言われているのかもしれません。
2.傍から見る成功とデッドゾーン
さて、今日は「自立」の極北というか、最終段階ともいえる「デッドゾーン」について、少し詳しく見てみたいと思います。
デッドゾーンとは、「自立」の段階で自分ができることをやり尽くしたと感じる状態です。
そこでは、無気力というか、無感動になっていて、死んだように生気のない状態だったりします。
「そうすべきこと」や「自分の役割からしないといけないこと」を毎日こなすばかりで、自分が何かを選択したり、やりたいことをしているという感覚は一切ありません。
自分が燃え尽きた灰のように感じ、そのまま消えてしまった方が楽になるのではないか、と感じることすらあります。
ここで注意したいのは、このデッドゾーンは、その人以外の傍から見ていても、分からないことがある、という点です。
仕事も順調で、家庭も円満で成功しているように見える人。
あるいは、周りにたくさんの友人がいて、とても信頼されているように見える人。
そのように見えたとしても、その人の心の内面では、乾いた風が吹くばかりで、何の充実感もなかったりするのです。
周りの人には微笑みとともに接しているかもしれませんが、いつもひどい疲労を感じていて、このまま消えたら楽なのかなぁ、と感じたりもします。
けれども、そんなことを思ってはいけないと、自分に課されたタスクと、与えられた役割を日々こなしていく…そんな状態が、デッドゾーンです。
もし、これを読んでいて思いあたる節があるようでしたら、あなた自身もデッドゾーンに近いのかもしれません。
3.古い自分の死と、新しい自分の誕生
以前にもお書きしましたが、こうした「デッドゾーン」の状態になることは、決して悪いことではありません。
本人にとって、しんどいはしんどいんですが、だからといって「デッドゾーン」になったことが悪いことでも、なんでもありません。
むしろ、「デッドゾーン」とは、私たちが「相互依存」へと至るための通過儀礼のような側面もあります。
だから、もし先ほどの「デッドゾーン」に当てはまったとしても、決して自分を責める必要もありませんし、むしろ「いやぁ、ようやくここまで来たか。よくがんばってきたよな」と、自分を褒めてあげるくらいで、ちょうどいいのでしょう。
「デッドゾーン」に至ると、「消えてしまった方が楽かもしれない」と感じると、先ほどお書きしました。
そこでは、いろんなことが終わりに向かうこともあります。
パートナーシップや人間関係であれば、別れ。
仕事であれば、勤めていた会社を辞める。
夢や目標であれば、それをあきらめる。
そうした、何かをやめたり、別れたりするタイミングが、「デッドゾーン」において訪れることもあります。
けれども、それは新しい関係性が生まれるチャンスでもあります。
ちょうど、もっとも太陽の力が弱まる冬至にこそ、反転と再生の力が宿るように。
新たな誕生とは、死と最も近い場所にあるものです。
「デッドゾーン」とは、古い自分の死と、そして新たな自分が交差する場所でもあるのです。
今日は、「デッドゾーン」とは、古い自分の死と新しい自分の誕生が交差するところ、というテーマでお伝えしました。
ここまでお読みくださり、ありがとうございました。
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