久しぶりの雨ですが、お加減はいかがでしょうか。
まだ暑い日が続きますので、少しさらっと食べられる麺類が重宝しますね。
さて、麺類といえば出汁が命。
今日はそんな出汁にまつわるテーマを。
あの方の出汁をとった味噌汁は、子どもたちの飲みっぷりがいい。
子どもの舌は本当に敏感だ。
絵描きの街、美しい志摩の波切の空の空気を吸って燻された鰹節。あの方のように実直な味がして、クマさんみたいな大きな身体を小さく丸めて優しいオーラで接客されていたのを思い出す。人としての度量が大きな方ほど、必要以上に自分を大きく見せないように思える。
もう十数年も前のこと、食事をご一緒させて頂いた。若輩が話すのを否定も諭しもせず、楽しそうに聞いて頂いた。
あれから少し歳を重ねて、それがいかに難しく、なかなか出来ない事だったんだなと痛感している。
帰りしなに、
「もしこれから迷うことがあったら、自分の生まれた土地を知り、あなたのルーツを探ってみなさい」
と仰って頂いた。
酒の飲み方も知らず(今もか・・・)、いつものように深酒して酔っ払っていたけれど、その金言は不思議と墓参りに行く度に思い起こされる。
私のルーツはなんだろう?
連綿と続く生の中で、私がこの時代とこの場所で生まれてきた意味は何だろう?
私は何のために、何をするために生まれてきたのか?
きっとあの方も、ある時その問いにぶつかり、答えを出したのだと勝手に思っている。
ありがたいご縁に感謝しています。
2017.6.16
そのお方、天白幸明さん。
経営しておられる「かつおの天ぱく」はこちらです。
かつおの天ぱく | 伊勢志摩波切から鰹節をお届けします。| かつおぶしのまるてん有限会社
風光明媚な三重県志摩市大王町で、昔ながらの製法でいぶしがつお「波切節(なきりぶし)」をつくっておられます。その鰹節は香り高い中にも、実直で優しい味がします。
「花鰹」はそれを冷奴にたっぷり乗せて醤油、生姜、ねぎを少々あわせるだけで、もう冷酒のアテには最高ですし、「香り一番」や「旨味自慢万能便利」といっただしパックを使えば短時間で本格的な出汁が取れます。また少し変わったところでは、「食べる鰹節」。サラダにサンドイッチに、はたまたそのままおつまみに。
さてその天白さんとは、奥様とともに仕事のご縁でお世話になりました。奥様ともども、若輩者だった私にも誰に対しても、優しい笑顔で丁寧に接しておられました。
単に腰が低いというわけではなく、接する一人一人を尊重し、大切にされておられました。それはおそらく、ご自身の仕事と商品に愛情と自信がある分だけ、周りにも同じように接することができるように思えます。自信がある分だけ、周りと比較したり、卑下したり、尊大になったりせずに、対等な関係が築けるように思うのです。
「自分のルーツを探りなさい」
今も私の胸に刺さる問いかけです。
もうこれからは遠慮することなく自分の人生を歩こう。
そう思ったときに、「自分のルーツ」と「何をしに生まれてきたのか」は、少し中二病に聞こえはしますが、やはり大きな問いかけになります。連綿と過去から未来へと続く歴史の縦軸と、地理的な横軸の交わる点に、自らを置く作業と言ってもいいのかもしれません。
さて、お客さまのルーツは何でしょうか。
何をするためにこの世に生まれることを選んだのでしょうか。
お出かけシーズンです。風光明媚な絵描きの街の「いぶし小屋」を見学しながら、そんなもの思いにふけるのもいいかもしれません。お伊勢さんも近いですから。
どうぞ、ごゆっくりお楽しみください。