「こっぷがつくりたい!」という息子のご要望により、近場で作陶体験ができる愛知県陶磁美術館を訪れた。
久しぶりに触る粘土は、芸術家心を目覚めさせる素晴らしい体験だった。
ここのところ、「The Artist's Way(邦題:ずっとやりたかったことを、やりないさい。)」の中で取り組んでいるワークの中で、「アーティスト・デート」というものがある。
自分の中の幼いアーティストを喜ばせるために時間を取りましょう、というワークであり、本来一人で行うワークなのだが、まあこの作陶体験もその一部ということにしてしまおう。
やはり、必要なものは必要なときに与えられるようだ。
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自宅から車を走らせ、現地へやってきた。
車以外では、地下鉄東山線「藤が丘」駅からリニモに乗り換え「陶磁資料館南」下車か、名鉄瀬戸線の終点「尾張瀬戸」から名鉄バスか、というちょっと市街地からは離れたロケーション。
その昔、「瀬戸物」と呼ばれた焼物ゆかりの地なのだろう。
おかげで、まわりは晩秋を感じさせる山々に囲まれて風情たっぷりだった。
この日も抜けるような青空。
晩秋らしく、外の風は少し冷たい。
メインの本館などと別で建てられている「作陶館」へ。
それにしてもいい天気で、歩いていて気持ちがいい。
入場料と材料代(粘土代)を支払って、作陶の基本のキの講義を受ける。
作陶に使う道具と、作陶台、そして手前が材料の粘土。
初心者でも扱いやすいといわれる、やわらかい「白土」を選んだ。
もう一つ「赤土」もあり、こちらは塗れる釉薬が異なるので仕上がりの色が違ってくる。
この説明をしてくれたおじさんの手があまりにも見事で、見惚れているうちに説明が終わってしまった。
スマホで動画撮影しておけばよかった。
かろうじて覚えている最初の工程。
材料を1/4に分けて、土台として作陶台に置く。
ちなみにこの日の私はお茶碗づくりを目指している。
これは接着剤の役目を果たす、泥。
先ほどの材料と同じ素材を水でゆるめたもの。
残りの材料から適量を筒状(蛇のような形)にして、土台の上に巻く。
泥を使ってつなぎ目をこすったりして成形していく。
これがなかなか難しい。
苦戦しながらの同じ工程2回目。
軽く何かに似ている気がしますが、気にしないことにする。
同じ工程の3工程目。
だいぶ筒状になってきた。
へらを使って、内側の面をならしていく。
これが思いのほか難しく、作陶台を回転させながらへらで擦って表面を滑らかにするのだが、何度やり直しても納得の出来栄えにはならず。
その後、外側の面をならしていき、さらに端の部分を糸のこぎりのような道具で平らにして、裏返して底面の形を整える。
仕上げに外側に装飾などを入れて、完成。
途中の写真が大幅に抜けているのは、指導員のゴッドハンドに手伝ってもらったからである。
そして完成したお茶碗。
いびつなのはご愛嬌。
少し大きめのような気もするが、焼くと縮むらしいので、これくらいでどうだろうか。
最後に作品番号を底面に書いて、釉薬の種類を指定して終了。
この茶碗には、深緑の「織部」の釉薬を選んでみた。
焼き上がりは1か月後。
どんな出来栄えになっているか、いまから楽しみである。
さて、敷地内ではお抹茶が頂ける茶室があり、せっかくなのでそこも訪れてみた。
静かな敷地内、日本式の建築が映える。
もう一部の木々はこんなにも赤く色づいていた。
燃え盛るような赤。
もう少ししたら、紅葉もピークだろうか。
庵の中の茶室。
まったりと落ち着く。
こういった一輪挿しに美を感じる、茶の湯の宇宙はすごいものだ。
うまく撮影できなかったが、障子に映る格子の影もまた演出なのだろう。
美しい。
久しぶり上生を頂く。
秋らしい上生、落ち着くこしあんの控えめの甘さ。
先ほどまで粘土をこねていただけに、お椀にも目が行く。
この空間に溶け込んでいる。
それにしても、歩いていて気持ちがいい。
抜けるような青空、色づき始めた山の木々。
今日も世界は美しい。
敷地内には、昔の焼き窯の遺跡が。
説明を読むと、最も古いもので平安時代から使われていた窯があるそう。
そうしたものを実際に見て、触れてみると、焼物をさわるときにも感謝の念が浮かびそうである。
また作品の引き取りとともに、作陶体験をしてみたいと思う、晩秋の一日だった。