半年ぶりに東京は東新宿の「倉乃介」さんの暖簾をくぐることができたので、その訪問記を。
以前のエントリーはこちら。
感想戦を黙らせる味 ~東京・「東新宿 炭火割烹 倉乃介 発酵と熟成の幸」 訪問記 - 大嵜 直人のブログ
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この日は午前中仕事をしたあと、名古屋から新幹線に飛び乗り、品川~渋谷~東新宿まで移動する行程だった。
久しぶりに訪れる渋谷は相変わらず賑やかで脂っこかったが、JRから地下鉄への乗り換え口が改修されてずいぶんと変わっていた。
下宿していた時代に東横線を使っていたが、東横線の渋谷駅はいまでは地下になったと聞いた。
この日はその地下の東横線渋谷駅を通ることはなかったが、ずいぶんと変わるものだ。
それにしても、東京近辺の地下鉄・JR・私鉄の相互乗り入れは半端ではない。
どこで乗り換えても、行き先に見慣れない地名が表示され、合っているのか不安になる。
確実にスマホの乗り換え案内がなければ、迷う自信がある。
そんなことを思いながら、大江戸線の東新宿に着く。
大江戸線のホームの深さといったら、名古屋の地下鉄の優に3倍くらいはあるのではないかといつも思う。
そんなことを思いながら歩いていくと、方向音痴のケがある私にしてはめずらしく、半年前に通った道を覚えていたようで、すんなりとこの道へたどり着いた。
行燈のやわらかな光。
これだけでもうすでに酒が飲めそうだ。
今日も飲まないけど。
暖簾をくぐると、大将が笑顔で迎えて頂いた。
店内を見ると、まだ旧友たちは来ていないようだ。
一番遠い人間が、一番早く来る。
得てしてそんなものだ。
旧友たちを待つ間、メニューを見てニタニタしながら時間を過ごす。
遠足は行くまでが一番楽しいように、この時間が最も楽しいのかもしれない。
一人来たので、とりあえず乾杯。
旧友は生ビール、私はフルーツビネガーをお願いした。
この日は柚子のビネガーのようで、これが抜群に美味しかった。
甘味と酸味が絶妙のバランスで、食欲をかきたててくれた。
一皿目、鱈と白子の湯豆腐仕立て。
料理の前に、箸置きが素敵すぎる。
透き通るようなスープを一口すすり、幸せを噛み締める。
魚の旨味、そしてほんのわずかに香る出汁。
鱈の身を口に含み、またスープをすする。
白子の濃厚な味にたまらず眉間に皺を寄せ、その余韻をまたスープで流す。
冬が、やってくる。
そんなことしみじみ感じさせてくれる味。
実家から直送されてきた野菜の盛り合わせ。
南瓜、薩摩芋、紫芋・・・どれも火の通し方が素敵すぎる。
シンプルな岩塩の味付けに、にんにくチップスがアクセント。
頂いていると、「滋味」という言葉が脳裏に浮かぶ。
今日のお楽しみ、熟成されたお造りたち。
さわら、しまあじ、そしてひらめのあん肝巻き。
これを岩塩、わさび、そして特製の柚子胡椒で。
どれを食べても眉間に皺を寄せて、美味い、しか言わなボギャブラリーの少ない男たちになってしまった。
それにしても、ひらめのあん肝巻きと柚子胡椒は絶品だった。
生ししゃもの天ぷら。
胸ビレが立っているところが、セクシーすぎる。
天ぷらは1秒でも早く食べるに限るので、すぐに頂く。
ほろほろと崩れる身の柔らかさに感動する。
銀だらの西京焼きと海宝漬。
子どものころ「さいきょうやき」と聞いて、「なにが最強なの?」と思っていた(埼京線と同じだ)が、ようやくそれが分かった気がした。
西京焼き、最強。
銀だらの脂と、白味噌のコクと・・・
そして何より、この海宝漬。
これは反則だ。
いまここで断酒を破ろうかとの誘惑が頭をよぎったほど、美味しかった。
ラム肉の朴葉味噌。
朴葉味噌は食べたことがあったが、ラム肉で食べるのは初めてだった。
まったく臭みがなく、味噌と朴葉の香りにこの期に及んで食欲を刺激される。
〆は焼き鯛おにぎり、お好みで出汁をかけて。
おひとつどうぞ。
あいや、これはきょうしゅくです。
のみすぎてしまいますな・・・
そんな遊びをしながら、あっという間に平らげてしまった。
焼きおにぎり・・・
鯛茶漬け・・・
あぁ、日本に生まれてよかった。
そんな幸せを噛み締める、「倉乃介」さん再訪だった。
惜しむらくは、旧友はこのお店にすぐに通える距離に住んでいるという事実に、メンヘラのように嫉妬したことぐらいだろうか。
東京都民がクソうらやましい。
そんなことを思いながら更けていく、楽しい夜だった。
ごちそうさまでした。