大嵜直人のブログ

文筆家・心理カウンセラー。死別や失恋、挫折といった喪失感から、つながりと安心感を取り戻すお手伝いをしております。

旧き良き時代を越えて 〜日本橋髙島屋 訪問記

先日、久しぶりに日本橋髙島屋さんを訪れましたので、その訪問記を。

 

百貨店とショッピングモールの境界線があいまいになった昨今において、「これぞ百貨店!」の雰囲気が味わえる百貨店、その一つが日本橋髙島屋のように思います。

それは、すでにこの威厳のある外観から感じられます。

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ほぼ絶滅したといわれる東京の「山の手文化」。

一昔前の東京には、きっとこんな日本橋髙島屋ような洋風建築の外観も多く見られたと聞きます。
きっと明治の洋風建築と大正モダニズムが融合した稀有な都市空間が、きっと山の手線沿線には広がっていたのでしょう。

正面入り口のモニュメント。

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訪れたのは平日の昼間ということもあり、「山の手文化」からタイムスリップしてきたのではないかと思わせるような優雅な客層が多く見受けられます。

中には外商員と思わしき男性がアテンドしているマダムがいらっしゃったり。

うーん、世の中にはいろんな人がいるものだな、と店内の顧客を見ていても飽きません。

この歴史を感じる荘厳なエレベーター。 

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こちらも現在では絶滅危惧種の「エレベーターガール」もいらっしゃって、ホスピタリティあふれる接客をされておられます。

さて、そんな「ザ・百貨店!」の日本橋髙島屋さんですが、私が訪れると必ず買ってしまうものがあります。

それは、ケーキとパンです。

ケーキは世田谷・尾山台に店舗があります「オーボンヴュータン(AU BON VIEUX TEMPS)」さんのケーキ。
パティシエという職業が注目されるずっと以前から、日本の洋菓子界を牽引してこられた河田勝彦シェフのお店です。

フランスの伝統を大切にしたそのお菓子は多くのファンに愛され、そしてこのお店で修業して独立された有名店のシェフは数知れずという、王道中の王道を往く洋菓子の名店です。

この日はこの4つのケーキを。

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左から、
お酒の効いたフランボワーズのムースの「フランボワゼ」、
風味の素晴らしいレアチーズを使った「フロマージュ・クリュ」、
コーヒー風味のバタークリームのガナッシュが力強い定番、「オペラ」、
そしてホワイトチョコのムースにピスタチオのブリュレとフランボワーズのジュレが仕込まれた「パラディ」。

すべてがもう素晴らしく美味しいのですが、個人的にはこの「パラディ」に一番うっとりとやられてしまいました。

美しい断面に、フォークを入れて一口、口に含みます。

ホワイトチョコのミルキーな甘味から始まって、フランボワーズの酸味を経て、ピスタチオの香りが鼻を抜ける。

その余韻の中で、少し食感のあるホワイトチョコレートの羽をパリパリと噛むと、最初とはまた違った豊かな甘みの世界が広がります。

全てが計算し尽くされた、味覚の芸術。

毎回高島屋さんの有料サービスの保冷袋を買って、新幹線でケーキ箱を倒さないようにビールを我慢するくらい、持って帰りたくなるケーキです。

包装も、こんなに気品があってステキ。

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さて、もう一つのパンは同じく世田谷に店舗のある「シニフィアン・シニフィエ(Signifiant Signifie )」さんのパン。

以前に「パン・オ・ヴァン」という赤ワインとナッツ・ドライフルーツのパンを頂いてから、「こんなパンがあるんや・・・」と衝撃を受けてファンになりました。

この日は、その「パン・オ・バン」の1/4カットと、おすすめパンセットを。

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中央奥の黒いパンが、その「パン・オ・ヴァン」。

時計回りに、
マッシュポテトを練りこんだ生地に3種類の粒胡椒とカシューナッツを入れた「ピカン」、
メープルシュガーを入れた生地にオレンジピールを入れた「エラブル オランジュ」、
ライ麦を多く含んだ生地にひまわりやカボチャの種を練りこんだ、ドイツの定番の「メアコルンブロート」、
ハーブとオリーブオイルでマリネした2種類のオリーブを練りこんだ「パン オリーブ」。

もう、どれもがため息のでる味。

頂いたのは翌日の朝だったのですが、できることなら重めの赤ワインと一緒にエンドレスで楽しみたい。
そんな欲求を抑えきれないパン、と申し上げれば少し伝わりますでしょうか。

一つ一つの素材が織りなす、豊かな味わい。

パンとは、これほどまでに生命力にあふれた食べものだったとは・・・

そんな敬意とも畏怖ともいえない思いを抱く味でした。

 

さて、前述のAU BON VIEUX TEMPS(オーボンヴュータン)とは、フランス語で「旧き良き時代」を意味しますが、日本橋高島屋さんに来ると、いつもその単語が思い浮かぶのです。

旧き良き時代。

人によってその語の指す時代は異なるでしょうが、少なくとも私にとって日本橋高島屋さんがその語感を感じさせれてくれる百貨店であることは、間違いありません。

それはいつも購入するケーキとパンの美味しさから来るものかもしれませんし、足を運んでおられる客層なのかもしれませんし、そこで働いている方の笑顔なのかもしれません。

それは分かりませんが、また訪れた際にはそんな語感を感じされてくれる百貨店であることを願っているのは、私の身勝手でしょうか・・・

 

今日もお越しいただきまして、ありがとうございました。

天気はまた少し下り坂のようですね。

どうぞ、ごゆっくりお過ごしください。