「ここから、そしてこの日から、世界史の新しい時代が始まる」
時に1792年9月20日。
フランス革命軍とプロイセン軍が、フランス東北部にて激突した「ヴァルミーの戦い」が勃発した。
革命によって成されたフランスの国民軍が、王朝に仕える職業軍人のプロイセン軍を破ったこの戦いは、近代国民国家の勝利としての意義を持ち、それを目撃したドイツ人作家のゲーテを以てして、冒頭の名言を記したことで知られる。
ゲーテの言葉の通り、「ヴァルミーの戦い」はフランス革命を経て国民国家の時代の到来を告げる象徴的な出来事であった。
それまでの絶対君主制の国家から、近代国民国家への変遷。
だが、この「ヴァルミーの戦い」は実際には戦いらしい戦いはなく、小競り合いのような小規模の衝突ののちに、悪天候によりプロイセン軍が後退しただけであった、ということはよく知られている。
あくまで、それまでの国家の形態の常識であった絶対君主制の国家から、近代国民国家への変遷の端緒となったことに、意義があるとされる。
=
そんな歴史上の名言に想いを馳せる、秋立てる日。
陽中の陽たる夏至から、少しずつ陰に向かってきた季節が、はっきりと秋へと切り替わる日。
目の前に映るものは、表象でしかない。
熱風のような空気も、灼けるような陽射しも、紺碧の青空も、表層に過ぎない。
その根底では、マグマのように大きなうねりがうごめいている。
そして、目に映る外界の変化は、もう古い自分よりも新しい自分に変革することを、内面が求めたからなのかもしれない。
秋、立てる日に。
「ここから、そしてこの日から、 世界史の新しい時代が始まる」