黄色が、目に留まるようになってきた。
路傍の花の色に加えて、白く透明感のあった陽の光の色が、暖色を帯びてきた。
春の訪れ。
そう聞くと、こころはずむことを思い浮かべるが、やはり新しいことへの変化というのは面倒で、時に恐ろしいものだ。
冬の間の静かな眠りから起こされるのは、億劫なように。
それでも、ずっと眠っているわけにも、いかないのだろう。
出立の日の朝に、いつもの近くの神社へ。
陽の光は、どこかやさしく、あたりを包んでいた。
松葉杖をついた男性が、私の前に手を合わせていた。
どうも。
後ろで待っていた私に声をかけてくださった。
おはようございます、と私も声を返す。
私もまた、しばらく手を合わせていた。
玉砂利を踏む、男性のゆっくりとした足音が、遠ざかっていった。
出立の朝。
ここから、そしてこの日から、世界史の新たな時代が始まる。
ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ(1749-1832)、フランス革命軍が勝利したヴァルミーの戦いにて