人は18歳前後に聴いていた音楽を一生聴き続ける、という話がある。
一理あるようで、私も車の中に置いてあるCDは、その時期(高校生くらい)に聴いていた音楽が多い。
いまのご時世はWeb上でのストリーミングが主流で、CDなど買わないのかもしれないが、それでもこうして自分の好きだった音楽たちが「目に見える形」で「手に取る」ことができるのは喜ばしいことだと思う。
まあこう考えること自体が、「所有」から「共有」へと移り変わっていく時代の流れからすると遺物のような考えかもしれないのだが。
その一方で、CDは持っていなくても、18歳前後のころによく耳にして、たまに聴きたくなる曲というのもある。
デズリー(Des'ree)の「Life」もそんな曲だ。
堂本剛さんが主演したドラマの主題歌でヒットしたこの曲だが、Wiki先生で調べてみたら「Life」がヨーロッパでヒットしたのが1998年。そして日本でそのドラマ「to Heart ~恋して死にたい」が放映されたのが1999年。
やはり、1980年生まれの私にとっては、「一生聴き続ける音楽」を聴く時期に流れていたことになる。
私は昔からドラマをあまり見ない性質であったので、堂本剛さんのドラマは見てないかったのだが、この曲はなぜか耳に残っていた。
ちょうどそんなとき、この「Life」が収録されたアルバムを姉が持っていたので、借りたまま返していない。
どこかにそのアルバムがあったはずなのだが、見つけられないのでいつもネット上の動画サイトで聴いてしまう。
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印象的なイントロから始まる歌い出し。
透き通るような透明感のある歌声は、それでいて芯があって揺れない。
独特のリズム感と、韻を踏んだ歌詞の歌い回し。
なぜか当時聴いていたときは、同じ時期にヒットしていた宇多田ヒカルさんを重ね合わせていた。
怯えと大胆さ、希望と諦念、勇気と蛮勇、繊細さと図太さ・・・
一人の女性の中にある、そんな相反する矛盾の「あいだ」の何かを表現しているように感じる。
どうにももどかしいようで、それでいてサビのメロディを聴くと「それも人生さね」と割り切れてしまうような。
明るい曲調ではあるが、特に間奏に響くピアノの一音一音に、
街角の灯りの陰に隠したような「寂しさ」を感じて、切ない。
そんな相反する感情を、垣間見せてくれる。
その相反する矛盾こそが、曲名のとおり「Life」ということなのかもしれない。
それを表現したようなCメロの歌詞が好きだ。
もしも「ほんとうに」望みさえすれば、
「じつに」人生は喜びに満ちている。
この「 」の中を肚落ちさせるのがほんとうに難しいのだが、
それを理解していく過程ももまた、「Life」なのだろう。
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考えてみると、この「Life」を聴いていたころから、気づけば二倍近くも歳を重ねてきたようだ。
人生における季節も、だいぶ移り変わっていくのを眺めてきた。
春に観る桜の花も美しいものだが、
晩秋に観る燃えるような朱さもいいものだ。
その季節によって、同じ曲でも感じるものが異なってきて、趣深い。
人生の季節が移り替わっても、聴きたい曲。
私にとって、「Life」はそんな曲である。