さて、数えてみると断酒197日目である。
昨年の11月から酒を断ったが、気づけばすでに半年が経過していた。
早いものである。
不思議なことに、ここのところ「少しくらい、付き合ってくださいよ」というお誘いであったり、「ちょっと飲んでみたいなぁ」と思うことが増えた。
いろんなところの話を聞いていると、半年から1年くらいの期間が、スリップ(再飲酒)してしまうことが多いと聞いた。
「絶対にやめないといけない」という決意で断酒を始めたわけではないので、「飲んでしまったときはそのとき」くらいの緩さはあるのだが、それでも「いま飲んだら、美味しいんだろうなぁ」という想いと、「せっかくここまで来たのだから、断酒を継続して見られる風景をもっと見たい」という想いが、せめぎ合う。
人は生きる中でいろんな経験をするが、その反対の経験をすることはできない。
「喘息を患って息をするのも辛かった経験」と、
「喘息を患ったことがない経験」。
「子どもを育てた経験」と、
「子どもがいたことのない経験」。
「親を早くに亡くした経験」と、
「親とずっとに一緒に暮らしていた経験」。
いろんな経験があり、人はそれに優越をつけたがるが、どんな経験にもその中に良いも悪いも含んでいる。
だから、私はここで断酒について綴ることで、誰かに断酒を勧めようとしているわけでもないし、断酒だけが素晴らしいと思っているわけではなく、「ただ、私はこうだった」という経験を伝えたいだけだ。
ということで、今日は「断酒して半年が経過した私が」思う、断酒のいい点・悪い点・気づきを書き残しておこうと思う。
1.断酒のいい点
・感情、情緒が安定する。
お酒を飲んでストレス発散…は、私には思い込みだったようで、お酒を飲まなくなって変に気分が落ち込むことがなくなった。酔っ払うと、実際に感じている感情を冷凍してしまうような気がする。その解凍に時間がかかるように思うし、二日酔いなんかしてどんよりした朝を迎えると、それはさらにひどくなるようだ。
・睡眠の質が向上する。
ビールを飲み過ぎて夜中にトイレに起きることもなければ、深酒してるのになぜか夜明け前に目が覚めることもない。毎朝が、「夏休みに入った朝の小学生」の寝起きに近い。これは上の「感情の安定」に関係するように思う。私は寝不足が天敵のようで、寝不足の日はたいていロクな考えが浮かばない。
・夜の時間が長い。
何となく酒を入れて過ごしていた夜の時間が、別のこと、やりたいことに使える。惰性で何となく飲んでいた時間が、「主体的に」「自分のために」使えるようになった感がある。
・常に車が運転できる。
お酒を飲むと、その後の時間は「車を運転する」という選択肢はなくなるが、断酒をしていればいつでも車を運転できる。運転しない人にとっては関係ないが、これがけっこう便利なことがある。お店に車で行くこともできるし、飲み会の後にドライブしようと思えばできる。これが、けっこう便利なことがある。
2.断酒の悪い点
・素晴らしいお酒の「味」を知ることができない。
これは断酒の最大の代償だと感じる。飲んでいた時は、悪く言えば「酔えればいい」ような飲み方をしていたが、不思議なもので酒を断つと「お酒の味が知りたい」と感じるようになる矛盾。本当に、人間、失わないとその価値が分からないものだ。
・お酒を飲む相手に罪悪感を与えてしまう。
以前に私が鯨飲していたことを知っている人と会食をすると、「こちらだけ飲んで悪いね」と申し訳なさそうにされることが多い。全然、私の方は一緒に食事して話すだけで楽しいので、そんな罪悪感は要らないのだが…なかなか、この感覚は酒飲みには理解してもらうことが難しい。半年前の私に言っても、理解できなかっただろうしなぁ…
・太ってしまった。
太るのが悪いのかというのはさておき、お酒をやめた分が「甘いもの」に走ってしまい、お酒を飲んでいた頃より太ってしまった。これは一時的なものかもしれず、経過を見ていきたい。
3.断酒して気づいたこと
・お酒にかけていたお金は、不思議と別のところに消えていく。
お酒に費やしていたお金が浮いて、お金が貯まると思ったが、そうでもない。この点は、禁煙したときにも同様の事を感じた。結局、お金は出ていくものなのだから、自分の喜びのために使いたいと思う。
・お酒を飲まなくても、飲み会や会食は楽しめる。
むしろ、会話や雰囲気に集中できて楽しいとも思う。「飲まない飲み会など、楽しいはずがない」というのは、完全に私の思い込みだった。
・インスピレーションや気づきは、素面のときにこそ訪れる。
酔っ払うと、なんかいろいろ思いついたり、万能感を覚えることがあったように思うが、それもまた思い込みだった。
4.清濁併せ呑む覚悟
つらつらと書き出してみたが、断酒して半年の風景が、やがて一年になったとき、どう変わるのか、楽しみではある。
それは、断酒を解禁した一口目を想像するのと同じように楽しみである。
どんな選択も、良いことと悪いことは常に完璧にバランスを保っているように、私には思える。
言い換えれば、人生における選択でいつも人は迷うのだが、結局のところ、どの選択も等しいのかもしれない。
ただ、その選択をした責任を負う「覚悟」。
それさえあれば、どんな最悪の出来事も、どんな素晴らしい出来事も受け入れることができる。
断酒もまた然り。
飲む選択をしても、飲まない選択をしても、いいことも悪いこともある。
「ただ、その上で、私はこちらを選ぶ」
という選択ができればいいな、と思う。
それは断酒に限らず、なのだが。