大嵜直人のブログ

文筆家・心理カウンセラー。それでも、愛することを諦めきれないあなたへ。

アタシ、最近ほんとに休みの日は起きれないんですよ。と彼女は言った。

「金曜日ですね」

「ああ、金曜日だな。週末だ。」

「アタシ、週末になると悩みがあって」

「ほう、それはいいことだ」

「えー、なんでですか、イヤでしょ、悩むの」

「いや、悩むってことは、それだけ自分にとって大事なことでしょ。それは、人生という航路の指針を示してくれるもの。だから、悩みはコンパスだよ、コンパス」

「えー、そんなコンパスいらないです…それより、アタシ、最近ほんとに休みの日は起きれないんですよ」

「ほう。それは素晴らしいことだ」

「えー、イヤですよー。だって、金曜の夜は『明日はたまってる洗濯物を干して、ちょっとホコリの目立ってきた床を掃除して、引き出しに眠ってるちょっといい紅茶を淹れながら、ブランチなんか摂ったりして…そんで午後は出掛けてぶらぶらして、ちょっと疲れたら最近オープンしたカフェに入って、ぼんやり雑誌めくったりなんかして…』って想像するんですけど」

「けど?」

「起きたら、もう昼ご飯の時間も過ぎちゃってたりするんですよ。そんでショックを受けて、またふて寝ですよ。気づけばカラスが鳴くオレンジ色の空になって、すごく悲しくなって、結局そのまま近くのコンビニに行って、晩ご飯と甘いものを買って食べて、また寝ちゃうっていう」

「なるほど」

「で、先週は『やるぞ!』って気合い入れて起きたら、朝から雨ザーザーで。もう洗濯する気もなくなって、結局二度寝どころか、三度寝して結局同じになっちゃいました」

「『春眠暁を覚えず』って言うし、春は眠いもんだよ」

「いや、もう5月も半ばですよー?春なんかもう終わっちゃってますよ。それなのに眠いんです。何とかなりませんかね」

「んー、何とかしなきゃいけないのかなぁ」

「えー、アタシは何とかしたいですけど。眠りから覚めたときに、窓の外の薄暗くなってるのを見ると、なんかすごく損した気分でドヨーンってしちゃうんです。たくさんやりたいことあったのにー、って」

「ああ、学生時代によくあったな、1限の授業に起きれなくて、布団の中でウダウダしてたら2限も間に合わなくなって、とりあえず近くの牛丼屋で昼飯を食べてる間に、午後の授業もどうでもよくなってくる、みたいな」

「年がら年中、休みのような生活してる学生と一緒にしないでくださいよ。でも午前中に起きられるだけいいじゃないですか。アタシは夕方ですよ、ユウガタ」

「うーん、それってそんなにいけないことなのかなぁ」

「えー、だって、なんかイヤですよ」

「具体的に何がイヤなのかなぁ」

「え?何がって?…えーと、リア充な友達がアップするtiktokとかインスタとか見てると、アタシはダメ人間だなーとか思ったりするし、あとはやっぱり、自分がやりたかったことができなかったっていう後悔ですかね」

「別にインスタとか見なきゃいいじゃん」

「そうなんですけど、見ちゃうんですよね」

「まあ、実際そうだよね。熱湯風呂の前で『押すなよ?』って三回言われると押しちゃうように、『見ちゃダメ!』は見ちゃうよね。人間の脳は否定形を認識しないって言うし」

「何ですか?熱湯風呂って?」

「えっと、ダチョウ倶楽部っていう天才芸人がいて…詳しくはググっといて。まあいいや、どうしてもSNSやりたかったらtwitterでクソリプ飛ばすくらいにしといたら?」

「えー、そんなのイヤですー」

「それより、自分のやりたかったことができなかった後悔って言ってたけど、いつも休みの日に何がやりたいの?」

「え?さっき言ったじゃないですか。洗濯して掃除して、綺麗になってスッキリした部屋で、紅茶なんか淹れたいです」

「紅茶淹れて、それから?」

「ほっとして、のんびりしたいです、アタシ」

「他には?」

「そんで、気が向いたらお散歩に出て、ちょっとカフェに寄ってみたりなんかして」

「ほうほう、カフェに入ってから?」

「え?雑誌なんか見ながら、ゆっくりしたいです」 

「なるほど」

「ね、せっかくのお休みなのに、ずっと寝てるせいで何にもできなくて終わっていくの、イヤでしょ?」

「うーん、逆に見てみたら、結構できてるように思うけどなぁ」

「逆?」

「うん、逆。『ずっと寝てるから、やりたいことができない』んじゃなくて、『やりたいことを実現するために、ずっと寝てる』って考えてみたら、どうだろう」

「は?」

「だって、『のんびり』したくて、『ゆっくり』したいんでしょ?」

「は?…いや、それはそうなんですけど」

「できてんじゃん」

「そうなんですかねー?でも、ちょっと違うような気がするんですよねー」

「そのやりたいことを叶えるために、身体さんは『あえて』起きなかったとしたら?」

「だって、起きたら夕方って、なんか一日損した気分じゃないですか?」

「起きてることが正しいことだとするなら、きっとそれは自分の身体にも心にも必要なことだったんだよ。けっして損でも無駄でもないと思うけど、どうかなー」

「うーん…でも、やっぱりアタシはもうちょっと早く起きて、休日を満喫したいなぁ…」

「満喫できてんじゃん、すでに。夕方まで寝れるなんて、幸せだよ。眠りは最高の癒しって言うし。時が来れば、起きれるようになるよ」

「そうなんですかー?うーん、それじゃあ、あんまり深く考えないようにします。とりあえず、明日は起きれた時間から活動することにします!」

 「そうか、応援してる」

「あざす!」

「ちなみに明日は出勤日だけどな ꉂ (˃̶᷄‧̫ॢ ˂̶᷅๑ )