長月。
夜が徐々に長くなるから夜長月、そこから長月という説が有力らしい。
空を見上げれば、澄んだ色が広がる。
地に目を移せば、微かに咲いた花弁がしおれていた。
枯れる、長月。
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空を見上げることと、路傍の花を見つめることは似ている。
ともに、そこにある美を見つけようとする行為なのかもしれない。
それは、過去と未来の双方に引きちぎられそうな意識を、いまに引き戻してくれる。
それは、どこにも行かない。
どこにも、戻らない。
心が痛んでいるときに、たとえば将来が怖くて考えられないときや、過去が思い出すのもつらいとき、私は現在に注意を払うことを学んだ。
私が今いるこの瞬間は、つねに、私にとって唯一、安全な場所だった。
その瞬間瞬間は、かならず耐えられた。
今、この瞬間は、大丈夫なのだ。
私は息を吸い、吐いている。
そのことを悟った私は、それぞれの瞬間に美がないことはありえないと気づくようになった。
ジュリア・キャメロン著
「The Artist's Way(邦題:ずっとやりたかったことを、やりなさい)」より
創造性と痛みは、二重らせんのように。
ある痛みを感じることは、それを感じられたことを喜ぶべきなのだ。
不快な感情、ある種の痛み、震えるような怖れ…
それを感じられたことが、素晴らしい。
それは、恩恵であり、福音だ。
どんな痛みや怖れがあったとしても。
いま、この瞬間は過ぎていく。
葉月が暮れゆき、長月が訪うように。
枯れる、長月。