あれは小学生の頃だっただろうか。
小学校の図書館で見つけたのだと思う。
「世界のいろんな人たち」だったか、「ギネスブックの記録」だったか忘れたが、とにかく世界中のいろんな変わった人たちの記録が載った本があった。
漫画のような挿絵が半分入っていて、ずいぶんと読みやすかった記憶がある。
その本に出てくる偉人・変人の中で、私が興味を惹かれたのは「何年間も寝ない人」だった。
その人は、ロンドンだったかの都市に住んでいて、20年以上も寝ていないという。
何かの病気なのか、何なのか分からないが、とりあえず寝ないでも大丈夫なのだという。
自分は夜の間、ずっと寝ているのに、何十年も寝ていない人がいる。
それは、小さな私にとって衝撃で、何度もその本を読んでいたように思う。
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昨日のエントリーで、断酒してから2年が経過したことを書いた。
断酒日記【2年】 〜たいせつなのは、「何をしないか」。 - 大嵜 直人のブログ
2年前のことをあまり明瞭に思い出せないように、もう飲んでいたときの感覚や記憶も薄れつつあるように思う。
ちょうど昨日は知人と会食だったのだが、「お酒をやめて、何が一番変わったか?」という話題があった。
諸々思い浮かぶことはあるのだが、「一番」と聞かれて出てきたのが「睡眠」だった。
睡眠。
眠り。
アルコールが入ると、どうしても睡眠が浅く、不安定になる。
それがなくなり、いつも安定した睡眠をとれるようになったことが、断酒の一番大きな恩恵なように思う。
ものの研究によると、睡眠不足は人を酩酊状態と同じくらいの状態にしてしまうとも聞く。
さもありなん、と思う。
さらに、睡眠が安定すると、メンタルが安定するとも感じる。
もちろん、人間なのだから、不安になることもあれば、ままならぬことで気をもんだり、イライラしたりもする。
けれど、そうしたときにも、寝てしまって朝起きれば、ある程度リセットされる。
「睡眠は、最高の癒し」
そんな言葉が想起されるが、まさにその通りだと思う。
もちろん、ショートスリーパーに代表されるように、睡眠については個人の資質によるものが大きいのかもしれない。
けれど、私にとってはやはり睡眠というのは大事なものなようだ。
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「何年間も寝ない人」を知った、小さな私は驚きでいっぱいだった。
そんなに寝なくても平気なら、人の2倍くらい、いろんなことができてしまう。
羨ましいと思いかけて、小さな私は思い直す。
もし、寝なくても平気な身体になれる、と聞いたら私はどうするだろう?
そんなことを夢想したように覚えている。
1日24時間がフルに使えて、遊び倒せるかもしれない、けれどそんな時間に遊んでくれる友だちがいないし…と、そんないらぬ心配をしていた。
テクノロジーや化学の進歩で、もしかしたら未来の世界ではそんな選択ができるようになるのかもしれない。
それもそうだが、小さな私はやはり眠る身体の方がいいな、と思ったことをなぜか覚えている。
眠ること自体が好きだったのもあるのだろうか。
いま、不惑の私が同じ質問を受けたとしたら。
そう、寝なくても平気な身体になれるとしたら。
迷いながらも、やはり寝ることが必要な身体を選ぶような気がする。
寝ている間に、「あちら」の世界に行くことができなくなるのは、寂しいように思うからだ。
睡眠は、最高の癒し。
そんなことを思う。