冬晴れの日、熱田神宮を訪れると、参道に鳥が。
トコトコと、私を導くように。
「牛に引かれて、善行寺参り」という説話がある。
信濃の国の老婆が、洗濯物をひっかけていった牛を追いかけていくうちに、日が落ちて真っ暗になってしまった。
さて困ったと思っていると、善行寺の仏さまの光明が輝き、老婆を導いてくれた。
老婆の心に信仰心が宿り、その後信心深く暮らし、極楽へ往生を遂げた、という説話だ。
牛に引かれて、ではないが。
そんな心持ちで参道を歩く。
冬の朝の陽射しは、やさしく、また気高く。
もうすぐ冬至を迎える、最も日が短い時期。
それだけに、日の出ている時間は貴重で、その暖かさに身を委ねたくなる。
銀杏も、真っ赤に色づいて。
この寒さの中にある赤は、不思議とその風景に合うように感じる。
鳥に引かれて。
そんな参拝も、いいものだ。
ちょうど「こころの小径」が開く時間だったので、そちらにも足をむける。
参拝を終え、熱田の神さまにもう一度頭を下げる。
あの鳥は、やはり神さまだったのだろうか。
そんなよしなしごとを思いながら、神宮を後にする。